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福井太智
――2022年シーズンのプレミアリーグはいかがでしたか?
「チームにとっても、個人にとっても良い結果で終われましたし、1年通してサガン鳥栖らしく戦えたのではないかなと思います」
――去年の1年をプレミアで戦ったことは、今年の結果に対してどういう影響があったでしょうか?
「全国リーグということで、自分たちにとってもまだわからない部分が非常に多かったですし、その中で去年1年通して自分たちの代であったり、1個下の代の選手とともに試合に絡ませてもらえたことは非常に大きかったですし、あの1年でリーグの特徴や戦い方を学べたので、凄く大事な1年だったかなと思っています」
――シーズン前にチームではどういう目標を掲げていたのでしょうか?
「今年1年が始まる時に、チームとして最初は『プレミア3位以上』という目標を掲げていて、シーズンの途中で『優勝を狙えるな』とみんなが感じた時に、プレミア優勝という目標に変えたんです。自分たちとしても上位に食い込みたいと思っていましたし、食い込まなくてはいけないというふうに考えていたので、自信はありましたね」
――プレミアリーグの序盤戦の手応えはいかがでしたか?
「あそこまでうまく行くとは正直思っていなかったですし、『いつ転んでもおかしくないぞ』という危機感は常に自分たちの中にあったので、あの序盤の戦いは後半の結果を見ても、本当にああいう結果を出せて良かったなと思っています。他のチームともそこまでの実力差があったかと言われれば、自分たちはそこまでではないと感じていました。ただ、自分たちのサッカーに対して自信を持ってできたのが良かったなと」
――今から振り返るとキーポイントになったゲームはどの試合でしょうか?
「1年を通してみると、21節の東福岡との試合は、負ければ自分たちの優勝は厳しくなっていたと思いますし、そういう部分を考えると、その試合で勝てたことは大きかったと思います」
――まさか6試合も続けて勝てなくなるとは、という感じでしたよね?
「そうですね。あそこまで勝てなくなるとは考えていなかったですし、『その状況でよく1位に居続けられたな』とも思っています」
――試合展開も常に先制しながら、追い付かれて、逆転されるという試合ばかりでした。
「常に試合前には『自分たちは勝てる』という想いがありましたし、決して油断していたわけでもなかったんですけど、結果がああいう形になってしまっていたので、引きずっても仕方ないとは思っていました。個人ではいろいろな想いが1人1人にあったはずですし、『ヤバいな』という想いも絶対にあったと感じているので、チームとしてはもう切り替えてやろうとなっていましたけど、それでもうまく行かなかったので難しかったです」
――3点差を引っ繰り返されたガンバ大阪ユース戦は本当に大変な試合でしたね。
「はい。もう逃げ出したかったです(笑)」
――先ほど挙げてもらった東福岡戦は本来であればW杯のサポートメンバーでカタールにいるはずだったと思うんですね。それがなくなって、あの試合の終盤に出場できたのも、不思議な巡り合わせでしたね。
「もともとあの試合に出る予定ではなかったですけど、出られるのであればチームのために戦いたかったですし、残り15分でも出させてもらって、長期でいなかった分、試合の中でも今のチームの状況であったり、勝利に対するモチベーションを感じられて、『まだまだみんなも十分優勝を狙っているんだな』と実感しました」
――優勝を決めた最終節のジュビロ磐田U-18戦は、やはり手応えのあるゲームでしたか?
「あの試合は相手に何もさせなかったですし、自分たちが1年通してやりたかったことをすべて表わせたゲームだったと思います。あの一戦が最後の試合になってもおかしくない状況でしたし、1人1人の『まだこのチームでやりたい』という想いが乗ったゲームだったかなと感じています」
――試合が終わった瞬間の涙は、プレッシャーから解放された感じでしたか?
「プレッシャーは自分自身そこまで感じていなかったですけど、苦しい試合が続いて、『もうダメなんじゃないか』という空気がチームに流れた時もありましたし、そういった1人1人の想いを感じてきた部分が、あの笛が鳴った瞬間に込み上げてきて、ホッとしたというのが一番の印象ですね」
――あの試合はお客さんも多かったですし、チームメイトも試合前やハーフタイムにハイタッチでゲームに選手を送り出していて、ホーム感の強い試合でしたね。
「1年間を通して試合を重ねていくごとに、お客さんの数が多くなり、注目度も大きくなっていって、そういう部分は自分たちも感じていましたし、たくさんの方が自分たちのために会場へ足を運んでいただいて、鳥栖のユースを応援していただいたので、その方々のためにという想いも1人1人にありました。あの試合もあのグラウンドにあんなに多くの方が来てくださって、優勝しなければいけない雰囲気でしたし、その方たちからはプレッシャーというよりも、背中を押していただいたので、他会場の結果も気にはなりましたけど、そっちを気にするよりも、自分たちがどれだけ力を出せるかという方にフォーカスして挑めた試合でした」
――あえてざっくり聞きますが、川崎フロンターレU-18と戦ったファイナルはどういう試合でしたか?
「あんな最高のピッチでプレーできることはそうそうないですし、フロンターレのサポーターも人数的にとても多くて、自分たちにとっては完全アウェーと言ってもおかしくない状況だったので、難しい部分もありましたけど、その中でも鳥栖のサポーターも、場所的にとても遠い会場にもかかわらず、応援しに来ていただいて、たくさん声を出していただいて、『これはもう楽しむだけだ』と思ってグラウンドに入りました。自分にとっては本当にこのチームでの最後の試合で、『少しでもサガン鳥栖の価値を上げたい』『サガン鳥栖に何かを残したい』という想いで試合に入ったので、その結果として良い形で終われたので、『サガン鳥栖に入りたい』という未来の子どもたちを少しでも増やせたのかなと考えていますし、自分たちがサガン鳥栖の価値を上げられたので、それも良かったと思います」
――ご自身のゴールはいかがでしたか?
「ドリブルしている時の印象は『あ、これは行ける!』という感じでしたし、走っていたらボールが前にあったぐらいの感覚だったので、うまく決められて良かったです、あのシュートを打つ瞬間は今でも記憶に残っていて、映像で見ても自分1人で最後まで持っていけたので、自分にとってはとてもうまく行ったゴールだなと思っています」
――国立で、日本一を決める試合でのゴールって、きっと最高なんですよね。
「そうですね。気持ち良かったですし、チームが優勝できたことが自分にとっては一番嬉しいことで、あそこで点を取っていても、負けていたら絶対に良い思い出にはなっていないので、本当に勝てたことが一番良かったと思っています」
――優勝カップを掲げた瞬間は、どういう感覚でしたか?
「いやあ、やっぱり最高の瞬間でした。カップを掲げることは僕1人しかできないので、キャプテンをやっていて良かったなと思いますし、本当に最高の瞬間でしたね」
――ああいう光景を味わうと、何回でも「これをやりたい!」と思うものですか?
「はい。本当にそう思います。中学生の頃から何回か優勝させていただいてきて、あんな経験を何回もできるとは考えていなかったですけど、あの瞬間のために僕たちはサッカーをやっていますし、今回の優勝した瞬間よりも、もっと気持ち良い優勝の瞬間がこれからの未来にも広がっているはずなので、そこで今回優勝したからそれで終わりという想いは自分の中にありませんし、ここからはそれ以上のものを探しに行くだけなので、満足はしていないです」
――キャプテンから見た今年のサガン鳥栖U-18はどういうチームでしたか?
「1人1人が『トップチームに上がりたい』『このチームのために戦いたい』という目標を絶対に持っていましたし、誰かのためにという想いがあったので、チームがバラバラになることはなかったですね。勝てない時期も1人1人前を向いていたので、それは良かったかなと思います」
――自分がいろいろな形でチームメイトに与えてきた刺激に関しては、どういうふうに感じていましたか?
「自分自身も誰かが活躍すると悔しいですし、自分がもし逆の立場だったら同じことを思いますし、僕自身も常に危機感を持ってサッカーをしていた中で、みんなが何かを感じ取ってくれていたのであれば嬉しいですね。それに負けないように僕もやらなくてはいけないわけで、僕を見て、何かを感じてくれる選手がたくさんいるのであれば、僕もその選手たちに負けないようにやらないといけないので、チームに何を落とせたかはわかりませんが、何か感じてくれる選手が1人でも多くいれば嬉しいなと思います」
――ちなみにチームのムードメーカーは誰なんですか?
「鬼木(健太)じゃないですか(笑)」
――ああ、福井選手の後に優勝カップも掲げていましたね(笑)
「そうでしたね。あの一連の流れはずっとやってきたものでしたから(笑)。『もういいんじゃない?』とも思いますけど、本人もやりたそうだったので(笑)」
――福井選手から見た田中智宗監督はどういう人ですか?
「選手とたくさんコミュニケーションを取ってくれますし、良いことも悪いこともすべてさらけ出してくれて、自分たちの想いやこうしたいということをしっかり受け入れてくれました。監督は本来怖いイメージや遠い存在という感じもありますけど、常に選手に寄り添ってくれましたし、練習で誰かに声を掛けたり、『最近どう?』みたいに常に話しかけてくれて、本当に僕らもやりやすかったですし、『監督のために』という想いもあったので、本当に良い監督だと思います」
――国立での胴上げも良いシーンでしたね。
「WESTを優勝した時に、胴上げするかどうか迷ったんですけど、『ここじゃないな』というふうに感じてやらなかったので、ファイナルで優勝できて、国立のピッチのど真ん中で胴上げできて、本当に良かったです」
――今までいわゆるカップ戦では日本一になってきていましたが、1年を通じたリーグ戦での日本一の価値については、どう感じていますか?
「やっぱりカップ戦とリーグ戦はまったく違いますし、カップ戦は優勝させてもらってきましたけど、リーグ戦はより優勝が難しいと考えていました。1年を通しての戦いの中で、やっぱり運だけではタイトルは獲れないですし、本当に強いチームが優勝できる大会だと思っていたので、それを制覇できたことは自分にとっても大きな経験でしたし、カップ戦ももちろん優勝するのは難しいですけど、リーグ戦とどちらも獲れたことはかけがえのない結果だったと思います」
――どうして鳥栖のアカデミーってこんなに強くなっちゃったんですか?(笑)
「僕が聞きたいくらいです(笑)。この時代に自分が関われて良かったなと思います」
――この10年間の鳥栖のアカデミー生活を振り返ると、特に印象に残っているのはどういうことですか?
「やっぱり優勝した時は思い出に残りますけど、決して順風満帆にこの10年を過ごしてきたわけではなくて、もちろん試合に絡めない時期もあったりと、いろいろなことがありました。皆さんの目にはうまく行ってきたと映っているかもしれないですけど、自分の中ではもがいていた時期も、悔しい時期もたくさんあったので、本当にいろいろな経験をさせてもらって、これからのサッカー人生において素晴らしい経験を積むことのできた日常を、しっかり送れたかなと思います」
――ここからの将来に向けての想いを、改めて聞かせてください。
「自分は信じている夢のためにこの挑戦をしますし、まだこういう挑戦を掲げた日本人選手はいないと思いますけど、この挑戦を自分が必ず成功させて、少しでも未来の子どもたちに新たな道を作ってあげたいと考えています」
――今は自分の中の展望として、どういう景色までが見えていますか?
「ワールドカップ優勝です!」
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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