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U-18日本代表が3対0で勝利し、両チームがスタンド前に整列した。ところが、ピッチ上ではなんとPK戦が始まったのである。
勝敗に関係なくPK戦が行われ、勝ったチームには勝点1が与えられるそうだ。
茨城県内で行われている「Ibaraki Next Generation Cup 2022」という大会の話である。
カタール・ワールドカップではラウンド16のクロアチア戦でPK戦に敗れた日本代表。「PK戦」などというのはサッカーの本質とは関係のない勝負だ。イビチャ・オシム監督はかつてPK戦を見ずにロッカールームに戻ってしまって話題になったことがあった。
しかし、そんなPK戦の結果によって、日本代表は目標だった「ベスト8」を逃がしてしまったのだ。いや、「ベスト8」どころではない。ワールドカップ・チャンピオンの座すらもPK戦勝負で決まったのだ(せめて決勝戦くらいは「再試合」にできないものだろうか……)。
いずれにしても、PK戦などという「つまらないこと」で負けてしまうのはもったいない限りである。PK戦方式が採用されている限りは、それに備えておかなければならない……。カタール大会が日本のサッカー界に突きつけた大きな課題ということである。
そこで、茨城での大会では勝敗に関係なく試合後にPK戦を行うということになったのだろう。
もっとも、PK戦の難しさは心理的なプレッシャーがかかる中で行われるところにある。全国高校サッカーでは、県予選の決勝で全国大会出場をかけてPK戦が行われることもある。チームメイトの期待を背にペナルティースポットに向かう少年にとってのプレッシャーはいかばかりか。
そんな諸々を背負ってキックするから難しいのである。
しかし、茨城での招待大会。総当たりリーグ戦で行われている大会の初戦。3対0で試合の勝敗が決まった後のPK戦では、ほとんどノープレッシャーだったのだろう。
両チームともはずす選手はおらず、ゴールの隅や“天井”に見事なキックを蹴り込んでいく。5人目までは全員が成功し、その後も選手たちが次々とキックを決めていく。勝敗が決したのは10人目。U-18日本代表のDFヴァン・イヤーデン・ショーンがはずして勝負がついた。
「そんなノープレッシャーでのPK戦に意味はあるのか?」というツッコミもあるだろうが、それでもPK戦を経験させるのは無意味ではないだろう。また、多くの選手がキックに成功したことによってPK戦に対してポジティブな意識を持てるようになれば、それはそれで意味があるのかもしれない。
U-18日本代表の選手たちは、来年はU-20ワールドカップ(5〜6月、インドネシア)出場を目指して、2月から3月にかけてウズベキスタンで開かれるAFC U-20アジアカップに出場する。上位4チームにワールドカップ出場権が与えられるので、準々決勝が引き分けに終われば、世界大会出場権を懸けたPK戦が行われる。
たとえば、2014年に行われたU-19アジア選手権(U-20アジアカップの前身)では、日本は準々決勝で北朝鮮と対戦して延長を含めて120分間攻め抜いたものの、相手GKの再三の攻守で1対1の引き分けに持ち込まれ、PK戦で敗れてワールドカップ出場権を逃がしたことがあった(ちなみに、その時、最後にPKをミスしたのが南野拓実だった)。
この年代で世界大会を経験できるかどうかは、日本代表の将来にとっても、選手個々のキャリアにとっても大きな影響がある。そんな、大変なプレッシャーの下でもしっかりとキックできるように、PK戦に慣れることも必要なのだろう。
茨城県の大会の初戦でU-18日本代表が対戦したのは成年男子茨城県選抜。国体のサッカー競技、成年の部に出場したチームで、チーム全員が流通経済大学所属。20歳以下の選手が主体で21歳の選手も数名含まれているチームだった。
チーム力としてかなりの差があったため、キックオフ直後からU-18日本代表が完全にゲームをコントロールして試合は進んだ。
そして、17分にアンカーの石渡ネルソン(セレッソ大阪U-18)がドリブルで持ち上がって、右サイドの佐藤丈晟(大分トリニータU-18)にパス。佐藤が入れたクロスで生じた混戦の中で高橋輝(大宮アルディージャU-18)が決めて日本代表が先制。さらに、36分には佐藤とのワンツーでフリーになった松村晃助(V・ファーレン長崎U-18)が直接決め、さらに42分にも右サイドバックの稲垣篤志(浦和レッズユース)が入れたクロスにワントップの内藤大和(ヴァンフォーレ甲府U-18)が合わせて3点目。
後半は、選手交代が繰り返される中で組織がバラバラになってしまい、追加点は生まれなかったが、日本代表はそのまま3対0で勝利した。
余裕のある展開だったので、それぞれの選手が自分の特徴をしっかりと発揮できた試合でもあった。アンカーの石渡はしっかりした守備で相手の攻撃の芽をしっかりと摘み、さらに落ち着いた展開で攻撃の起点となってみせた。また、右サイドハーフの佐藤はDFの稲垣のオーバーラップとも呼応して、再三サイドからのチャンスを作った。
一方、左サイドバックの植田悠太(京都サンガF.C.U-18)は再三のインナーラップで相手陣内のバイタルエリア付近まで顔を出して攻撃的な才能を発揮。日本代表のゴールを守ったGKの春名竜聖(セレッソ大阪U-18)は、足元の技術で素晴らしいパスを連発して見せた。
後半は、先ほども書いたように、うまく攻撃が噛み合わなくなってしまったが、12月24日、25日に行われる第2戦、第3戦では、また選手の違った組み合わせでそれぞれがストロングポイントをしっかりと表現してくれるはずである。
U-18代表。つまり、2004年1月1日以降の生まれの選手たちは、1年上の選手たちとともに来年度はU-20代表としてワールドカップに挑むことになる。
世界の同年代の選手たちとの真剣勝負は選手強化のために非常に重要な意味を持つ。とくに、この年代は新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのために国際経験が不足している。本来なら参加していたはずの2021年のU-17ワールドカップは中止となってしまったのだ。
コロナ禍がなんとか収束に向かったため、ようやく国際交流が可能となり、11月にはパリ・オリンピックを目指すU-21代表が欧州遠征を行い、つい先日にはU-16代表(来年のU-17ワールドカップ=11月ペルー=を目指すチーム)が南米パラグアイに遠征した。そうした国際経験の場を求めて、なるべく多くの海外遠征の機会を与えたいものだが、何よりも大事なのは彼らが自分たちの手でアジア予選を勝ち抜いて、それぞれのカテゴリーのワールドカップ出場権を勝ち取ることだ。
カタール・ワールドカップに出場した日本代表は東京オリンピック世代の選手が何人も活躍した、これまでにない若いチームだった。
しかし、世界を見渡せば19歳、20歳くらいの選手が何人も活躍していたのだ。2026年のワールドカップでのさらなる進歩のためにも、若い選手たちの成長が期待される。
2023年は年代別ワールドカップに注目したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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