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サッカー フットサル コラム 2022年11月22日

大瀧螢と信澤孝亮。2人のメインキャストが確立した自分の立ち位置【高円宮杯プレミアリーグEAST 川崎フロンターレU-18×FC東京U-18マッチレビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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プレミアEAST優勝に貢献した大瀧螢(後列左から2人目)と信澤孝亮(前列右)

タイムアップのホイッスルが鳴った瞬間。2人とも気付けば泣いていた。次々とチームメイトが抱き付いてくる。笑顔と、絶叫と、涙と。さまざまな感情がこみ上げてきて、頭が追い付かない。でも、1つだけわかっていることがある。オレたちは優勝したんだ。

「もう嬉しかったですし、ホッとしました。試合前に優勝が懸かっていることはわかっていて、プレッシャーというほどではないにしても、少し緊張したんですけど、そこからやっと解放された感じでした」(大瀧螢)「『ああ、良かったな』って。今日決められた安心感というか、泣いちゃったのであまり覚えていないですけど、とにかく嬉しかったです」(信澤孝亮)。

14番のプレーメーカー、大瀧螢。13番のセンターバック、信澤孝亮。今年の川崎フロンターレU-18を支えてきた2人の3年生が、最高の笑顔で、最高の仲間と共有したこの日の歓喜は、きっとずっと色褪せずに彼らの記憶に刻まれ続ける。

開幕から2試合はスタメンに指名されていた大瀧だったが、3節以降はベンチに回ることが多くなる。1.5列目の位置に2年生の岡崎寅太郎が台頭し、ゴールを量産。ボランチの位置には大関友翔と由井航太が固定されていく。

ともに年代別代表にも選出されている大関と由井。彼らとのポジション争いに身を投じている大瀧の思考は、しっかりと整理されていた。「大関や由井が代表に選ばれているのは凄いなと思っていますし、自分もそこに行けるように頑張りたいという気持ちはもちろんあるんですけど、試合にそういう感情は持ち込むべきではないですし、チームの勝利のために一生懸命やろうということをいつも考えています。やっぱりいつも自分次第なんです」。

当然なかなか試合に出場できない状況に、満足していたはずもない。「出られない時はもちろん悔しい気持ちもありました」と口にしながら、「そこで出るために何をすれば良いかを、ヤスさん(長橋康弘監督)と話しながら、自分で考えながら、練習に取り組みましたし、チームが悪い時は結構足が止まってしまって、体力的な面で技術が発揮できないこともあったので、体力向上は意識的に取り組みました」と言葉は続く。

9月。川崎U-18はリーグ戦で初めての黒星を喫すると、その次のゲームにも敗れてしまう。これ以上は負けられない前橋育英高校戦。長橋監督は3試合ぶりに大瀧を先発起用。14番は懸命にピッチを駆け回り、攻守に奮闘。チームも1-0で競り勝って、連敗を脱出する。その試合を機に大瀧はスタメンを奪還。チームがそこから無敗を続けた進撃に、自分へベクトルを向け続けた小柄なプレーメーカーの果たした役割が決して小さくないことは、チームメイトの誰もが理解していたこともまた間違いない。

大瀧螢

この日のFC東京戦も当然のように先発で登場した大瀧は、劣勢を強いられる中、持ち前の高い技術で時間を作りつつ、プレースキッカーとしても際どいキックを連発。課題だった体力面の向上を証明するかのように最後まで走り続け、優勝を告げるホイッスルをピッチで聞く。それは1年間での逞しい成長を、自身でも再確認できた実りある90分間だった。

大瀧同様に開幕からスタメンを張り続けていた信澤は、5月に入るとベンチスタートの回数が増加する。理由はシンプル。2月にプロ契約を締結し、トップチームの練習に参加していた同じセンターバックの高井幸大が、U-18の試合に出始めたからだった。

ただ、自分の中でもその現状を受け入れるだけの心の余地を、13番は持っていた。「自分に足りなくて高井にあるものや、何で高井がU-18に来たら、自分ではなくて高井が出るのかということに関して、長橋さんもその理由は教えてくださっていましたし、その課題にちゃんと向き合いながらトレーニングはできていたので、下を向くことはなかったのかなと思います」。

具体的に指摘されたのは、ビルドアップの精度向上。日々のトレーニングで課題に取り組み、一歩ずつ成長へのステップを踏んでいく。「チームに貢献したい気持ちがあったので、別に試合に出られていない状況を消化し切れないようなことはなかったですし、その分だけ『試合に出た時にやってやろう』ということは一番強く思っていました」。静かに、静かに、内なるマグマをたぎらせていく。

高井がいる時にはサブ、いない時にはスタメンという流れが続く中で、明確なモチベーションになっていたのは『強いヤツを倒したい』という頼もしいメンタルだ。「僕は自分より力が上だと思うような選手や代表選手とやる時には、ものすごくモチベーションが高くプレーできるので、内野(航太郎・横浜FMユース)とか熊田(直紀・FC東京U-18)もそうですけど、プレミアはどこのチームもフォワードは凄いので、それが試合に出る時の力になっていました」。対峙するプレミアの猛者たちが、信澤の闘志に火をつける。

信澤孝亮

勝てば優勝の決まるFC東京U-18戦。高井はU-19日本代表のスペイン遠征のために不在であり、信澤も自分に出番が回ってくることは十分に悟っていた。「結構いないメンバーも多い試合が、今日勝てば優勝というタイミングとちょうど重なってしまいましたけど、『今日で決めなくてはいけない』という責任感をこのゲームに関しては感じていました」。強い覚悟を携えてグラウンドへと飛び出していく。

「基本的に失点しなければ負けることはないですし、自分もゴール前で身体を張ったりするところは長所だと感じているので、そこは少しでもチームのために生かしたいなとは思っていました」。自分だって1年を通じてチームの結果に貢献してきた。その集大成。意地でも失点は許さない。終盤に挙げた先制点を守り抜くべく、懸命に身体を張り続けた信澤も、優勝を告げるホイッスルをピッチで聞く。それは1年間での逞しい成長を、自身でも再確認できた実りある90分間だった。

リーグ優勝は成し遂げた。シーズンのラストゲームは国立競技場。この年代の頂点を巡る決戦が待っている。

「日本一を懸けて戦う試合は今までやったことがないので、どうなるかはまったく想像が付かないですけど、とにかくそこに向けて最高のパフォーマンスを持っていけるように、今から準備して、楽しんで、勝つためにできることをすべてやり切りたいと思います」(大瀧)「あと2節残っているので、とにかくその2試合で国立に向けてさらにしっかり成長して、日本一を獲れるように頑張りたいと思います。たぶんWESTにも凄いフォワードがいると思うので、自分が出たらそういう選手相手にどこまでできるかが楽しみですね」(信澤)。

川崎U-18のプレミアリーグ初昇格初優勝を支えた、メインキャストの3年生。大瀧と信澤がたゆまぬ努力で纏ってきた確かな自信は、それが国立の大舞台であろうと、日本一の懸かったファイナルであろうと、揺らぐことは決してない。

プレミアEAST制覇を喜ぶ川崎U-18の3年生たち

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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