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サッカー フットサル コラム 2022年11月18日

カナダ戦はリハビリマッチ? 負傷者続出の克服が日本代表最大の課題

後藤健生コラム by 後藤 健生
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スポーツ記事の中で、「野戦病院のような」という言葉がよく使われる。負傷者続出のチーム状況を表現する形容句である。

カタール・ワールドカップ開幕を目前に控えた日本代表も、そんな状況にあると言わざるをえない。

脳震盪からの回復途上にある遠藤航をはじめ、中盤で遠藤と組むはずの守田英正も戦列を離れ、体調不良の三笘薫はようやくチームに合流したところ・・・。そんな状態の日本代表が大会前最後に戦ったカナダとの試合は「強化試合」とか「フレンドリーマッチ」というよりも、「リハビリテーションマッチ」とでも呼ぶべき試合となってしまった。

好調の選手、不安のある選手は温存され、先発に並んだのはケガのために長期離脱して、ようやく復帰したばかりの選手たち。トップで起用された浅野琢磨のように、所属クラブ(ボーフム)でも復帰後にまだ試合に出ていない選手もいる。

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今シーズンに出場機会を求めて移籍したモナコでも十分にプレー時間を与えられていない南野拓実の場合は、ケガではなく、“試合勘”を取り戻すためのリハビリだった。

そんなメンバー構成で、また、いつもとは違った組み合わせだったこともあって、試合内容は今ひとつパッとしないものだった。

日本代表は、前半8分に久しぶりにキャプテンマークを巻いて出場した柴崎岳からのロングパスが相手DFラインの裏に飛び出した相馬勇紀にピタリと合って、幸先よく先制に成功。その後も、前線からのプレスがはまっていくつかのチャンスも生まれたが、次第にカナダにボールを持たれる時間が長くなる。

前線からのプレスは現在の日本代表の生命線だ。

前回大会で不動のワントップだった大迫勇也を招集せずに、前田大然や浅野のような足の速い選手を招集したのは、ファーストディフェンダーとしての役割を期待してのことだ。

そして、カナダ戦でも立ち上がりにはプレスがはまっていた。だが、次第に日本のプレスの圧力が緩んでくる。誰か1人、2人がプレスに行っても、そこに付いていけない(いかない)選手がいるため、カナダにボールをつながれてしまう。

そこから、カナダがロングボールを前線に送り込んでくるのに対処せざるをえない場面でカナダボールのCKが増えてくる。そして、日本はこのセットプレーに手を焼いて、21分にはCKからつながれて同点に追いつかれてしまう。

後半に入ってトップが上田綺世に交代したことで、ますます前線からのプレスがきかなくなり、日本は防戦に追われる。

その後、好調を維持している鎌田大地をボランチに入れ、さらにシステム変更をして3-4-3に変更して勝ちに行った日本代表。終了間際にウィングバックとしてポジションを上げていた山根視来が抜け出してフリーでシュートを放ったが、これがゴールポストに嫌われる。そして、その直後にその山根のファウルでカナダにPKが与えられ、ルカス・カヴァリーニのパネンカに対してGKの権田修一がなんとか反応したものの、権田の手を弾いたボールはゴールイン。

シュートをポストに当ててヒーローになりそこねた山根は、一転して敗戦の責任を背負い込むことになってしまった。

もちろん、ポジティブな面もあった。

最大の収穫は、板倉滉がしっかりとプレーできたことだ。冨安健洋が万全でない中、板倉が復帰してくれればCBとして期待できるし、遠藤、守田も状態が悪いとすれば板倉のボランチ起用も考えられる。ユーティリティープレーヤーが復活してくれれば、森保一監督にとっては大変に心強いことだろう。

もう一つは、終盤にシステム変更して試合の流れを変えることに成功したこと。

森保監督は吉田麻也を入れてスリーバックとして、サイドバックだった山根と長友佑都の位置を一列上げて3-4-3に変更して点を取りに行ったのだ。

森保監督はオリンピック代表では当初はスリーバックでチームを作り、フル代表ではフォーバックで強化を進めてきた。「いずれはシステムを併用できるように」という目標だったのだが、最終的にはオリンピックチームもフォーバックとなり、試合中にシステム変更を試みた回数もそれほどなかったし、実際にトライした時にもあまり効果的ではなかった。

それが、大会直前の試合でシステム変更によって攻撃力を上げることに成功したのは心強いことだ。

さて、リハビリテーションの結果であるが、先ほど述べたように板倉は良いパフォーマンスを示した。また、代表では序列を下げていた柴崎は先制ゴールの場面を含めて、持ち前の正確で受け手にとって優しいロングパスで攻撃を組み立てた。中盤に負傷者が多い中で、本大会でも活躍する場面もあるだろう。

ただ、田中碧、南野、浅野あたりは、まだまだ本調子からは遠い状態。これから、どこまでコンディションを戻すことができるのか。時間との競争となりそうである。

最大のポジティブな面は、こんな状態の選手を器用した「リハビリテーション・マッチ」であったのにも関わらず、ワールドカップ出場チームであるカナダ代表を相手に互角に戦えたことかもしれない。

コンディションの良い選手、たとえば相馬や鎌田はカナダに十分な脅威を与えることができていた。

結果として敗れたものの、失点はCKからのこぼれ球とPKだけ。流れの中からのチャンスでは互角の試合だった(セットプレーについては、開幕直前の数日でどこまで準備を進められるかにかかっている)。

開幕に合わせて主力級の選手のコンディションを上げていくことができるかどうか。そして、セットプレーの攻守を準備が進むかどうか。その2点に、日本代表の命運はかかっている。

大会直前になって負傷者が出て苦労しているのは日本代表だけではないが、それにしてもこれだけ多くの選手が負傷や体調不良でコンディションを落とすとは、これまでのところ不運続きと言わざるを得ない。

大会直前になって負傷した遠藤や守田の場合は代表スタッフにとってはどうにもならない不可抗力だったが、負傷から回復途上にあった(リハビリテーション・マッチに出場した)選手たちがもし回復できず、戦力になれなかったとしたら、それは森保監督はじめ代表スタッフの情報収集および判断のミスということになる。

そもそもは、2022年大会のカタール開催が決まり、その結果、シーズン真っ只中の11月開催となり、負傷者が完治するための時間がなくなってしまったことが根本的な原因だ。2010年のFIFA理事会でカタールに投票した理事たちの責任ということになる。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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