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献身が際立つ『火の国の摩天楼』。大津高校・小林俊瑛が備えるエースとキャプテンの覚悟 【NEXT TEENS FILE.|高円宮杯】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史
191センチの長身が一際目を引くが、もちろんそれだけの男ではない。相手のディフェンスラインを巧みに突破する駆け引きも、ゴールの匂いを嗅ぎ分ける得点感覚も、そして前線から果敢に守備に奔走する献身性も持ち合わせているのだから、恐れ入る。
その上、今シーズンはチームを束ねるキャプテンも託されている。「監督から指名されました。チームをまとめていくのはちょっと難しいところもありますけど、そこは3年生全員で協力してやっているので、何とかやれていますね」。熱量を前面に押し出すタイプではないものの、常に安定したメンタルに裏打ちされた、チームメイトに与える安心感は唯一無二。より苦しい試合でこそ、9番の背中が仲間には大きく見えているはずだ。
求められる領域は、オフ・ザ・ピッチでの振る舞いにも及ぶ。「学校生活のメリハリのことも監督からはよく言われるので、そういうところとサッカーの部分を両立していく必要がありますけど、それはキャプテンの宿命だと思うので、しっかり受け入れてやっています」。その働きにはチームを率いる山城朋大監督も「小林はちゃんとリーダーシップを持ってキャプテンをやってくれていますね」と太鼓判。左腕に巻くキャプテンマークもすっかり板に付いている。
そんなリーダーとしての役割をまっとうしつつ、それでも小林が最も輝くのはペナルティエリアの中。既に今シーズンのプレミアリーグでは10ゴールを挙げており、その大半はワンタッチゴール。印象的だったのは第11節の履正社高校戦。エリア内へ走り込みながら、いったん止まってマーカーの視界の裏へ潜り、左からのクロスにフリーで合わせて、左足ボレーを叩き込む。
「最近はクロスの入り方をもう一度見直してやっているので、そういうところでは少し練習の成果は出たかなと感じています」と本人も納得の一撃。ここまで全ゴールの半分に当たる5ゴールは、味方のクロスに合わせたもの。高さと強さを最大限に生かした、いわゆる“型”を持っているのは、ストライカーとしての大きな強みだ。
さらに8節延期分のセレッソ大阪U-18戦では、前に出ているGKの位置を冷静に見極めながら、40メートル近いロングシュートをゴールへ沈めてみせる。「もう絶対自分が蹴るというのは決めています」と言い切るPKも含め、得点パターンのバリエーションも明らかに増加。「去年のプレミアは2点で終わってしまったので、そこから考えると得点感覚は磨かれてきていると思うので、次のステージに行った時にも通用するようになってきているのかなと思います」と自身も確かな成長の跡を実感している。
ここに来て覚醒した感のある“相棒”の存在も、小林に小さくない刺激を与えている。2トップを組むことが増えたFW山下基成が、インターハイ以降のプレミアで5ゴールを量産。「俊瑛が注目されていますけど、その中で『自分もやってやるぞ』という気持ちは陰ながら持っています」と“ライバル宣言”を口にする中で、「同じ2トップでライバル意識はあると思うので、そこは良い関係を持ちながら、2人で得点を重ねて、チームの勝利に貢献できたらなと思います」と小林も言及。彼らの得点力がチームに結果をもたらし始めていることも、シーズン終盤に向けての好材料であることは間違いない。
リーグ戦は現在4連勝中と絶好調。プレミアでの勝利がチーム全体に与える影響も、キャプテンはひしひしと感じているという。「プレミアで勝っている時はAチームだけではなくて、BチームやCチームまでも良い雰囲気や活気で練習できますし、僕たちの勝利はチームに大きな影響を与えるんだなと思います」。ここからは選手権も含めて、すべてが大事な試合。残り少なくなった大津での時間に、小林も想いを馳せる。
「去年準優勝を獲ったことでいろいろなプレッシャーはありますけど、それは良いプレッシャーだと思って、全員で跳ね返すぐらいの気持ちで選手権の全国制覇は狙っています。そのためにはこれからのプレミアの勝利というものも大事ですし、今年のテーマは『超越』というところで、いろいろなものを全部超えていきたいです」。
絶対的なエースであり、頼れるキャプテン。献身が際立つ『火の国の摩天楼』。進化するブルー軍団のさらなる躍進には、小林の重ね続けるゴールが必要不可欠であることは言うまでもない。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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