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サッカー フットサル コラム 2022年11月8日

14ゴールでの得点王はJ1リーグ史上最少。降格チームから生まれた得点王チアゴ・サンタナ

後藤健生コラム by 後藤 健生
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J1リーグ16位の京都サンガFCとJ2リーグ5位から勝ち上がってきたロアッソ熊本が対戦する「J1参入決定戦」やJ2昇格をかけたJ3リーグの2位争いなど、要なイベントもまだまだ残っているが、J1リーグのレギュラーシーズンは11月5日に終了。11月7日には恒例のJリーグアウォーズも開催された。

J1リーグの優勝は横浜F・マリノス。総得点の「70」はリーグ最多で、総失点の「35」もリーグ最少。数字的にも、横浜は間違いなく2022年シーズンの最強チームだった。一方、3連覇を狙った川崎フロンターレは昨シーズンのような圧倒的な得点力が影を潜め、けが人の続出などに苦しんだが、驚異的な粘りを見せて横浜を猛追。最終節まで優勝争いを続けた。

2017年に川崎が初優勝して以来、最近6年間は川崎と横浜の2クラブがリーグ・チャンピオンの座の独占を続けている。

そんな中で、今シーズンの得点王に輝いたのは、なんと最終節にJ2降格が決まった清水エスパルスのチアゴ・サンタナだった。

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そして、得点ランキングを見ると2位には湘南ベルマーレの町野修斗、3位にFC東京のアダイウトンと並んでいる。リーグ戦で6位に入ったFC東京はともかく、湘南も12位と低迷したチーム。リーグ戦で下位に沈んだチームの選手が得点ランキングで上位を占めるという、珍しい結果に終わった。

ちなみに、準優勝の川崎からはマルシーニョと家長昭博がアダイウトンと並んで11得点で3位タイ。優勝した横浜からはともに11得点のレオ・セアラとアンデルセン・ロペスが6位タイに並んでいる。

リーグ最多の70ゴールを記録して優勝チームした横浜から得点ランキング上位に入った選手がいないということはどういうことなのだろうか?

まず、横浜というチームは特定の選手だけでなく、すべての選手が得点に関わるのが特徴なのだ。

そういえば、横浜が前回優勝した2019年シーズン。横浜は今シーズンとほぼ同じ68ゴールを記録したが、この時もマルコス・ジュニオールと仲川輝人がともに15得点で得点王のタイトルを分け合い、エジガル・ジュニオが11得点で10に食い込んでいる。得点源が分散しているのだ。

横浜の最大の得点パターンは、サイド攻撃からのクロスの形だ。

今シーズンでいえば、右サイドの水沼宏太や左サイドのエウベルあたりが崩して、早いタイミングで入れたアーリークロスに中央の選手が合わせるという形である。試合前のウォーミングアップを見ていても、横浜はこの形を繰り返し練習している。そして、例えば優勝を決めた最終節のヴィッセル神戸戦でも、やはり水沼を起点としたゴールが生まれている。

そして、そのクロスを合わせる選手は中央に張っているセンターFWだけでなく、逆サイドのサイドハーフも中央に詰めて得点を決める。それが横浜の攻撃のパターンなのだ。

昨シーズン(2021年)の得点ランキングでは、優勝した川崎のレアンドロ・ダミアンと準優勝の横浜の前田大然がともに23ゴールを決めてタイトルを分け合っているが、前田もやはりCFで起用されることもあるが、左サイドでプレーする時間が長い選手だった。

こうしたメカニズムによって、横浜の得点源はCFとサイドアタッカーに分散され、さらに選手層の厚さを武器にしている横浜の場合、CFも必ずしも固定されているわけではない。今シーズンで言えば、アンデルセン・ロペスとレオ・セアラが分担してCFを務めていた。

そうした様々な要素が絡み合った結果、優勝した横浜から得点ランキング上位に入る選手がいないという珍現象が起こったのである。

先ほど述べたように準優勝の川崎からは、マルシーニョと家長の2人が3位タイに入っている。

昨年の得点王レアンドロ・ダミアンが今シーズンは不調で、しかもリーグ戦終盤は故障で離脱してしまった。その結果、右サイドで抜群のキープ力を生かして攻撃を組み立てるのが役割の家長と、左サイドでドリブル突破からチャンスを作るマルシーニョがチームの得点源という結果になったのだ。

いずれにしても、今シーズンのJ1リーグは純粋のストライカー、純粋の点取り屋というタイプの選手が少なかった。そんな中で、得点王に輝いたチアゴ・サンタナと2位に入った町野は数少ないストライカー・タイプのFWだった。

それにしては、チアゴ・サンタナが14得点、町野が13得点というのはやや物足りない数字だ。1993年に開幕したJリーグ(J1リーグ)史上、「14得点で得点王」というのは歴代最少記録ということになる。

34試合を戦うJ1リーグ。せめて、その半分の数字である17得点くらいはしてほしいものだ。

ちなみに、関東大学サッカーリーグは全22試合で争われるが14得点以下に終わった場合は、得点王は「該当者なし」という扱いになる。

なお、J1リーグの得点ランキングを見ていくと、上田綺世が10得点で8位に入っている。上田は、今シーズンの途中でベルギーのセルクル・ブルッヘに移籍しているので、もし最後まで鹿島アントラーズでプレーしていたら、20ゴール近くを決めて堂々の得点王に輝いていただろう(実際、ベルギー移籍後も11月5日までに6ゴールを決めている)。

優勝チームと準優勝チームである横浜と川崎はともに非常に攻撃的なチームだが、どちらも特定の選手に頼るのではなく、どこからでも点が取れるスタイルのチームであるのは面白い現象だ。だが、やはり一方で絶対的な点取り屋タイプ、ストライカー・タイプの出現も待ち遠しい。

そして、出来れば日本人で点が取れるFWが出現してほしいものだ。

23歳になったばかりの町野には来シーズンも得点王争いを演じてほしいし、21歳の細谷真大(柏レイソル=今シーズンは8得点)にも大きく羽ばたいてほしい。さらに、今シーズンはJ2リーグで26ゴールを決めて横浜FCのJ1復帰に貢献した小川航基も来シーズンはJ1リーグに活躍の場を移す。小川もまだまだ25歳で、シュート技術の高さでは群を抜いている選手。J1でどこまでそのシュート技術を発揮できるか注目したい。

カタール・ワールドカップが終われば、2026年大会を目指す日本代表の活動もスタートする。次のワールドカップでのエース・ストライカーを目指すレースが始まるのだ。来シーズンの得点王争いは、もっと高いレベルの争いとなってほしいものである。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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