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U-17日本女子代表
インドで行われているFIFA U-17女ワールドカップの杯準々決勝で、10月22日(土)、リトルなでしこは全回大会王者のスペインと対戦した。
スペインは今年8月のU-20女子ワールドカップでも決勝で対戦した相手(●1-3)。また、22日の試合当日に行われたFIFA女子ワールドカップ2023の組み合わせ抽選会で、日本はグループステージでスペインと同組になった。同国の女子A代表は、FIFAランク6位(日本は11位)の強豪国。直近の親善試合で同1位のアメリカを2-0で下すなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
抽選会後にオンライン会見を行ったなでしこジャパンの池田太監督は、スペインについて、「サッカー文化がしっかり根付いていて、女子もアンダーカテゴリーを含めて成長著しく成果を上げている」と、その急成長ぶりを強調した。今大会のグループステージを無失点の3連勝で勝ち上がってきた日本と、2勝1敗と苦戦しながらも勝ち上がってきたスペイン。勢いは対照的にも見えたが、中3日で迎えたこの準々決勝では、スペインが底力を示した。
狩野倫久監督は、グループステージ3戦目のフランス戦(◯2-0)から先発メンバー3名を交代。ダブルボランチにはMF谷川萌々子とMF眞城美春のコンビを3試合連続で起用した。ペインは国内女子1部のプロリーグのバルセロナ、レアル・マドリード、アスレティック・クラブ(ビルバオ)の3クラブのメンバーで先発を構成。バルセロナのトップチームにクラブ史上最年少でデビューしたMFヴィッキー・ロペスなど、トップレベルでの経験がある選手もいる。そのプレー強度の高さは、これまでの相手とは明らかに違っていた。
立ち上がりの10分間は日本が相手陣内でプレーする時間が多かったものの、その後はスペインの連動した攻守に劣勢を強いられる。試合前に振った雨でピッチは滑りやすくなっていたが、スペインは正確にパスを繋ぎ、フェイントやドリブルを巧みに織り混ぜて攻めてきた。日本は1対1ではボールを奪いきれず、ヴィッキーに対しては複数で囲んでも奪えず、中盤を突破される場面が見られた。
2トップの一角で先発したMF今野真帆は、「これまでの相手とは個々の技術の高さが違っていて、むやみに奪いにいくとタイミングが合わないことが多かった」と、前線からのプレスに苦戦したことを明かす。
MF今野真帆とMFヴィッキー・ロペス
狩野監督も、「自分達のサイドハーフをうまく引き出して背後を使おうというスペインの狙いに対してプレスのタイミングのずれがあった」と振り返った。
それでも、ペナルティエリア内では守備陣が体を張ってピンチを何度も食い止めた。23分には決定的なシュートをDF大矢さくらがブロック。33分にはスルーパスに抜け出したC.カマーチョのシュートをGK岩崎有波がファインセーブで止めた。35分には、ペナルティエリア内でボール受けようとしたカマーチョ選手を止めようとした岩崎が交錯してPKを献上。絶体絶命のピンチだったが、キックは枠を大きく外れた。
後半、日本はプレスのタイミングを修正していい入りを見せたが、スペインも素早く対応。中央とサイドを効果的に使い分け、左右からのクロスで日本ゴールを脅かす。一方、日本もDF中谷莉奈、DF古賀塔子のセンターバックコンビを中心に、ゴール前では粘り強く跳ね返し続けた。49分と56分には、岩崎がスーパーセーブでゴールを死守。「これでもダメか」と、スペインの選手たちが何度も天を仰ぐシーンが見られるほどだった。
そんな守備陣の奮闘に応えるかのように、66分、谷川が起死回生の一発を決める。相手のクリアボールをトラップし、ゴールまで30mはあろうかという位置から左足を一閃。GKソフィア・フエンテの頭上を抜く鋭いシュートがゴールに突き刺さった。
このゴールで、日本は再び息を吹き返したかに見えた。交代で投入されたFW樋渡百花もうまく試合に入ってその流れに拍車をかけた。だが、それ以上にスペインの猛攻は凄まじかった。ケニオ・ゴンサロ監督は攻撃的な交代カードを次々に切り、84分には3枚替えを敢行。すると、87分にゴール前の混戦からヴィッキーに押し込まれ、日本は今大会初失点を喫してしまう。
このまま延長戦なしでPK戦に突入か…と思われたが、スペインの勢いは止まらず、アディショナルタイムには右サイドを突破されてヴィッキーに勝ち越しゴールを許す。間もなく長い笛が鳴り、1-2で終了。日本はベスト8で大会を去ることとなった。
勝者と敗者。ピッチ上には残酷なコントラストが描かれた。試合後、狩野監督は「マイボールの時間が少ない中で先制することができましたが、その1点を守りきれなかった」と、言葉を噛み締めるように言った。苦しい時間帯を耐え抜き、谷川のスーパーゴールで先制した日本には勝つチャンスがあった。だが、守り疲れもあっただろう。交代枠を使いきり、最後まで諦めなかったスペインの執念が最後は優った。
とはいえ、90分間を通してみれば、スコア以上の力の差を認めざるを得ない。シュート数は日本の5本に対してスペインが21本、ボール保持率は日本が34%、スペインは66%。コーナーキックはスペインの7本に対して日本はゼロだった。スペインはA代表から育成年代まで戦術的なメカニズムが徹底され、U-17代表も、各ポジションでやるべきことが整理されていた。そして、個が躍動していた。
悔しい結果となったが、4試合を通じて日本がインドの地で「応援されるチーム」になったことは確かだ。この試合でも6700人超の観客が詰めかけ、「ジャパン!コール」が降り注ぐ場面もあった。観客は、ドラマチックな展開に一喜一憂していた。
雨あられのようなスペインシュートを止めまくった岩崎。スペイン優勢の膠着状態のなか、スーパーミドルを決め、4戦連続弾で観客のハートを射抜いた谷川。頭抜けたテクニックで相手を翻弄した15歳の眞城。勝利が見えてきた矢先のスペインの三枚替え、それが当たっての土壇場での逆転勝利…。見どころの多い試合だった。初めての国際大会で世界のトップレベルを体感できた経験は、選手たちにとってかけがえのないものとなったはずだ。
キャプテンとして最終ラインからチームを鼓舞し続けた中谷は、受け入れ難い現実と向き合いながらも、「世界には通用しないことも多かった。自分自身がもっと強くならないと上にいくことはできない」と、毅然とした表情で語った。
谷川萌々子
今大会でその優れた才能を知らしめた谷川は、ミックスゾーンに現れる頃にはもう、涙の跡を残していなかった。
「今はスペインに優勝してほしいという気持ちがある。彼女たちが勝って喜んでいる姿を目に焼き付けたので、もっと強い選手になって、またワールドカップの舞台に戻ってこられるように頑張りたい」
その言葉には、日本女子サッカーの明るい未来を期待させる力があった。3大会ぶりの優勝を目指したリトルなでしこの戦いは幕を閉じたが、若き原石たちの世界への挑戦は始まったばかりだ。
文:松原渓
FIFA U-17 女子 ワールドカップ インド 2022 準々決勝
【ハイライト動画】日本 vs. スペイン
松原渓
女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。
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