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U-17 日本女子代表
U-17女子W杯で、リトルなでしこが観客を魅了した。
10月18日(火)、ゴアのネルースタジアムで行われたグループステージ第3戦。日本は2012年大会の王者フランスを2-0で下し、3連勝でグループ首位での決勝トーナメント進出を決めた。
タンザニア戦、カナダ戦の2試合で、登録選手21名全員がピッチに立ち、共に4-0のスコアで快勝したリトルなでしこ。この試合はFW高岡澪とDF岡村來佳が大会初先発を飾った。岡村は本職はセンターバックだが、この試合はサイドバックで出場。
そして、試合は開始から日本が主導権を握る展開となった。
開始早々に右サイドのFW久保田真生が高岡との藤枝順心コンビでチャンスを作り、ファーストシュートを放つ。2分には、MF谷川萌々子が挨拶がわりのミドルシュートを放った。
中盤はカナダ戦同様、谷川とMF眞城美春のダブルボランチが軸となり、長短のパスを織り交ぜて攻撃を組み立てていく。フランスも時折、両サイドのスピードを生かしたカウンターを見せるが、17分の右サイドからのMFファニー・ロッシの突破はGK岩崎有波が鋭いセーブで弾き出した。「一本目のシュートを止められたことで調子が上がった」という岩崎は、その後も味方と連係してゴールを死守した。
そして29分、高岡のパスを受けた谷川が20m近いミドルシュートでゴールネットを揺らし、3戦連続弾でチームを勢い付けた。
「試合前にデ・ブライネ選手の映像を見て、斜めの角度にドリブルで入ってシュートを決められそうな予感がしていて、ボールへの入り方もイメージ通りだった」という谷川。168cmのサイズを生かした展開力や相手の逆を取るドリブルもさることながら、両足から放たれる精緻な長距離砲が他国の脅威になっていることは間違いない。
後がないフランスは36分、39分と決定機を作り出すが、日本は体を張った守備でシュートを再三ブロックし、ゴールを守った。後半は、交代で入った選手たちが躍動感あふれるプレーで攻撃を活性化。51分にFW柴田瞳がミドルシュートでゴールを脅かすと、60分には左SHのFW松永未夢と、交代で右SHに入ったFW樋渡百花が、日テレ・東京ヴェルディメニーナのホットラインで決定機を作り出す。78分には、交代出場のFW板村真央が左サイドで3人抜きからシュートに持ち込み、会場が大きく沸いた。
左サイドで再三突破を見せた松永 未夢
1点差を死守していたフランスだが、アディショナルタイムには、コーナーキックから交代出場のDF楠さやみが頭で決め、勝負あり。2-0でグループ首位の座を堅持した。
また、同時刻に行われたもう1試合は、カナダとタンザニアが1-1のドロー。W杯初出場のタンザニアが歴史的な決勝トーナメント進出を決めている。
リトルなでしこはグループステージ3試合で、その強さと魅力を示した。
タンザニア、カナダ、フランスという強豪国が揃うグループで、3試合で10得点を奪い、守っては全試合クリーンシート(無失点)を達成。フランス戦はピンチの数も多かったが、その分、守備の粘り強さも引き出された。イエローカードは3試合で一枚も受けていない。
一方、攻撃面では3試合で80本を超えるシュートを放った。
FIFA U-17 女子 ワールドカップ インド 2022 グループD 第3節
【ハイライト動画】フランス vs. 日本
「前線からの連動したプレッシングによって、ディフェンスラインが狙いを持った対応ができている。3試合を通じてチーム全体の守備力が向上している」と、狩野倫久監督は手応えを口にする。
また、カナダ戦までで交代枠をフルに使って21人がピッチに立ち、フランス戦でも交代枠を使い切った。狩野監督は多感なこの年代で重視することについて、「相手に対して自分の武器や良さをどう生かすか、気づきを与えられるのはピッチで体感するものが大きい」と、結果と同じぐらいプロセスにも目を向ける。そして、選手たちはその経験をスポンジのように吸収し、内容に結実させている。
「多様なシステムを使いこなし、一人が最低2つ以上の異なるポジションでプレーできる」というだけに、攻撃のパターンも多い。試合中のポジション変更、4-4-2から4-3-2-1へのシステム変更もあり、3試合で7人の選手がゴールを決めた。対戦相手にとっては次の手が予測しにくく、厄介極まりないはずだ。
公式戦では初めてだったという岡村のサイドバック起用には驚かされたが、「岡村は守備力が非常に高い選手なので、相手のストロングポイントであるサイド攻撃を抑える狙いがあった」という狩野監督。縦の関係を組む左SHの松永の攻撃力への信頼も含めての抜擢だったそうだが、2人の組み合わせも初めてとは思えない安心感があった。何事も「初めて」にはリスクも伴うが、そこで得られるものがある。岡村は、「緊張もありましたが、国と国との本気の試合で勝負できたことはとても楽しかった」と振り返った。
日本は1試合ごとに地元の声援を増やしている。この試合は6,734人の観客が入った。日本のボードを掲げるファンがちらほらとスタンドに見られるようになった。地元のサッカーファンたちは、「いい試合だった!」「決勝に行ってくれよ!」と人懐っこい笑顔で声をかけてくる。
日本を応援する地元の人々
ここからのノックアウトステージは、さらに難しい戦いが待っている。日本の山には、ドイツ、ブラジル、スペインと強豪がずらり。
そして、準々決勝では前回王者のスペインと戦うことになった。日本にとっては宿命のライバルとも言える。A代表はFIFAランク6位の強豪で、2014年のU-17ワールドカップと2018年/2022年のU-20ワールドカップではいずれも決勝で対戦。直近のU-20ワールドカップでは決勝で日本が敗れた。
個々がいいポジションに立ってしっかりとパスを繋ぎ、その中で個の強さを生かすーー。日本とスタイルが近いだけにやりづらさもあり、苦しい時間帯は必ず出てくるだろう。そこで実力を発揮できるかどうかだ。
スペインはグループステージは2勝1敗ですべて1点差の僅差を勝ち抜いてきた。ボール支配率は圧倒的で、シュート数も多いが、明らかに苦しんでいる。底力は、まだ見せていないようだ。
ただし、日本にはこの試合を楽しみにしていた選手が少なくない。谷川は、「U-20の選手たちからは、スペインも倒して世界一になって欲しいと言われた」と、託されたバトンを握って戦う。岡村も、「U-20の先輩方が悔しい思いをしたので、その悔しさを自分達で返したい」と続く。松永は「これまでで一番いいパフォーマンスを見せたい」と、強い思いを口にした。
キックオフは日本時間10月22日(土)23時30分。グループステージの3試合で積み上げた自信を王者にぶつけ、事実上の決勝戦にふさわしい、ハイレベルな戦いに期待している。
文・写真:松原渓
松原渓
女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。
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