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サッカー フットサル コラム 2022年10月13日

1試合でも多く国際試合の経験が必要。苦しみながらもW杯初戦に勝利のU-17女子日本代表

後藤健生コラム by 後藤 健生
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日本 vs タンザニア

日本 vs タンザニア

第7回FIFA U-17 女子ワールドカップがインドで開幕。U-17日本女子代表は初戦でタンザニアと対戦。4対0で勝利した。

FIFA U-17 女子ワールドカップでは日本は優勝1回、準優勝2回。優勝回数でこそ北朝鮮の2回には及ばないものの、過去6大会すべてに出場して全大会でベストエイト進出。最多勝利数も記録している。4年前のウルグアイ大会では準々決勝でニュージーランドにPK負けを喫してしまったので、そのリベンジを果たしたいところだ。

8月にコスタリカで開かれたU-20女子ワールドカップでは日本は準優勝。そして、フル代表(なでしこジャパン)は先日の親善試合で初めてスリーバックに挑戦しながら、ナイジェリア、ニュージーランド相手にともに2対0のスコアで勝利するなど、来年のワールドカップに向けて順調な仕上がりを見せている。

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そんな、女子サッカーの流れを絶やさないためにも、U-17代表の健闘が期待されるところだ。

しかし、初戦のタンザニア戦は思わぬ苦戦となってしまった。

ワールドカップ出場は(あらゆるカテゴリーを通じて)初めてというタンザニア。フル代表のFIFAランキングでは日本の11位に対してタンザニアはなんと155位。大きな実力差があるはずの相手だったので大量得点での勝利が期待されていたのだが、“ようやく”待望の先制点が生まれたのは33分のことだった。

タンザニアは最初から守備を固めてきた。しかも、18分にはネーマ・キネガがラフなタックルで一発退場(オンフィールドレビューの後、レッドカードが示されたのは20分)。10人になったタンザニアはますます守備の意識が高まってしまった。相手が1人少なくなることによって、かえって戦い方が難しくなってしまうというのはサッカーではよく起こる現象である。

日本のパスはタイミングが遅れ、またパススピードが遅かったために、タンザニア選手にカットされる場面が多く、なかなか決定機が作り出せない。また、身体能力の高いタンザニア選手の足が伸びてくるため、なかなかパスが通らない。そして、シュートに持ち込んでも全員が自陣ペナルティーエリア付近に戻って守備をするタンザニア選手にブロックされる。

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【ハイライト】日本 vs. タンザニア|FIFA U-17 女子 ワールドカップ インド 2022 グループD 第1節

また、再三負傷を装って(?)ゲームを止めたGKのズルファ・マカウもアクロバティックな動きで素晴らしいセービングを連発した。

こうして、得点が生まれないまま時間が経過するとともに、日本の選手に焦りが生まれ、パスを受けてから考える時間が長くなってしまってさらに攻撃のリズムが悪くなる……。

そんな悪循環が続いた33分、相手のスローインのミスからつないだ日本はサイドハーフの松永未夢が左サイドをドリブルで切り咲いて、折り返しを白垣うのが決めてようやく先制に成功した。

だが、その後、10分という長いアディショナルタイムがあって前半のシュート数は13本を記録したものの(タンザニアのシュートは0本)、日本は追加点を決めることはできなかった。

後半に入っても同じような展開が続き、2点目を奪ったのは67分になってから。後半から投入された板村真央が左サイドからドリブルで持ち込んで自ら決めたものだ。その後、75分にやはり板村が中央からドリブルで仕掛けて、パスを受けた辻澤亜唯が3点目、さらに81分に谷川萌々子が直接FKを決めて4点目。

つまり、1点目から3点目までがドリブル突破によるもの、そして4点目が直接FKと、いずれも「個の力」によるもので、日本らしいパスワークはあまり見られなかった。

U-17日本代表の狩野倫久監督は若くしてブラジルに渡ってプロとしてプレーした経験を持つ指導者だけに「個人技による突破」を重視しているのは事実だが、日本らしいパスをつないだ攻撃があまり見られなかったのは残念だった。

パスをつないでボールを前に進めるためのパターンはいくつも準備されているように見えた。だが、選手たちがその“型”にとらわれすぎて、かえってパスが滞ってしまったようにも見えた。

たとえば、スローインの場面。本来ならボールがタッチラインを割ってすぐに再開して相手に休む間を与えずに守備を混乱させたいところなのだが、ボールを受ける選手が完全にスペースを見つけて入り込むまで待ってしまうので、どうしてもテンポが遅くなってしまう。

“型”を大事にするよりも、感覚で動き、感覚を大事にしたがテンポは良くなるだろう。

いずれにしても、U-17日本代表にとっては初戦らしいチグハグなゲームになってしまった。初戦ということで緊張感もあったことだろう。そういう意味では、初戦が実力差のあるタンザニアとのゲームでよかったとは言える。

初戦で苦しい試合を経験したことで、チームにも一体感が生まれるだろうし、2戦目(10月15日、対カナダ)にはもっとスムースなパスによる展開が見られることだろう。テンポの良いパス交換で相手陣深くまでボールを持ちこみ、最後のフィニッシュの場面で「個の力」、ドリブルでの突破が使えるのが理想である。

現在、ユースカテゴリーのすべての代表チームにとって共通の課題は経験不足だ。

2020年に始まった新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックによって、多くの国際大会が中止となってしまった。

このU-17女子ワールドカップも、2018年に第6回大会が開かれたが、第7回大会は延期となって4年ぶりに開催された。また、本来はこの大会の予選として開かれるはずだったAFC U-16選手権も中止となり、前回大会の成績を元にアジアからの出場チームが決められた。

もちろん、日本サッカー協会も手をこまねいているわけではなく、U-17女子代表も8月にはフランスに遠征して同年代のフランス代表などと戦っている。しかし、それはあくまでも親善試合に過ぎない。つまり、選手たちは国際試合の経験が少なく、とくに痺れるような体験ができるアジア予選も経験していないのだ。

だからこそ、世界大会ではベストフォーまで進出して最大限の6試合を経験しておきたいところ。タンザニア戦で足ならしを終え、次戦以降は4年前の大会で準決勝に進出しているカナダ、そして女子サッカーで躍進著しいフランスとの対戦となる。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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