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プレミア2シーズンで30ゴール超え。横浜・Fマリノスユースの絶対的ストライカー、内野航太郎が向け続ける自分へのベクトル 【NEXT TEENS FILE.|高円宮杯】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史
もはやこの男を止める手立ては、ほとんどないと言っていいだろう。今シーズンのプレミアリーグEASTでは15試合に出場して18ゴール。得点ランク2位に入った昨シーズンと合わせれば、ここ2シーズンのリーグ戦で31回もの歓喜をトリコロールへもたらしてきたが、その数字に満足する様子は微塵もない。
「得点王は絶対に獲りたいですね。2シーズンのプレミアで30点を獲っている選手は他にいないと思うんですけど、今シーズンは20点獲ることを最初から目標にしているので、結局他者ではなくて自分を変えるというところで、自分にベクトルを向けられているのは良いことだと感じています」。
他者との比較なんて必要ない。横浜F・マリノスユースが誇る、高校年代屈指のストライカー。内野航太郎はゴールを獲り続けるために携えるベクトルを、常に自分の深いところへと向け続けている。
「2週連続でチームを勝たせられなかったですし、守備陣がどうこうというよりも、自分がハットトリックをすれば勝てる試合が2試合続いているので、悔しいです」。FC東京U-18と対戦したホームゲーム。内野は2点を奪ったものの、チームは終盤に追い付かれてしまう。その1週間前の桐生第一高校戦でも、個人としては2ゴールを挙げながら、試合は3-3のドロー。どちらも勝ち点1の獲得にとどまったのは、自分がハットトリックできなかったからだと悔し気な表情を浮かべるメンタルは、まさにストライカーのそれだ。
周囲から求められている役割はよくわかっている。「チームの勝利と同じくらい自分のゴールへの気持ちは強いんですけど、自分がチームに貢献できるのは得点だと思うので、その得点を追求していけば自ずとチームの結果に繋がるのかなという考えです」。とにかく自分がゴールを奪えば、チームも勝利に近付くはず。その思考にはいささかのブレもない。
今年の夏に味わった屈辱は忘れていない。群馬で開催された日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会。横浜FMユースは決勝まで勝ち上がったが、最後はセレッソ大阪U-18の前に敗れ、戴冠ならず。準決勝まで5ゴールを積み上げていた内野も、日本一の懸かった一戦ではネットを揺らせず、得点王も1点差で逃してしまう。
「自分が決勝で点を獲れば得点王だったのに、甘えが出てしまって、それが結局チームの結果にも繋がったのかなって。去年も自分はプレミアEASTで得点ランク2位だったんですけど、今回も2位で、自分の甘さがそういうところで出てしまうのかなということは、クラブユースで凄く感じました。だから、何点獲っても貪欲に、自分にベクトルを向けてやるしかないなとは考えているところです」。もう2位なんてたくさんだ。残されたプレミアで期す“3度目の正直”に、並々ならぬ意欲を燃やしていることは想像に難くない。
実は今シーズンが始まる前には、ふと不安に襲われる時期があったという。「プレミアが始まるまでに、自分はちょっとナーバスになった時期があったんですけど、去年は13点で得点王に一番近いところで悔しい想いをしたので、今年は絶対にやってやろうという気持ちで、できることは何かなと考えた時に、映像を見ようと思って、そこからは習慣になってずっと見ています。去年はレバンドフスキ選手やハーランド選手ばかり見ていたんですけど、今年は本当に色々な選手のプレーを見ていますね」。
それでも一番憧れ続けている選手は、以前から変わっていない。「やっぱりレバンドフスキ選手のちょっと理不尽な、チームが苦しい中でもボールが入ったら決めるみたいなプレーに、凄く惹き付けられています」。プレミアの舞台でも、もはや“理不尽”と言えば内野の代名詞になりつつあるが、それすらもこのストライカーにとっては何の意味もなさない。
昨シーズンに残した結果も、傍から見ればその能力を示す上で強烈な数字だった。だが、今シーズンは周囲からの警戒も高まっているからこそ、重ね続けているゴールにより価値があることは語り落とせない。
「正直去年は“ポッと出”というか、『内野ってヤツがいるな』ぐらいの感じだったと思うんですけど、今年はシーズンの最初から少なからず相手に警戒されることも多くなった中で、今の自分がゴールを積み重ねられているところは、ここまでやってきていることと自分が進んできている道が間違っていないのかなと感じますね」。
だからこそ、奪い続けるゴールが勝利に結び付けば、その価値は一層高まっていく。自分がゴールを挙げることと、チームが勝利することは、決して相反することなく、同じ目的から伸びている線上に並んでいるのだから。
シンプルで、力強い決意の言葉が、静かに響く。「プレミア優勝をチームとして目指しているので、自分がプレミアで得点王になって、自分のゴールでチャンピオンシップにチームを導けるようにしたいなと思います」。
2点獲れば、3点を。3点獲れば、4点を。その可能性がある限り、本能と深慮を繋ぎ合わせた神経を研ぎ澄ませ、次の得点だけを狙い続ける生粋のストライカー。内野がこれから紡いでいく未来も、常にゴールとともにある。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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