日本一のチームメイトが迎える因縁の再会～セカンドラウンド～。履正社高校×ガンバ大阪ユースマッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第16節】

優勝カップと一緒に収まった写真の中の選手たちは、みんな最高の笑顔を浮かべている。今から3年前の冬。『高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会』の決勝で、ガンバ大阪ジュニアユースはサガン鳥栖U-15を2-0で撃破し、日本一を勝ち獲ってみせる。ゴールを奪ったのは、今シーズンのプレミアでもガンバ大阪ユースの一員としてプレーしている鈴木大翔と南野遥海。守護神はジュビロ磐田U-18へと進路を取った森脇勇人が務め、今季の静岡学園高校で10番を背負う高橋隆大もスタメンに名を連ねた一戦のメンバーからは、実に4人が履正社高校へと進学することになる。

加藤日向。名願斗哉。古田和之介。東尾大空。ユースではなく、高体連の強豪でサッカーを続けることになった履正社の彼らは、高校最終学年でかつてのチームメイトたちと“再会”するチャンスを得る。昨年末に開催されたプレーオフを勝ち抜いたことで、プレミアリーグの舞台で青黒のユニフォームと対峙する機会を勝ち獲ったのだ。

4月30日。第5節。アウェイの地、OFA万博フットボールセンターグラウンドBで快勝を収めた履正社の選手たちは、歓喜に沸いていた。スコアは2-5。しかも得点者は古田と名願のアタッカー2人に加えて、なんとセンターバックの加藤は2ゴール。東尾もフル出場で勝利に貢献し、『元ガンバ』の4人は実現した“再会”を望んだ形で終えることに成功する。

キャプテンマークを巻き、先制ゴールを挙げた古田が「遥海をライバル視しているところもあったので、アイツにやられず、自分が点も獲りましたし、アシストもしましたし、成長した姿をちょっとみんなに見せられて、チームも勝ったので、とても嬉しかったです」と話せば、「一番負けたくない相手だったので、5-2という結果には納得していますけど、2失点しているので、後期はもっとボコボコにしたいと思います」と口にしたのは名願。この日の万博には残酷なコントラストが浮かび上がった。

ジュニアユースから昇格したG大阪ユースの選手たちも、このままで終わっていいはずがない。とりわけ奮起が期待されるのはトップチーム昇格が発表された南野だ。既に今シーズンのJ1で4試合に出場。昨年王者の川崎フロンターレ戦ではスタメンも経験したストライカーは、まだプレミアで2ゴールしか奪えていないのだ。

ジュビロ磐田U-18をホームに迎えた前節は1-3で敗れたものの、試合終了間際にやはりかつてのチームメイトでもある森脇から、執念の1点をもぎ取った南野は「3点も入れられて、サポーターも応援してくれている中で、少しでも見てくれている人への感謝の気持ちを出すことが選手の仕事だと思うので、最後まで諦めない気持ちを持ってやりました」という言葉を残している。この男の爆発が、今節の履正社戦の勝利のみならず、降格回避に向けても必要不可欠であることは言うまでもないだろう。

その南野と相対するのが、履正社のディフェンスリーダーを託された加藤だ。ジュニアユース時代にも最終ラインで存在感を放っていたクレバーな守備者は、今シーズンのプレミアでもここまで全15試合にフル出場を果たしており、世代屈指のアタッカーたちと兵刃を交えてきた。また、インターハイでは高校ナンバーワンストライカーの呼び声高い神村学園高校の福田師王とも互角以上に渡り合い、確かな実力を証明している。

プレミアは平野直樹監督も「ワンプレーのミスを逃してくれない、そのクオリティだから嬉しいんだよ」と語るように、常に気の抜けない状況を90分に渡って強いられ続けるステージだ。そこで1350分間の時間を重ねた経験値が、加藤を一回りも二回りも成長させていることは間違いない。履正社で過ごした時間の意味を、かつてのチームメイトたちに見せ付けるための舞台は整った。

G大阪ユース対磐田U-18の試合後には、印象的なシーンがあった。1つの定位置を巡り、ジュニアユース時代の3年間で切磋琢磨した足立と上西駿大、森脇が楽しげに談笑すれば、ゴールを巡って激しくやり合った南野と森脇も、笑顔で語り合う。試合が終われば、そこには濃厚な時間をともにした者だけが持ち得る友情だけが残る。

おそらく履正社とG大阪ユースが激突する一戦にも、タイムアップの後には楽しみな光景が待っている。ピッチ内で繰り広げられる90分間はもちろんだが、この試合は同じボールを追い掛けた絆で結ばれたサッカー仲間が織り成す“笑顔の再会”にも、是非注目してほしい。

文：土屋雅史