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サッカー フットサル コラム 2022年9月24日

アメリカ戦“完勝”の日本代表 エクアドル戦ではさらに思い切ったテストが可能に

後藤健生コラム by 後藤 健生
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カタール・ワールドカップに向けて最後の準備となる9月シリーズ。その初戦でアメリカ代表と対戦した日本は2対0で完勝した。

アメリカはかつては「サッカー後進国」と言われていたものの、今ではFIFAランキングで14位と日本(24位)を上回り、ワールドカップでグループリーグを突破しても誰も驚かない実力国の一つだ。練習中の負傷でクリスチャン・プリシッチがメンバーを外れるというアクシデントはあったものの、日本にとって強敵であることは間違いない。

だが、この日の日本代表はそのアメリカにほとんど付け入るスキを与えなかった。

とくに前半は、開始50秒過ぎに右サイドハーフの伊東純也が相手ボールをカットしてそのままシュートを放つと、その後も前線からのプレスがきいてアメリカはなかなか前にボールを運べず、組織的にボールを奪った日本がショートカウンターで何度もチャンスを作った。

25分の先制ゴールはまさにその典型。中盤右サイドでの守田英正のプレスから伊東がボールを奪って、そこから森田を経由して最後は左サイドでフリーになっていた鎌田に渡り、鎌田が落ち着いてコースを狙ったシュートを決めた。

その後も何度かチャンスがあったものの、アメリカのGKマット・ターナーの好守もあって、日本は追加点を決められず、その後はアメリカが日本ゴールに迫る時間帯もあったが、日本は守備でも安定していた。森田と遠藤航のボランチがスクリーンをかけ、吉田麻也と冨安健洋のセンターバックがしっかりとブロックして決定機はほとんど作らせなかった。

特筆すべきは、そうした試合の流れに応じて選手たちがしっかりと意思統一をしながらプレーを変えていったこと。守る時間、攻める時間でプレーを切り替えたのだ。そして、前半の追加タイムにはボールを奪っても無理に前線に付けるのではなく最終ラインと中盤で確実にボールをつないで時間を経過させた。

後半に入ってアメリカがシステムを変えて反撃に出てきたが、選手たちだけでしっかりと対応したため、森保一監督は選手交代などを使う必要がなかった。日本ベンチが使った交代は(最後の原口元気の交代以外は)すべてテストのための交代だったのだ。

今回のシリーズで、日本代表にはいくつかの不安要素があった。

一つは守備陣に負傷者が多かったこと。

冨安は昨シーズン後半から再三にわたってケガで欠場を繰り返し、新シーズンに入ってからも所属するアーセナルでのプレー時間が少なくなってしまった。そして、冨安の代役候補と見なされていた板倉滉が負傷。また、右サイドバックの酒井宏樹も負傷が長引いて、ようやくピッチに戻ってきたばかりだった。

しかし、冨安はコンディションも良さそうでアメリカ戦では問題なく90分間をプレーした。しかも、負傷明けの酒井のプレー時間を制限するために後半は冨安が右サイドバックに回り、センターバックには急成長中の伊藤洋樹が入った。吉田と組んだ伊藤は卒のないプレーをして十分に代表のセンターバックとして通用することを証明。また、アーセナルでは右サイドバックが定位置の冨安はこれまで代表ではセンターバックとしてプレーしていたが、サイドバックでも問題なくプレーできること。また、サイドでの攻撃面でもまた新しいオプションになれることを証明した。

実は森保監督は6月シリーズで冨安のサイドバックを試したかったのだが、その時は招集できなかった。しかし、このアメリカ戦では冨安のサイドバックと伊藤のセンターバックを同時にテストできたのだ。

冨安がサイドバックで使えれば、縦に突破するタイプの酒井。インナーラップして相手陣深くまで進入するタイプの山根視来。そして、パスを使って前線の選手を生かす冨安を使い分けることも可能になる。

日本代表のもう一つの不安材料は、大迫勇也のような前線でボールを収めるタイプのセンターフォードの不在だ。

ワントップ候補は何人もいるが、浅野拓磨にしても、古橋亨梧にしても、前田大然にしてもDFラインの裏に抜けるタイプ。大迫タイプとしては上田綺世と今回大抜擢された町野修斗あたりだが、代表のワントップを任せるにはまだ力不足かもしれないのだ。

アメリカ戦でワントップとして森保一監督が先発起用したのは前田大然だった。そして、アジア最終予選の途中から不動のシステムだった4−3−3(4−1−4−1)ではなく、4−2−3−1を採用。フランクフルトで好調な鎌田大地をトップ下に入れて前田と組ませた。

これがうまく機能した。鎌田は動き出しも良く、アメリカの守備陣の中間スペースに顔を出して後方からのパスを引き出してチャンスを作った。鎌田がしっかりとパスを引き出してボールを収めたので、必ずしもトップにボールを収めるタイプを置かなくても日本は攻撃を組み立てることができた。

一方、前田は裏に抜けて相手を牽制するとともに、相手ボールになると持ち前のスピードと運動量を生かしてDFやGKにプレスをかけた。前田のプレスはアメリカにとって大きな脅威となり、自陣からパスをつないでボールを前に進めることが難しくなってしまった(後半、前田が退くとアメリカはパスをつなげるようになった)。

ただ、残念ながら久しぶりに日本代表のトップ下に入った鎌田と前線の前田や伊東とのコンビネーションが十分でなかったため、最後のフィニッシュの段階でのパスがほんのわずかだがズレてしまう場面も見受けられた。今後、この部分の精度が上がっていけば、「鎌田+裏抜けタイプ」の形はワールドカップでも使えるのではないだろうか。

こうして1対0で折り返した日本代表。後半は、守備面では選手は変わったものの前半同様に手堅く守ることができた。後半立ち上がりにアメリカが攻撃を仕掛けてきた時間帯も無事に跳ね返し、その後は何度か決定機を作った。このあたりで早めに2点目を奪うことさえできていれば、アメリカ戦は完璧な勝利となっただろう。

残念ながら、後半日本が攻撃を仕掛ける側のピッチ状態が悪かったため伊東や堂安律のドリブル突破が難しくなってしまったようでなかなか追加点が奪えなかったが、ようやく最後の時間帯(88分)にやはりドリブルで苦労していた三苫薫がドリブルで3人のDFを交わしてシュートを決めてゲームを終わらせた。

ワールドカップと同じく中4日で次のエクアドル戦が組まれている。エクアドル戦もアメリカ戦と同じデュッセルドルフでの試合であり、その間に3日間の貴重なトレーニングの時間も与えられる。

次戦では、絶対的存在の吉田や遠藤は(コンディション的な問題がなければ)再び先発するだろう。だが、それ以外の選手はいろいろな組み合わせでテストすべきだろう。

攻撃面ではアメリカ戦で出場機会を与えられなかった南野拓実や古橋、相馬勇紀などにチャンスが与えられるだろう。中盤では遠藤と守田は再び先発するだろうが、田中碧にもプレー時間を与えたい。その場合には4−3−3に戻すのか、それとも遠藤か守田を退けて田中を入れるのか、あるいは田中をトップ下で使うのか……。

守備ラインでは両サイドバックで山根や長友佑都にプレー機会が与えられるのか。それとも、アメリカ戦と同じラインでコンビネーションを上げるのか……。

アメリカ戦を“会心の勝利”で終えることができただけに、森保監督としては思い切ってさまざまなことをテストすることができるはずだ。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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