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サッカー フットサル コラム 2022年9月20日

世界最強ブラジルに連敗したフットサル日本代表。今の力では守備を強化して食い下がるしかないのか……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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国際親善試合第1戦で3ゴールを決めたフットサルブラジル代表10番ピケ ©Noriko NAGANO

国際親善試合第1戦で3ゴールを決めたフットサルブラジル代表10番ピト (C)Noriko NAGANO

フットサルのブラジル代表が来日して、9月27日に開幕する「AFCフットサル・アジアカップ」に臨むフットサル日本代表と対戦した。結果は、2試合とも5対1というスコアでブラジルが連勝。昨年のワールドカップ後、木暮賢一郎監督に交代して新体制で臨んだ日本代表だったが、国内での初めての強化試合では完敗を喫した。

第1戦は島根県の松江市にある松江市総合体育館が舞台だった。島根県を舞台にサッカー/フットサルの日本代表が試合を行うのは初めてだそうだ。島根県には現在までのところJリーグクラブはまだ一つも存在していない。現在は「FC神楽しまね」(昨年まで松江シティFC)がJFLに所属しているほか、「ポルセイド浜田」がフットサルの全国リーグFリーグのディビジョン2(F2)で戦っているだけだ。

舞台となった松江市総合体育館は約3000人を収容する立派な施設で、バスケットボールのBリーグ、「島根スサノオマジック」のホームアリーナ。Bリーグの島根は2021/22シーズンにはチャンピオンシップ、セミファイナルに進出して大いに盛り上がったそうである。

さて、9月15日の松江でのブラジル戦。木暮監督は試合前に記者会見などで「学びに行くのではなく勝ちに行く」ことを強調して臨んだ。

しかし、2分50秒、3分30秒にブラジルのエース、ピトにゴールを奪われ、6分28秒にはルーカス・ゴメスにも決められて、早くも3点差とされて、事実上勝敗は決してしまった。

ピトはスペインのFCバルセロナ、ルーカス・ゴメスはブラジルのマグヌス・フットサル所属のともにワールドクラスの選手。個人能力で日本代表を大きく上回る存在だ。

とくに個人戦術の引き出しの豊富さ。そして、余裕のあるプレーぶりはさすがだった。

たとえば、ピトの先制ゴール。ゴール正面で縦パスを受けて左にターンしてマークを外してシュートを決めたのだが、この得点も前に同じようなパスを受けた場面では右サイドの味方にパスを展開していたので、日本チームとしては完全に逆を突かれてしまった。

そうした戦術的な選択が多彩であり、また、一つひとつのプレーの意図が明確であること。しかも、それをスピードに乗った状態で出してくるので、対応するのは非常に難しい。

こうして、開始から7分で3対0としたブラジル代表。来日直後でコンディションが万全でなかったこともあって、その後は試合をコントロールして3点のリードを保って確実に勝利に結びつける選択をしたので後半2点を追加して最終的なスコアは5対1で終わったが、もし、彼らがその気になっていたら日本の失点は「5」ではとどまらなかったのではないだろうか。

試合後にブラジルのマルコス・シャビエル監督は日本チームの印象を問われて、「日本は監督が交代し、チームを再建中なのだろう」と語っていた。

日本は、2021年にリトアニアで開かれたフットサル・ワールドカップのラウンド16でブラジルと対戦し、この時は4分に星翔太が先制ゴールを決め、すぐに同点にされたものの、後半30分まで1対1の状況を維持。最終的には2対4で敗れたものの、終盤まで粘り強く戦った。

しかし、そのブラジル戦で得点を決めた星翔太や西谷良介などが代表を離れ、若い選手たちを加えて新たにチームを立ち上げたところだ。

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、日本代表は強化試合を行うことが難しくなり、チーム作りが順調に進んでいるわけではないのである。

そんな影響なのか、日本の若い選手たちは明らかに経験不足で、ブラジルという世界最高峰の相手との試合で相手をリスペクトしすぎたのか気後れしたのか、ブラジルに自由にプレーさせてしまって、それが大敗につながった。

日本代表は、とりあえずはクウェートで行われるアジアカップで、3大会ぶりの優勝を目指し、そこでワールドカップ出場権を獲得した後に2024年開催予定の次期ワールドカップへの対策を立てていくことになるだろう。

さて、前にも述べたように、ワールドカップ当時はコーチとしてチームに帯同し、その後監督に就任したフットサル日本代表の木暮監督はブラジル戦でも「勝ちに行く」と語っていた。

第1戦、第2戦でゴールを決めたフットサル日本代表キャプテン オリベイラ・アルトゥール ©Noriko NAGANO

第1戦、第2戦でゴールを決めたフットサル日本代表キャプテン オリベイラ・アルトゥール (C)Noriko NAGANO

だが、残念ながら、今の日本チームの状況ではブラジルに勝つことは難しいだろう。

次のワールドカップでブラジルやスペインというトップチームと戦って、それを倒せるようになるのか……。すべては、アジアカップの後に、どれだけ世界のトップクラスと戦う経験ができるのかにかかっている。

現在の日本代表のメンバー構成はブラジル出身で日本国籍を取得した経験豊富な選手と日本人の若手選手の混成となっている。

実際、ブラジル戦のスタート時のメンバーもGKの黒本ギレルメ、キャプテンのオリヴェイラ・アルトゥールなど5人のうち4人がブラジル出身選手だった。だが、黒本が36歳、同じくGKのピレス・イゴールは42歳。アルトゥールも32歳。いつまでも彼らに頼ってばかりはいられない。ブラジル戦では20歳の金澤空や18歳の原田快がのびのびとプレーしていたのが救いだったが、将来、本当にブラジルと真っ向勝負するようになるためには、若い能力の高い選手を育てていくしかない。

かつては、11人制のサッカーでもブラジルには手も足も出ない状態だった。それほど大差を付けれることはなかったが、それはブラジルが大量点を目指したりしなかったからに過ぎなかった。

ところが、今年の6月に国立競技場で対戦した時には、日本代表は攻撃面ではほとんど通用しなかったものの、守備や中盤ではブラジルを苦しめることができるまでに成長の跡を示すことができていた。

Jリーグ発足から30年。若い選手を育成し、そして若い選手たちがヨーロッパに渡って「個の力」をさらに高める努力を続け、ブラジルとの差を一つひとつ詰めてきた結果である。

フットサルの世界でも、将来ブラジルに勝つことを目標にするなら、Fリーグをさらに活性化し、若手選手の育成に取り組む地道な努力を続けるしかないだろう。

もちろん、実力差があるからといってブラジルを相手に勝負を諦めることはない。「勝ちに行く」という木暮監督の取り組みは支持したい。

松江での試合の3日後に愛知県豊田市で行われた2戦目はスコアこそ第1戦と同じ1対5だったものの、守備の意識を徹底したことによって0対1のスコアでハーフタイムを迎え、30分過ぎまで「1点差」を維持することに成功した。

今の実力で「勝ちに行く」ためには、真っ向勝負では難しい。昨年のワールドカップでそうだったように、とにかく献身的に全員が守備をして食らいついていくのが最良の方法なのだろう。

AFCフットサルアジアカップクウェート2022壮行セレモニー (C)Noriko NAGANO

文:後藤健生
写真:Noriko NAGANO

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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