川崎フロンターレU-18・大関友翔は“10番”の物語が導くネクストステージへと翔け上がる【NEXT TEENS FILE.｜高円宮杯】

決してエリート街道を歩んできたわけではない。一歩ずつ、一歩ずつ、地道に努力を重ねてプロサッカー選手に辿り着いたからこそ、その価値も、その意味も、しっかりと理解して、今日もサッカーボールと向き合っている。

「小学生の頃にセレクションで落ちたクラブに、またユースでチャンスをもらえて、トップ昇格もできたというところに意味があると思っています。今、サッカーをやっている小さい子たちも、セレクションを受けても受からないこともあると思いますが、そこで自分の存在が夢を与えられるんじゃないかなって。でも、トップに昇格するだけではまだ小さい子の憧れにはならないと思うので、もっと努力して、試合に出て、活躍している姿を見せたいなと思います」。

川崎フロンターレU-18の10番を背負う司令塔。大関友翔は周囲への感謝を胸に、強い覚悟を携えて、さらなる高いステージへと軽やかに翔け上がっていく。

“昇格組”とは思えない快進撃を披露してきた。続けた無敗は12試合。プレミアデビューとなった開幕戦で大宮アルディージャU18に1－0で競り勝つと、第4節からは怒涛の8連勝を記録。そんな川崎U-18を牽引してきたのが、中盤でエレガントなプレーを見せる大関だ。

「序盤は苦しい試合もあったんですけど、4節からは自分たちのやりたいこともだいぶできるようになりましたし、長橋（康弘）監督から言われるように、『相手を圧倒して勝つ』というところは、前半戦でできたのかなと思います」。ボールをしっかりと動かしながら、個の技術とグループとしての連携を織り交ぜたアタックで、相手ディフェンスを破壊していく。その中心には、常に絶対的な技術の高さで攻撃のタクトを振るう10番の姿がある。

実は大関には、フロンターレに“不合格”を突き付けられた過去がある。「小学校3年生ぐらいの頃にフロンターレのエリートクラスのセレクションを受けて、1次審査で粉砕されました（笑）。『こんなところ、僕には無理だ』というぐらいレベルの差を感じたので、当時から『フロンターレに入れること自体が凄いな』と思っていたんです」。

その後はジュニアからプレーしていたFC多摩で技術とメンタルを磨き、着実に成長を重ねたことで、中学2年時に今度はフロンターレから声が掛かり、練習会へと参加することになる。「フロンターレに行くことは全然想像していなかったんですけど、憧れのクラブにユースから入れることはそう多くないと思うので、行きたい想いがすぐに固まりました」。結果は合格。6年越しで憧れの水色と黒のユニフォームに、袖を通すこととなった。

U-18へと加入しても、すぐに自身の持ち味を発揮できたわけではない。「1年生から試合に出させてもらってきましたけど、当時は自分のプレーをあまり出せなかったなと。ボールを触るのが怖いというか、『ミスをしたらどうしよう』という考えだったんですけど、2年生になって積極的にボールを持ってみたら『意外とできるな』という手応えがあって、そこから世代別代表に呼んでもらえたことで自信が大きくなりましたし、試合の中で『自分がやってやろう』という気持ちが大きくなったなと思います」。

昨年のプレミアリーグプレーオフでも、スタメンで出場すると悲願の昇格に大きく貢献。その試合に出ていた対戦相手の選手から、「トップに昇格する五十嵐（太陽）選手は警戒していましたけど、大関選手の上手さに驚かされました」という声が上がるなど、高いレベルの試合でも活躍できるまでに、確かな進化を遂げてきた。今シーズンは世代最高峰のプレミアリーグでも、首位を快走し続けるチームの中で、その能力をのびのびと解き放っている。だからこそ、もちろんトップチーム昇格が決まっただけで、満足するはずがない。

「フロンターレという素晴らしいクラブで、憧れだったプロサッカー選手になれることは素直に嬉しいですし、皆さんに『おめでとう』とは言ってもらえるんですけど、やっぱり試合で活躍して『おめでとう』と言われたいです。プロになっただけではお世話になった人たちへの恩返しにならないと思うので、等々力の皆さんの前で活躍するところを見せたいですね」。

三好康児や三笘薫、田中碧など世界へと羽ばたく才能を生み出してきた、“川崎U-18の10番”の最新作。その系譜が紡ぎ出す物語に、大関友翔が名前を連ねる可能性は、十分過ぎるほどにある。

文：土屋雅史