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PKの判定自体は、オンフィールド・レビューが行われたことでも分かるように、かなり微妙なものだった。しかし、あの時間帯の試合展開を見れば、同点ゴールが生まれたのはけっして偶然ではなかった。
その後、後半の最後の時間帯になると、疲労がたまった全北の選手の足は完全に止まり、浦和が押し込んで、全北は自陣深くで構えるという展開となり、後半のアディショナルタイムには連続して決定機をつかんだ浦和だったが、キャスパー・ユンカーのシュートがポストに嫌われるなど、決勝ゴールを生み出すことはできず、試合は延長に突入した。
そして、カウンターとセットプレーしかなくなった全北だったが、浦和は守備の拙さもあってチャンスを作られ、そしてCKから失点。窮地に追い込まれていった。
浦和はなぜ1点リードしてから戦い方を変えてしまったのだろうか? 単に守りに入っただけなのだろうか?
今シーズンの序盤、浦和は勝点を伸ばせずに苦しんでいたが、当時は「ボールを大事にしよう」というリカルド・ロドリゲス監督の方針に対して、「前に行く推進力がない」という批判が集中した。その後、チームがまとまってくるとともにアグレッシブな姿勢も見え始め、今回のACLでは前からの激しいプレスによって大量得点を生み出してきた。
だが、同時に「ボールを大事に」という方針も残っている。そこで、その両者の間で針が振れることがあるのだ。準決勝のパトゥム戦でも、やはり後半になって「ボールを大事にする」方針に切り替えたこともあった。
その2つの戦い方を、これからどのように整理していくのかが、浦和レッズの今後の浮沈の鍵となるのではないだろうか?
いずれにしても、2022年シーズンのACLでは、グループステージから準決勝まで日本と韓国のクラブが8度対戦したが、結果は韓国側の4勝4引き分け(PK戦は引き分け)。Jリーグクラブはとうとう韓国相手に1勝もできなかったのだ。
戦術的にも技術的にも、今ではJリーグの方がKリーグより間違いなく上回っている。だが、一つだけ韓国のサッカーに敵わないのが「球際の強さ」だ。たとえ、数的不利に陥っても、疲労の極にいても、韓国の選手たちはボールの奪い合いでは日本を上回る。実際、浦和と全北の試合でもポゼッションやシュート数、枠内シュートなど多くのスタッツで浦和が上回っていたが、デュエルや空中戦、タックル成功率など“球際”に関する数字だけは全北が浦和を上回っていたのである。
まだ、韓国から学ぶべきことはあるようだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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