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日本 vs. フランス|FIFA U-20 女子 ワールドカップ コスタリカ 2022 準々決勝-4
中米コスタリカで開催されているFIFA U-2O女子ワールドカップでU-2O日本女子代表(ヤングなでしこ)が準決勝進出を決めた。
準々決勝のフランス戦は激しい点の取り合いだった。
前半の15分にマニャバ・フォルケのシュートが日本のDFに当たってコースが変わって不運な失点となってしまったが、前半のうちにPKを獲得して同点とし(ゴールは山本柚月)、後半開始早々に浜野まいかがコースを狙った技巧的なシュートを決めて逆転。ところが、その後、パワーとスピードを生かした攻めに切り替えたフランスの前に守備に追われる時間が長くなり、終盤の85分に右サイドを突破されてムバケム・ニアロに強烈にニアサイドを打ちぬかれてついに同点となって延長入り。
そして、延長に入ってもフランスの勢いは止まらず、ヘルツェルのミドルシュートが決まってリードされて日本は苦境に追い込まれた。しかし、延長も後半のアディショナルタイムに入ってから得たゴール正面のFKの場面。空中戦での競り合いの中でフランスのGKマリー・モルガン・シーバーがパンチングを試みたが、ボールより前に藤野あおばに接触したとしてVARチェックが入ってPKと判定された。そして、この大事なキックを藤野自身が決めて3対3で試合が終了。
こうして、土壇場で追いついた日本がPK戦では5本すべてを成功させ、GK大場朱羽がフランスのキックを1本止めて準決勝進出を決めたのだ。
シュート数は日本の10本に対してフランスが21本と、内容的には負け試合だったかもしれないが、最後まで粘ってPK戦の末に勝ち抜けることに成功……。2011年に女子ワールドカップで優勝した当時の“強いなでしこ”を彷彿させるような粘り強い勝ち上がり方だった。
GKシーバーの不用意に飛び出してくる悪癖が2度のPKにつながってしまったのだから、フランス・ベンチもさぞ落胆したことだろう。それに対して、日本のGK大場の落ち着きが日本を救った。大場はPKの場面でも無暗に早く動くことなく、コースを読んで対応したことでストップに成功した。
内容的にはパス回しでは日本が上なのはまちがいない。
とくに守備面では、相手がパスをつないでビルドアップしてきてくれるのであれば、日本は組織的なディフェンスでほぼ完全に止めることができる。1人がボールを持った相手を遅らせる間に、ボランチやウィングバック、ストッパーが相手を囲ってボールを奪う守備のコンビネーションは完成度が高い。そして、良い形でボールを奪うことで、日本はすぐに攻撃に切り替えることができる。そして、MFからFWまでたえず複数のパスコースを作りながら攻めた。
ただし、フランスのようにパワーとスピードを兼ね備えた選手が多いチームが「個の力」を前面に出して戦ってきた時には日本代表は苦しむことになる。
それは、このU-20日本女子代表だけの問題ではない。
すべての年齢別カテゴリーで、そして男女のチームすべてに共通した課題なのだ。4年前のロシア・ワールドカップでも、ラウンド16でベルギーと対戦した日本は2対0とリードしながら、高さを生かすベルギーのパワープレーで追いつかれて逆転負けを喫した(先日のEAFF E-1選手権では、男子の日本代表がフィジカル・コンタクトでも韓国に勝ってアジア域内では日本はフィジカルでも勝てる時代に入ったが)。
「女子の、それも年齢別代表の大会にどこまで意味があるのか?」と疑問に思う方もあるかもしれないが、フィジカル勝負を仕掛けられた時にどのように対応するのかというのは男女通じてすべてのカテゴリー共通の課題なのだ。
ある意味で、作り込まれたフル代表以上に、年代別の大会の方がその国のサッカーの実力を測るに適しているような気もする。
この大会、日本は3戦全勝の1位でグループリーグを突破した。
初戦のオランダ戦は、相手がパスをつないでビルドアップしてくるスタイルだったこともあって、日本の集団的な守備が完全に機能。内容的にはオランダを圧倒したのだが、27本も放ったシュートがなかなか枠に飛ばず、スコア的には1対0の辛勝に終わってしまった。
続く第2戦は戦力的に劣るガーナが相手だったが、この試合では、池田太監督がメンバーをいじり、またオランダ戦のスリーバックからフォーバックに変えたため、チームがオランダ戦ほどうまく機能しなかったが、それでも実力通りに2対0の完勝。そして、2戦を2連勝で終えたもののグループ突破は最終アメリカ戦まで持ち越されてしまったが、最終戦ではアメリカの猛攻に耐えながら冷静に得点を重ねて3対1で勝利。
初戦では緊張感からか、シュートを枠に飛ばせなかった日本だったが、試合ごとに次第に落ち着きを取り戻し、実際、得点も1点 → 2点 → 3点と尻上がりに得点力も上がってきていた。
そして、フランス戦では「フィジカル勝負を挑んでくる相手への対処」という日本サッカー永遠の課題も突きつけられた。
つまり、大会に入ってからすべて異なったタイプのチームと異なった内容の試合を積み重ねて準決勝に駒を進めてきたのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、現在の若い年代の選手たちは男女ともに国際大会の経験を積めていない。たとえば、現在のU-20年代だったら、彼女たちが出場できたはずの本来2021年に開催されるはずだったU-17ワールドカップは中止となってしまったのだ。
そういう意味では、将来のためにもU-20ワールドカップでは1試合でも多くの試合を戦うことが最大の目的だ。
そして、先ほども述べたようにコスタリカでは最高の経験をしながら準決勝に進出。大会でマックスの7試合を経験できることとなった。
次は、ブラジル。つまり、今大会初めての南米勢との対戦となる。また、準決勝という高いレベルともなれば、それなりの緊張感も伴うはずで、すべてが若い選手たちにとっての最高の財産となっていくはずだ。
もちろん、敗戦から学ぶことも大きいかもしれないが、できれば勝つ経験をしながら学んでいけたらもっと良い。8月25日(日本時間26日午前)の準決勝、そして28日(同29日午前)の決勝戦から目が離せない。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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