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サッカー フットサル コラム 2022年8月23日

バルセロナのアンス・ファティは桁が違う!

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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アンス・ファティ

アンス・ファティ

最終スコア1-4、前半は1-1だったが後半は0-3。最初の交代で入って来た顔ぶれが、ソシエダはナバーロ、トゥリエンテス、ショーで、バルセロナはアンス・ファティ、ラフィーニャ。両チームの戦力差を象徴している。

ソシエダの先発11人がスタミナを考えずラッシュすると、前半はバルセロナと互角にはやれる。が、後半は差が開く一方で、縮める術がない。

もちろん、サッカーは心理的なゲームでもあるから、ラッキーなPKの笛が吹かれるとか、GKが奇跡のセーブを連発するとかでバルセロナが焦って力を出せず、逆にソシエダに力以上のものが出れば、勝敗の逆転は起こり得る。だが、普通にやれば11人対11人なら何とかなっても、ベンチ入り23人対23人では歯が立たない、ということだ。

アンス・ファティは入って15分間で2アシスト、1ゴール。手術を繰り返した膝のケガからの回復が順調であることを証明した。

ファティは桁が違う選手だ。

歯を食いしばってやっているように見えないのに、必死の相手を軽くあしらってしまう。この試合では出さなかったが、デビュー時に驚かされたのが、彼のフェイントにベテランのDFたちが簡単に引っ掛かり腰砕けになってしまうこと。高速フェイントというわけではなく、ゆっくりやっているのにバタバタと倒れて道が開く。

野球の大打者が「ボールが止まって見える」と言っているが、あれと似たようなことが起こっているのではないか。ファティには周りがスローモーションに見えるとか。スローだから、DFの体重移動を見極められ、ボールを逆に動かすだけで軽く抜けるとか。

メッシには同様の印象を持ったことがある。もっとも、メッシの場合は実際にアクションが速くて、倍速と普通の速度くらいの差があった。

ファティはシュートの精度も普通じゃない。

難しい態勢でスペースも時間もないところで撃っても枠に飛ばないということはなく、普通に撃てばGKが絶対に届かないところに入る。これはメッシも同じだ。

周りがスローに見えるのだから、普通の選手には一瞬でも彼には狙いを定める時間的な余裕があるのだろう。

その時間的なアドバンテージが何によるものなのかはわからない。動体視力なのか、空間把握力なのか、頭の回転の速さなのか、反射神経の伝達スピードなのか、筋肉の収縮スピードなのか。

2つのアシストを見てわかるのは、サッカー的にもの凄く頭が良いということだ。ああいう発想はなかなか出ない。

これもスピードの違いで説明できるのかもしれない。人が1、2つのアクションをシミュレーションしている間に10のシミュレーションをしてしまうとか。で、10の中からベストを選ぶから、DFには予測できないサプライズになる。

もちろん、ヒールであのスピードで転がすとか、軽く浮かして撃ちやすい絶好球にするとかの高い技術の裏付けがあるからこそできることなのだが。

いずれにせよ、アンス・ファティは戻って来た。W杯にも十分間に合うタイミングで。彼の復活は、スペインをダークホースから優勝候補にするくらいのインパクトがある、と思う。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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