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集中開催で行われるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16から準決勝までの戦が始まった。
初日にはラウンド16の2試合が行われ、奇しくも韓国勢同士(大邱FC対全北現代モータース)と日本勢同士(ヴィッセル神戸対横浜F・マリノス)の対戦となった。
横浜は日本を代表する強豪クラブの一つであり、今シーズンも首位を走っており、現在は2位の鹿島アントラーズに勝点で5ポイントの差をつけている。一方、神戸の方は不振が続き、16位と残留争いの真っ只中。監督交代を繰り返して、現在は神戸で3度目の監督就任となった吉田孝行氏が指揮を執っている。
韓国勢同士の試合も似たような状況だった。
全北は韓国を代表する強豪クラブで、ACLでも“常連”だ。そして、今シーズンのKリーグでは蔚山が首位を走っているが、全北も2位に付けて逆転優勝を狙っている。そして、大邱FCの方はといえば神戸と同じように残留争いの渦中にあり、12チーム中9位にいるものの、消化試合数を考えるとぎりぎりの順位だ。そして、8月に入ってアレシャンドロ・ガマ監督が解任され、現在は崔源権(チェ・ウォンクォン)コーチが監督代行を務めている。
リーグ戦で低迷しているチームが、「別のコンペティション」であるACLで上位チームを相手にどんな戦を見せるのか……。それが、この日の興味の焦点だった。
大邱が選択したのは「守備固め」だった。5人のDFがフラットラインを作って全北の攻撃を跳ね返し続け、ボールを奪うとすぐにロングボールを蹴って前線の2人のブラジル人に預けるのだ。
トップのゼカは、高さも強さもある選手でロングボールを収めてポイントを作ることができるし、左サイドのセシーニャは中に切れ込んだり、中盤に下がったりと神出鬼没の位置取りをする曲者タイプ。つまり、この2人だけでなんとか攻撃の形を作れるわけだ。
堅固な守備を固める大邱を相手に全北が攻める。120分の試合を通じてポゼッション率では全北が74.3%というのだから、まさに圧倒したわけである。
だが、全北は大邱の守りを崩せない。攻撃の型に変化がなさすぎるのである。
右サイドはサイドハーフの韓教元(ハン・ギョウォン)に預けて、サイドバックの金紋奐(キム・ムンファン)が追い越してクロスを上げる形。そして、左サイドではキム・ボギョンがポイントを作り、サイドバックの金珍洙(キム・ジンス)がサポートする形。この左サイドの2人は自由にポジションを取って攻撃のバリエーションを増やすことができた。とくに、キム・ボギョンはJリーグでも活躍して馴染みが深い選手だが、今ではまさにこのチームの攻撃の柱となっている。しかし、チーム全体としては攻めのアイデアに欠けていた。
こうして前半はスコアレスで折り返したが、後半のキックオフから35秒で全北が大邱の守備をこじ開けて見せた。中盤で孟宣民(メン・ソンミン)が大きく右に振り、右サイドの韓教元が入れたクロスにワントップの松旻揆(ソン・ミンギュ)が合わせてボレーで決めたものだ。
「これで、全北の勝利が決!」と思われたが、10分後の56分。ロングボールからゼカが抜け出して、あっけなく大邱が同点とする。その後も一進一退が続き、延長でも決着がつかずにPK戦突入かと思われた121分(つまり、延長後半のアディショナルタイム)に交代で出場したばかりの金鎮圭(キム・ジンギュ)が押し込んで、全北がなんとか勝利を収めたのだ。
つまり、この試合ではリーグ戦で下位に低迷している大邱が引いて守りを固めたのに対して、上位の全北が攻めあぐねた、まさに膠着状態が120分間続いた試合だった。守備から攻撃への切り替えも遅く、30年ほど前の(つまり、Jリーグ以前の)サッカーを見ているようだった。
一方、Jリーグ勢同士の戦いでは、神戸が大邱とは対照的に素晴らしいアグレッシブな試合を見せてリーグ戦首位の横浜と激しい打ち合いを演じて、見事に3対2で勝利を飾った。
実にハイレベルでエキサイティングな攻防だった。なにしろ、シュート数が神戸の18本対横浜の19本。枠内シュートだけでも5本対9本というのだ。
互いに非常に高い強度のプレッシャーを掛け合う激しい展開で、ひとたびボールを奪うと瞬時に周囲の選手がいっせいに反応して動き出して攻撃に移る。良い位置にいれば、守備的なポジションの選手も躊躇せずに攻撃に飛び出していく。
とくに、横浜はいつものように両サイドバックがサイドハーフを追い越してオーバーラップをかけたり、あるいはインサイドハーフのポジションに上がって攻撃に加わったりと自由にポジションを変えながら攻撃を続けた。
一方、神戸では右サイドに入った飯野七聖が精力的な動きを見せ、トップの大迫勇也もしっかりとボールを収めて起点を作る。左サイド汰木康也も勝手知ったる埼玉スタジアムでドリブルで切れ込んでくる。それぞれが特徴をしっかりと発揮できていたのだ。そして、中盤では山口蛍がミドルレンジのパスを駆使してゲームを作った。
開始から7分、汰木からのパスを受けた飯野がタックルに来たDFの脚とGKを越すループシュートを決めて神戸が先制すると、横浜もその2分後に右サイドで形を作って仲川輝人が入れたクロスに西村拓真が合わせて同点とした。だが、31分には相手のハンドで得たPKを佐々木大樹が決めて神戸が勝ち越してハーフタイムを迎えた。
「失うもののない状態」の神戸が思い切ったアグレッシブな試合をしたのに対して、横浜はどうしても精神的に受け身に回ってしまって、その分プレー強度が落ちてしまったという前半だった。そして、攻めてはいても追いつけないという状態が続いたことによって今度は焦りが生じて、1人で強引に突破を狙う形となってしまった。
終盤には、さすがの神戸にも疲れが見えて攻撃の形を作れなくなってしまったかに見えたが、80分には右サイドで飯野が起点となって形を作り、最後は交代出場の小田裕太郎が決めて、神戸が準々決勝進出を決めた。
Jリーグは、ここ数年で非常にレベルが上がっている。アンジェ・ポステコグルー(現、セルティック監督)が横浜F・マリノスの監督に就任して、両サイドバックが高い位置に上がるサッカーで一世を風靡したが、それからほんの4、5年でサイドバックの攻撃参加などユース年代のチームでも、女子チームでも普通に行われるようになった。多少のぶつかり合いではホイッスルを鳴らさない積極的なレフェリングもあって、プレー強度も格段に上がってきている。
神戸が横浜を破ったラウンド16は、そんな現在のJリーグの良さを凝縮させた試合といってもよかった。
この数年にわたってJリーグの発展を牽引してきた川崎フロンターレと横浜F・マリノスは、カップ戦での弱さがあり、両チームともすでにACLから姿を消した(ちなみに、両チームとも天皇杯もルヴァンカップも敗退)。そして、下位に低迷する神戸と最近は上り調子ながら安定感を欠く浦和レッズが日本を代表して戦うことになったのだが、少なくともラウンド16の試合を見れば日本勢優位は揺るがない。
韓国強豪、全北現代モータース相手にJリーグのレベルの高さを見せつけるサッカーをして、来年2月に行われる決勝進出を目指してもらいたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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