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脇坂泰斗
EAFF E-1選手権の2戦目で中国代表と対戦した日本代表はボールを握り続け、前後半合計で20本のシュートを放ったもののゴールは遠く、結果はスコアレスドローとなってしまった。これで1勝1分となった日本は、この大会で優勝するためには2戦2勝の韓国との最終戦で勝利するしかなくなった。
ただ、結果は引き分けに終わったものの、中国戦のパフォーマンスは6対0で勝利した香港との初戦の時よりも良かったことは間違いない。簡単なパスミスが少なくなり、スピードのあるパスがつながって日本は中国を圧倒することができた。守っても、攻撃から守備への切り替えが早く、中国に反撃の機会をほとんど与えなかった。
海外組が招集できない東アジア・サッカー連盟(EAFF)主催のこの大会。国内組でも大迫勇也(ヴィッセル神戸)や長友佑都(FC東京)などワールドカップ経験者は招集が見送られたため、招集されたのは代表経験の少ない選手ばかり。カタール・ワールドカップに向けた最終予選で試合に出て活躍した選手といえば、DFの佐々木翔や谷口彰悟、山根視来くらいなものだ。19歳のGK鈴木彩艶から32歳の佐々木、水沼宏太までを集めた、いわば「Jリーグ選抜」的なチームである。
7月16日、17日のJリーグの試合を終えてから集合してすぐ、19日の火曜日には初戦を迎えたため、香港とはほとんど練習の時間がないまま戦わざるを得なかったのだ。チームがうまく機能しなくても不思議はない。それでもなんとか形になったのは川崎フロンターレと横浜F・マリノスの選手が多く起用されたため、クラブでのコンビネーションを使えたからだ。
しかし、中国戦までには、もちろん回数は十分ではないが、合同トレーニングが行えたからパス回しもかなりスムースになってきた。しかも、中国戦ではGKの大迫敬介を含めてサンフレッチェ広島の選手が5人も起用された。
だが、しっかりとパスを回して攻撃の形は作れたものの、中国の分厚い守りを崩すことはとうとう最後までできなかったのだ。U-21代表では結果を出した期待のストライカー細谷真大もほとんど仕事をさせてもらえなかった。
優勝が懸かった韓国戦(7月27日)でも、おそらく日本がボールを持って攻撃する時間が長くなることは間違いないだろう。即席チームとはいえ、やはり日本の選手たちのパスを回す能力は高い。
そうなると、課題はただ一つ。「チャンスをいかにして得点に結びつけるか」だ。優勝するには勝つしかない。そして、勝つためにはゴールを決めなければならないのだ。
攻撃面で中国戦で活躍が目についたのがインサイドハーフ(攻撃的MF)に入った脇坂泰斗だった。ゴール前のスペースがほとんどない密集の中でパスの角度やスピードを微妙に変えることによって日本の攻撃に変化を与え続けたのだ。
中国戦から韓国戦までは中2日しかないので、韓国戦は初戦(香港戦)のメンバーが主体となるだろう。中国戦で81分までプレーした脇坂も90分はプレーできないかもしれない。だが、時間限定であっても、脇坂は勝利のために必要な選手のように思える。
さて、では、中国戦でなぜ脇坂からトップの細谷にうまくパスが通らなかったのだろうか? それは、脇坂と細谷の意思疎通ができなかったことが原因だ。いわゆる「共通のビジョン」が描けなかったのである。
川崎でプレーする脇坂にとって、FWというのはゴール前で相手DFと駆け引きをしなが得点に結びつきやすいポジションを取る存在のはずだった。一方、細谷は相手DFの間に隙を見つけて縦に直線的に抜け出すタイプのFWだ。相手にとっては分かっていても止められないスピードがある。従って、脇坂は細谷が得意な縦への動きを生かすようなパスを送らなければならなかったのだ。
町野修斗
韓国戦ではワントップとしては、香港戦で2ゴールを決めた町野修斗が先発起用される可能性が高い。町野は細谷とは違って縦に抜けるというより、スペースを見つけてシュートが狙えるポジションに入っていくタイプのFWだ。
細谷と町野というタイプの違うFWに対してはどのようなパスを出せばゴールに直結するのか? 韓国戦までわずか2日間しかないが、脇坂をはじめとするMF陣と町野や細谷との間でのコミュニケーションが大事になってくる。
もう一つ、日本の攻め手として有力なのがサイドバックの攻撃参加だ。
Jリーグではサイドバックがインナーラップして、インサイドハーフのポジションに入ったり、相手ペナルティーエリア内深くまで進出するといったことが普通に行われるようになっているが、アジア諸国ではそうしたプレーはまだあまり一般的ではない。
そのため、よく組織された中国のディフェンス陣も、小池龍太がいつも横浜F:マリノスでやっているようにインナーラップして攻撃参加するとかなり手を焼いていた。おそらく、サイドバックのインナーラップに対しては韓国もうまく対応できないのではないだろうか。
その意味で、韓国戦で先発するであろう山根視来の攻撃参加には期待したい。
山根がインナーラップしてサイドハーフの家長昭博などとパス交換しながら相手のペナルティーエリア内の深い位置まで入り込むプレーは今では川崎フロンターレの最大の攻め手だし、6月に行われたキリンチャカップのガーナ戦でも山根は久保建英、堂安律とのパス交換から飛び出して先制ゴールを決めている。
山根の攻撃参加は韓国の守備を切り崩すための大きな武器となるだろう。そして、山根の攻撃力を生かすためにも、やはりいつも川崎で組んでいる脇坂に大いに期待したいのだ。
中国戦では普段はインサイドハーフをやっている森島司が左のサイドハーフとして起用されたが、慣れないポジションということもあって期待通りの活躍は見られなかった。
日本代表は、アジア最終予選の途中から遠藤航をアンカー・ポジションに置き、守田英正と田中碧をインサイドハーフとする4−3−3を基本として戦って予選突破を手繰り寄せた。
E-1選手権の招集メンバーを見ると、この4−3−3に当てはめるのが難しいような気もするのだが、森保一監督は香港戦でも中国戦でも中盤を逆三角形にした4−3−3のフォーメーションをけっして崩そうとしなかった。おそらく、カタール・ワールドカップでもこの形で戦うことを決めているからだろう。
そのため、第2戦では森島がアウトサイドで起用されることになったのだが、今回の招集メンバーで左サイドを専門とするのは相馬勇紀と宮市亮しかいない。相馬は中国戦でも81分に投入されると何度かドリブル突破からチャンスを作っていた。
当然、韓国戦でも左サイドには宮市か相馬が起用されるだろう。右サイドからは脇坂やサイドハーフの選手(水沼宏太?)と絡んでの山根の攻め上がりが武器になるが、左は宮市、相馬のドリブルでの崩しに期待が集まる。
いずれにしても、ワントップで起用される町野や相馬には脇坂からのスルーパスの受け方、両サイドからのクロスに対してどんな角度でどのようなタイミングでゴール前に入っていくのが効果的なのか、そのあたりを徹底的に突き詰めていってほしいのである。
文:後藤健生
写真:Noriko NAGANO
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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