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全国高等学校総合体育大会、通称“インターハイ”のサッカー競技が7月24日に開幕する。今回の開催地は徳島県。全国から52校の精鋭が集い、真夏の日本一を巡って激闘を繰り広げる。J SPORTSでは準決勝と決勝を放送、配信することが決まっているが、その“予習”として今大会の主役候補の選手たちをご紹介していきたいと思う。
福田師王
今大会最注目のストライカーが、神村学園高校(鹿児島)で1年生から主力を務めてきたFW福田師王(3年)だ。この年代の水準を遥かに超えたレベルの得点感覚を有し、あらゆるパターンからゴールを奪うことのできる逸材。しかも、どれだけ得点を重ねても「もっと決められるところもあったので、もっと求めていきたい」というフレーズがもはやデフォルトになっており、どんな結果を出したとしても満足するような雰囲気は微塵もない。ただ、実際に話してみるとごくごく純朴な“サッカー大好き高校生”という一面も持ち合わせており、そのギャップも非常に好印象。同校ではやはり1年生からレギュラーを張ってきた世代屈指のボランチ、セレッソ大阪内定のMF大迫塁(3年)もプレーしており、彼らが最高学年を迎えた神村学園の躍進にも期待が集まっている。
小湊絆
ストライカーならば、大会連覇を狙う青森山田高校(青森)のFW小湊絆(3年)も忘れるわけにはいかない。日本一に輝いた昨年度の高校選手権では、すべて途中出場ながら3ゴールをマーク。絶対的なキャプテンだった松木玖生(FC東京)から10番を引き継いだ今シーズンは、なかなか結果を出せずに苦しんできたが、6月以降は公式戦での得点も重ねており、ようやくその表情にも笑顔が戻ってきた。「ストライカーをやっている以上は、自分が全部ゴールを決めたいぐらいの気持ちなんですけど、自分が点を決めなくても勝てるんだったら、絶対にそっちの方が誰にとってもプラスになると思うので、そこはもう自分のエゴを抑えながら、2連覇を目指してやっていきたいですね」と意識の変化も口にしていたが、この男の爆発が連覇の絶対条件であることは言うまでもないだろう。
荒井悠汰
今大会の登録選手で、唯一Jリーグの公式戦を経験しているのが昌平高校(埼玉)のMF荒井悠汰(3年)。FC東京の特別指定選手として、ルヴァンカップで3試合に出場。もともと低い重心から繰り出す馬力十分のドリブルには定評があった中、プロの世界を体感したことで「ボールを持っていない時の動き出しが変わったかなと思います」と明言。自分で勝負する時と、裏へと抜け出してボールを受ける時の使い分けも、確実にブラッシュアップされてきた。今年の昌平にはFC LAVIDA時代から6年間に渡ってともにプレーしてきた選手も多く、「やっぱり一緒にやってきた仲間だからこそ、最後のインターハイは優勝したいですし、そのためには自分が結果を残さないといけないので、ゴールやアシストを狙いながら、責任を持って戦いたいです」ときっぱり。高校ラストイヤーに懸けるレフティからも目が離せない。
名願斗哉
プレミアリーグきってのドリブラーとして名を馳せているのが、履正社高校(大阪)で10番を託されているMF名願斗哉(3年)だ。独特のリズムを刻むドリブルは、本人も影響を受けている選手として名前を挙げる三笘薫に似た雰囲気が。プレミアの舞台でも左サイドからの鋭いカットインを繰り返し、ゴールやアシストという明確な結果も積み重ねてきた。「自分を見てもらった時に『コイツ全然やな』みたいに思われたくないので、『やっぱり凄いな』と思わせられるようなプレーをしたいと思います」と話しつつ、厳しさを増し続ける相手からのマークにも「やりづらさはあるんですけど、自分はそれを剥がさないといけないですし、それが仕事なので、どんどん来てくれたらいいかなと思います」と言い切るメンタルも頼もしい。彼がボールを持てば、ピッチ上には何かが起こる。
徳永涼
有力な優勝候補でもある前橋育英高校(群馬)が誇る高校年代トップクラスのボランチ、MF徳永涼(3年)も語り落とせない。圧倒的な基礎技術の高さゆえに、ボールロストはほとんど皆無。プレミアで戦う今シーズンは、そのゲームメイク力もJユース相手に見せ付けており、6月には念願の年代別代表にも招集されるなど、着実にその評価を高めている。「目標の日本一に向かって、『このぐらいでいいや』みたいな感じにチームはなっていないですし、プレミアでの戦いを通じて手応えはあります。だからこそ、気の緩みや隙がチームの穴になってくると思うので、自分たちの自信が過信にならないように、自分が中心になってチームを作っていきたいと思います」とキャプテンとしての存在感も抜群。柏レイソルU-18への昇格を断って、自ら門を叩いたタイガー軍団での日本一を真剣に目指す。
齊藤慈斗
高校サッカー界の超名門として知られ、今大会のダークホース的存在の帝京高校(東京)で、チームを最前線から牽引しているのがFW齊藤慈斗(3年)。1年時にはU-15日本代表にも選出されたアタッカーは、フィジカルの強さを武器に身体を張り続けるスタイルが印象的。昨年度もインターハイに出場しているが、結果的に準優勝した米子北高校との初戦ではPK戦でキックを失敗し、チームも敗退。その経験も踏まえた今大会は「去年は全国に出たのに自分がPKを外して負けてしまって、たぶん誰よりも一番悔しい想いをしたはずなので、その借りを返す時が来たなと思います。その上で、自分のプレーを周りに知ってもらえるような存在になりたいですね」と意気込みを表明。20年ぶりとなる夏の全国制覇を目指すカナリア軍団にとって、このストライカーの出来が浮沈のカギを握っている。
高校サッカー界にとって『真夏の祭典』とも言うべき、インターハイ。徳島のピッチを熱く燃やすタレントたちの競演が、今からとにかく楽しみだ。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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