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サッカー フットサル コラム 2022年7月15日

E-1選手権に臨む日本代表 最大の目標は「優勝」よりも「底上げ」

後藤健生コラム by 後藤 健生
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7月19日から開催されるE-1選手権(東アジア選手権)に出場する日本代表のメンバー26名が発表された。

ご承知のように、この大会にはヨーロッパのクラブ所属の選手は招集できない。しかも、森保一監督の方針で、国内クラブに所属している選手の中でも代表のレギュラーでこれまでワールドカップ本大会出場経験のある権田修一(清水エスパルス)、長友佑都(FC東京)、酒井宏樹(浦和レッズ)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)の4人が招集外となった。従って、本来の日本代表とはまったく違う構成の特別なチームになってしまった。

メディアでは「カタール・ワールドカップのメンバー選考」という意味合いが強調されているようだが、代表チームの顔ぶれの大部分はすでに決まっている。6月に開かれたキリン・チャレンジカップ、キリン・カップで招集された選手(および同大会で招集外となった大迫や酒井など)以外の新しい選手がこれからメンバー入りするのはきわめて難しい。

例外があるとすれば、FW陣か。

大迫が招集されなかったキリンカップでも、代役候補と見なされた選手たちのプレー内容は今一つだった。そうした状況を考えれば、FWの選手なら、E-1選手権で傑出した働きをすれば最後の最後でサプライズ招集の可能性は残っているかもしれない。だが、層が厚い他のポジションではこれからカタール行きを狙える選手はほとんどいないだろう。

そんな状況の中、どのような構成のチームでこの大会に臨むべきなのか、考え方としては2つあった。

1つは完全に若手選手中心のチームにすること。つまり、先日、カザフスタンで開かれたAFC U-23アジアカップに出場して3位に入ったU-21日本代表(パリ・オリンピックを目指すチーム)を中心とすることだ。

この世代は、新型コロナウイルス感染症の流行のおかげで、2021年に開催予定だったU-20ワールドカップが中止となったため、国際大会を経験する貴重な機会が奪われてしまった。そして、この秋に出場する予定だったアジア競技大会(中国・杭州)も中止になってしまったのだ。このままでは、タイトルのかかった国際大会をほとんど経験できないままになってしまう。

E-1選手権は国際試合の経験を積ませるのにもってこいの大会ということになる。

もう1つの考え方は、招集可能な選手(つまり、Jリーグ所属選手)による最強チームを結成して勝ちにこだわって戦うことだ。

優勝を目指して戦うことによってバックアップメンバーの層を厚くすることができるし、次のワールドカップを目指すべき若手も育てていこうという立場だ。

そして、森保監督は後者を選択した。

最年長の佐々木翔(サンフレッチェ広島)は間もなく33歳。A代表初招集の水沼宏太(横浜F・マリノス)はすでに32歳のベテランである。佐々木はこれまでも代表のメンバーに入っており、カタール・ワールドカップでも控えのDFとしてメンバー入りする可能性が高い。一方、水沼は今シーズンは彼のキャリアでピークといってもいい素晴らしいパフォーマンスをしているが、今後もA代表に招集されるとは思えない。

そうしたベテランも含めて“現時点での最強メンバー”をそろえたあたりは、常に勝負にこだわる森保監督らしいメンバー選考だった。

一方で、若手も多数招集されている。最年少は守備的MFとして長足の進歩を遂げている藤田譲瑠チマ(横浜)と身体能力が高く将来を嘱望されるGKの鈴木彩艶(浦和)の2人の20歳である。

「ベテラン」または「中堅」と位置づけられる年齢の選手でも、いずれも横浜所属の小池龍太(26歳)、宮市亮(29歳)、西村拓真(25歳)といった今シーズン好調な選手が網羅的に選ばれた(このあたりは、Jリーグの選手たちのモチベーションを高めることにつながる)。

そのほか、各所属チームで今シーズン絶好調の若手FW3人もメンバーに入った。

満田誠(広島)、町野修斗(湘南ベルマーレ)、細谷真大(柏レイソル)である。先ほども述べたように、FWというポジションの特殊事情を考えれば、彼らがE-1選手権の3試合で素晴らしい結果を残し、トレーニング場で森保監督に良い印象を与えれば、カタール大会での“サプライズ招集”の対象になる可能性を秘めている。

本当なら、J2リーグの得点王争いで独走している小川航基(横浜FC)も代表で見てみたいところだったが、リーグ戦が中断しないJ2クラブからの招集は見送られた。

今回の日本代表はメンバー発表記者会見の席で森保監督自身が語ったように「勝つこと」と「層を厚くすること」を両方とも目指すようなチームとなった。

しかし、2つを同時に目指すことによって目標が曖昧になってしまいう心配もある。試合ごとに、その位置づけと目的を明確化して戦うべきだろう。

日本代表は7月19日に香港、23日に中国、そして27日に韓国と対戦する。

香港戦は7月16日と17日に行われるJ1リーグ第22節の直後なで、この試合のメンバーはコンディションを考慮しての選考となる(広島の選手が6人も選出されているが、広島は7月17日に試合があるので香港戦には起用できないだろう)。そして、香港戦とトレーニングを通じてコンディションを整えた後の中国戦では若手中心のチームを作って経験を積ませ、そして韓国戦では現時点最強チームを組んで勝利を目指すというのが基本的な考え方だろう。

とくに、韓国相手には最近はU-16日本代表が同韓国代表に3対0、U-21日本代表が1ウー23韓国代表に3対0、そして全日本大学選抜が韓国大学選抜に5対0と“完勝”を続けている。今回の、国内組同士のA代表(A’代表?)同士の試合でも韓国を破っておきたいところだ。

だが、何よりも大事なのは勝負(E-1選手権優勝)ではなく、層を厚くすること(底上げ)。プレーする選手スタッフも、メディアやサポーターもそこは忘れてはいけない。

E-1選手権では女子代表(なでしこジャパン)の試合も注目される。女子代表は来年オーストラリアとニュージーランドで開催されるFIFA女子ワールドカップを目指すチーム。こちらも海外組は不在だが、男子とくらべれば主力級が多数入ったメンバーだ。

女子代表の池田太監督は、昨年の東京オリンピック終了後に就任したばかりであり、まだコンセプトの浸透が十分ではない。しかし、6月の欧州遠征では久しぶりに良い内容の試合ができたので、そのイメージをしっかり定着させるためにも、アジアのライバル相手に良い内容で勝ち切ってほしい。

海外組が抜けた代わりに若い選手や久しぶりの招集となった選手が含まれているが、僕としては3年ぶりの招集となった清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)に注目している。元FWで攻撃力抜群の右サイドバック。フィジカルの強さとスピードを兼ね備えた選手である。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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