人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2022年7月4日

素晴らしい攻撃力で首位の座を堅持。国立競技場を盛り上げた横浜FMの攻撃サッカー

後藤健生コラム by 後藤 健生
  • Line
J SPORTS

J SPORTS

7月2日の土曜日に東京・国立競技場で行われたJ1リーグ第19節で横浜F・マリノスが清水エスパルスから5ゴールを奪って快勝。首位の座をキープするとともに、クラブとしてJ1通算500勝を達成した。

5ゴールを決めた横浜の攻撃力を見せつけるような試合だった。とくに、ゴール前でワンタッチパスをつないで決めきった2点目、4点目、そしてダメ押しの5点目などは技術の粋を集めたものだ。

前半のアディショナルタイムに決めた2点目は時間帯的にも相手に大きなダメージを与えるものだった。左サイドのエウベルが、横浜のサイドバックらしく中盤の高い位置に入り込んでいた左サイドバックの永戸勝也に入れたボールがスイッチだった。永戸から西村拓真を経由して右サイドハーフの水沼宏太が入れた高速のクロスにレオ・セアラが合わせた。

後半開始早々に清水に追いつかれた横浜は、相手のミスを拾ったレオ・セアラが決めて再び突き放したが、さらにその3分後の52分にリードを2点に広げる追加点を決めた。サイドの右タッチライン近くで岩田智輝が時間を作って、そこから速いパスが水沼、西村とつながり、ペナルティーエリア内深くまで一気に進入した水沼が西村からのワンツーを受けて、ワンタッチで折り返したボールを再びレオ・セアラが決めたのだ。

せっかく追いついた直後に再び勝ち越しを許して動揺した清水の隙をついた得点だ。

そして、88分の5点目も、ワンタッチパスをつないだ素晴らしいゴールだった。

ゴール正面で仲川輝人がボールを持ち、FKからの攻撃の後攻め残っていたエドゥアルドにつなぎ、エドゥアルドが永戸に戻した瞬間、エドゥアルドと仲川がボックス内に走り、永戸からのパスを受けた仲川がワンタッチで折り返して、中央でフリーになっていた宮市亮が決めた。

特筆すべきは、パススピードの速さだ。

この日の国立競技場のコンディションは公式記録によれば、19時のキックオフ時で気温30.1度、湿度54%。90分間走り切ることは難しい高温多湿の中の試合だった。実際、横浜の運動量はそれほど多くはなく、「ボールは走るが、人はそれほど動かない」。そんな時間帯が長かった。

だが、横浜の選手たちは「ここぞ」という時に一気にスピードアップし、その全速でのプレーの中で精度の高いパスをつないだのだ。

スピードアップする瞬間を全員が共有できているところも素晴らしい。「前半終了間際」とか、「追いつかれた直後」といった勝負所を見極める目を選手たちが持っているからなのだろう。

そして、もう一つの強味が控えの層の厚さだ。

この日は、角田涼太朗が脳震盪の疑いで交代したため6人の交代を使った横浜。試合途中から登場してくる選手が仲川だったり、マルコス・ジュニオールだったり、宮市だったりするのだから、選手たちは後のことを心配せずに、思い切って走ることができる。

こうした強みを考えるなら、横浜は猛暑の中でもしっかりと戦えるのではないだろうか。

「3連覇」を狙っている川崎がまさかの得点力不足で悩んでいる現在、首位を守った横浜は点時点での優勝候補筆頭と言っていい。8月に行われるAFCチャンピオンズリーグのラウンド16から準決勝の戦いも含めて、大いに期待したい。

さて、この試合は清水エスパルスの創設30周年記念ということで東京・国立競技場で開催され、5万6131人と、今季最多観客を動員した。

そうした記念試合をホームスタジアムではなく、東京の国立で開催することの是非はともかくとして、雰囲気の中での戦いとなり、しかも3対5という点の取り合いで大いに盛り上がったことは事実だ。

Jリーグ開幕の前後、Jリーグ入りのために新たに結成された清水エスパルスは、当時のヤマザキナビスコカップで決勝に進出して何度も旧・国立競技場で戦っている。また、リーグ戦のホームゲームで国立を使用したこともある(当時監督を務めていたエメルソン・レオンは「なんで、ホームの試合を東京でやるんだ!」とよく怒っていたが……)。

そういう意味では、清水が国立で試合をするのは“30周年”に相応しかったのかもしれない。

ハーフタイムには場内アナウンスで、静岡行き新幹線の案内が行われていた。東京・千駄ヶ谷にある国立競技場での試合なら、19時開始の試合でもその日のうちに静岡まで帰れるというわけだ(JRの千駄ヶ谷駅でも、新幹線の案内をしていた)。

東京都心に存在する国立競技場の最大のメリットは、交通が至便なところだ。JRのほか、東京メトロや都営地下鉄などいくつもの駅を利用できるから、東京在住者にとってとてもアクセスが良いし、そして地方から観戦に訪れた人たちにとっても便利なのだ。

陸上競技用のトラックがあるため、球技専用スタジアムに比べて試合の見やすさという面では劣るのは当然だ。

だが、陸上競技場としては比較的観戦しやすいスタジアムである。そのことは、横浜の本拠地、日産スタジアムと比較すれば一目瞭然だろう。トラックからスタンド最前列までの距離が近いこと。そして、スタンドの傾斜が急角度なので俯瞰的に観戦できることがその理由だ。

球技専用スタジアムがいくつも建設された関西地区に比べて、残念ながら関東では今でも陸上兼用スタジアムが多い。それなら、陸上競技場としてはサッカーの試合も見やすい国立は十分に使用可能だろう。アクセスの良さや、新しいスタジアムらしく、トイレなどの設備も完備されているなど、メリットも大きい。

ただ、関係者の話を聞くと、使用料が高額であり、施設が巨大すぎるので警備員など運営にかかるコストも他の競技場よりも大きいなどの難点も多いのだという。

僕は、新国立競技場の建設には反対の立場だった。なぜ、旧・国立の改修ではいけなかったのか? なぜ、建設費が普通のスタジアムの数倍の約1500億円という巨額なものになったのか? なぜ、建設前に後利用のことを真剣に考えなかったのか? 今後も毎年数十億円という維持費がかかる競技場の存在については今でも疑問に思わざるを得ない。

だが、出来てしまったものならば、なんとか活用していくしかない。ほとんど利用されないまままランニングコストばかりがかかり続けるのはまさに無駄使いだ。同じ赤字であったとしても、十分に利用されながら赤字というのなら我慢んしようもあろうというものだ。

国立競技場を所有する日本スポーツ振興センター(JSC)は使用料の引き下げなど、このスタジアムを使いやすくする工夫をしていくべきだ。そもそも、こんな贅沢三昧であると同時に使いにくいスタジアムを造ってしまった責任はJSCにあるのだから……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ