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サッカー フットサル コラム 2022年6月3日

蒔かれ始めた“本気”の種。セレッソ大阪U-18・島岡健太監督の仕掛けと情熱 【高円宮杯プレミアリーグWEST セレッソ大阪U-18×サガン鳥栖U-18マッチレビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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その日。島岡健太監督は、初めてこのフレーズを使ったのだという。

「『“本気”って何や?』というところで、結局それって自分自身のものなので、誰かに見てもらおうという時点で自分のものじゃないし、『自分がどうなりたいか』『自分の望みがどこにあるか』ということなんです。そこの“本気”がプレーだけじゃなくて、日常の中にもどれぐらい溢れているかという部分で、『ちょっとオレは足りんような気がしている』という話をしました」。

なりたい自分のイメージを描き、それを綺麗に、美しく花開かせるための“本気”の種が今、セレッソ大阪U-18に蒔かれ始めている。

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それはサガン鳥栖U-18に勝利を収めた、試合後のインタビューだった。キャプテンの川合陽が、こう明かす。「さっきのミーティングで島岡監督に“本気”という話をされたんです。そこで“本気”とは何かを考えました。僕たちはバルセロナやパリ・サンジェルマンの映像を見ていて、もちろんそういう世界を目指しているつもりだったんですけど、自分の思っていた“本気”はちょっと違ったのかなと感じました」。

川合の言葉を島岡監督にぶつけると、笑いながらこんな答えが返ってきた。「いろいろな布石が今日までにいっぱいあって、毎回言っていたり、言っていることは変わらなくても、彼らの中にいつ入るのかは考えていたので、今日みたいに勝ったゲームのあとというこのタイミングがいいかなって。凄いタイミングの日に来てもらいましたね(笑)」。

確かに試合が終わってしばらくすると、全選手がグラウンドに座り、島岡監督が彼らの前で短くない時間を使って、何かを語り掛けている様子には気付いていた。世界を見据え、世界を基準に置いてはいるものの、まずフォーカスすべきは自分のベクトルが自分自身に向いているか否か。そこにブレが生じているように感じたからこそ、島岡監督はこの日、“本気”というキーワードのカードを切ったのではないか。

「結局彼らにも言うことは自分自身にも言うべきことで、『人のせい、物のせいにしない』ということに尽きると思います。『何かが変わったから、オレはこうなんや』と。『じゃあ変わってなかったら、どうなんや』と。『ずっと自分がないの?』という話やし、人ってそうなりがちですけど、そうじゃないということに気付くんだったら早く気付いた方がいいし、何かが変わったからと言ってしまうと、せっかく持っているものがもったいないと思うんです。結局全部自分の元に戻ってくるものやから」(島岡監督)。

2ゴールを挙げて、この日のチームの勝利に貢献した皿良立輝は、自分の技術不足を痛感しているという。「島岡さんと会った時に『ボールが全然止まっていない』と言われて、そこで衝撃を受けました。『これで止まってないんか』というのはあったんですけど、これができたらすぐに前を向けたり、次の行動が早くなると思ったんです」。

この日の自身2点目はまさに反復の賜物。足元に入ったボールをそのまま縦へスムーズに持ち出し、対角のゴールネットへシュートを突き刺した。「あのコースは練習しているので、落ち着いて決められたと思います」と浮かべた笑顔に、ベクトルを自分に向けている者の雰囲気が漂う。

3-1で勝利したチームの中で、最も悔しい想いを突き付けられたのは、センターバックの白濱聡二郎だろう。192センチの長身を生かした高い打点のヘディングで先制点を挙げた2年生は、2点をリードしている前半44分に交代を命じられ、ベンチへの帰還を余儀なくされた。

「去年はメンバー登録もされていなくて、全然試合にも出れていなかったのに、今年は開幕から使ってもらっているので、監督の期待は感じています。代えられたのは悔しかったですけど、それにはちゃんとした理由があると思うので、90分出られるようにもっと努力したいです」(白濱)。

島岡監督は改めて、“本気”をこう定義している。「練習もそうですけど、自主練の姿を見ても、アイツらの意識は変わってきています。ただ、その自主練がこっちに向けてやっているところもまだまだあって、『オマエ、それは自分のためにやってないやろ』と。『それは「僕、やってますよ」をこっちに向けてやっているだけやな。それは“本気”じゃないよ』と。ちょっとでもそういう気付きをしてもらえたらなという今日ではありましたね」。

試合後。4人の選手に取材をさせてもらった。素晴らしいアシストを決めた、チームのプレーメイカーでもある“3人目”の清水大翔との会話が終わってから、“4人目”の取材が始まるまでに、だいたい10分近い時間が空いた。どうしても話を聞きたかった“4人目”はなかなか取材エリアに現れない。なぜなら、たった1人で壁に向かってボールを蹴り続けていたからだ。

もうグラウンドにコーチ陣の姿はない。その壁との“会話”を見ていたのは、私と清水と育成部スタッフの3人だけ。そこには間違いなく、他人の目を意識している余裕などない、不甲斐ないパフォーマンスに厳しい評価を下された自分と向き合う、“本気”の発芽があったように思う。どうしても話を聞きたかった“4人目”、たった1人でボールと向き合っていた“4人目”が誰かは、あえて言うまでもないだろう。

「もっともっと個人に目を向けた時に、監督が代わろうが、コーチが代わろうが、グラウンドが変わろうが、自分さえちゃんとできていれば、やっぱり『オマエじゃなくても』じゃなくて、『オマエしかいない』になるじゃないですか。そういうプレーヤーにならなあかんし、これはサッカーに限った話ではないかもしれないですけどね。『誰でもいいか』ではなくて、やっぱりアイツらには選ばれていってほしいので、もっと自分自身に矢印を向けてほしいなと思っています」(島岡監督)。

セレッソ大阪U-18に蒔かれ始めている“本気”の種は、果たして満開の桜を咲かせることができるのだろうか。その未来は、彼らのこれから次第で、いくらでも華やかに咲き誇っていくはずだ。

文:土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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