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サッカー フットサル コラム 2022年4月5日

“ジャンケンから1年後”の躍動。中山竜之介と小林康人が携える逞しさと遊び心 【高円宮杯プレミアリーグEAST 市立船橋高校×青森山田高校】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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中山竜之介

揃ってベンチメンバーには選ばれながら、ラインの内側へと入ることのできなかった昨シーズンのプレミア開幕戦。それから1年が経ち、改めてその舞台に立った2人の3年生のパフォーマンスが、リスタートを切った常勝軍団へ白星をもたらしたことに、疑いの余地はない。

「チームとしてはとにかく勝ち点3を持ち帰ることを目標にしていたので、そこに関しては本当に良かったなと思っています」(中山竜之介)「自分のゴールでチームを勝たせるということは本当に嬉しいことですし、今日は守備もゼロに抑えることができたので、勝てて良かったです」(小林康人)。
中山竜之介と小林康人。『三冠を獲った次の代』という難しいチームの宿命を背負った2022年の青森山田高校は、彼らの躍動とともに勝利という形で幕を開けた。

気概は試合前のウォーミングアップから、はっきりと感じられた。本来のキャプテンを務める多久島良紀が負傷離脱中。プレシーズンからキャプテンマークを託されている中山は、大声でブラジル体操を先導していく。
「声は上手いとか下手とか関係なく誰でも出せますし、特に自分が今はチームのキャプテンとしてやっているので、そこで『人一倍やる』というのは自分の中の人生的なテーマでもありますし、『一番自分が努力する』というのは日頃から変わらないです。最後の1年なので、気持ちはより入っていますね」。

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昨年の終盤は右サイドバックとして高校選手権の日本一獲得に貢献したものの、もともとはボランチ。今シーズンは“本職”に戻る格好となったが、何しろそのポジションの前任は松木玖生と宇野禅斗だ。比較されるのも酷だろう。ただ、中山はもちろんそのことも認識しながら、しっかりと足元を見つめている。
「あの2人を一番近くで見られていたというのは凄く自分にとって大きかったですし、そのレベルに行けば全国優勝も見えてくるという分かりやすい基準があるので、そこにより近付けるようにと思えることは、去年の1年が大きかったですけど、先を見るのではなくて、目の前の1試合1試合を全力でやりたいです」。

この日の市立船橋戦も、中盤での攻防にはことごとく赤い腕章を巻いた6番が顔を出す。それでも、自分の出来には納得がいっていなかったようだ。「自分がもっともっとパフォーマンスを上げていかないと、周りもやっぱり付いてこないですし、チームとしての全体のモチベーションも上がらないので、運動量のところももっともっとトレーニングしていかないといけないなと改めて思いました」。繰り返す“もっともっと”に、飽くなき向上心が滲んだ。

小林康人

今シーズンのプレミア初ゴールをさらったのは、チーム屈指のムードメーカーだった。前半15分。左から奈良岡健心が投げ入れたロングスローはファーまで届くと、15番を背負ったセンターバックが、ヘディングでボールをゴールネットへ流し込む。

「ロングスローはポイントがいて、そこに逸らしたボールを自分が詰めるという役割で、1人1人が役割をまっとうすることが本当に大事だと思っていたので、それをしっかり果たすことができて良かったです」。貴重な先制点に、チームメイトもすぐさま笑顔で駆け寄ると、小林も満面の笑みを浮かべて祝福に応える。

「トレーニングでやってきたところなので、そこはきっちり入ってくれたことは良かったけど、点を獲った後もすぐに調子に乗っていたでしょ(笑)。一発で形勢逆転の大ピンチを招くのもアイツなので、そこだけはまたトレーニングしていかないと」とは黒田剛監督。この言葉からも、彼のチームにおける立ち位置が何となく見えてくる。

自らゴールも奪い、完封勝利も手にしたものの、まだ定位置を確保したわけではないことも、自分が一番よく分かっている。「多久島も帰ってきたら、いつ自分も入れ替わるのかわからないですし、チーム内でも競争だと常に思っているので、その中でもしっかり自分のプレーを出して、結果を出して、そこでチームを勝たせられれば一番いいですし、良いライバル関係がチームの中にあることで、自分自身成長できると思っています」。仲間と切磋琢磨できる環境は大歓迎。自身の成長をチームの成長に繋げようという意欲も頼もしい。

冒頭で触れたように、昨シーズンのプレミア開幕戦では、中山も小林もベンチには入っていたが、試合に出場することは叶わなかった。まだ2年生だった2人は様々な雑用をこなしていた中で、たまたまこちらへ歩いてくるタイミングでカメラを構えると、彼らが“ジャンケン”をしている様子がファインダーに飛び込んできた。

きっと何かの雑用を、どちらがするかの“勝負”だったのだろう。それはほんの一瞬の出来事だったが、青森山田のような常勝チームの選手でも、ふとした瞬間の中に遊び心を携えながら、自分の仕事をきっちりとこなしていく高校生らしさを垣間見たことで、妙に親近感を覚えたことを記憶している。

それから1年後。中山も小林もピッチの内側で、青森山田の選手として真剣勝負に挑む姿は、“ジャンケン”をしていた2人とは似ても似つかない逞しさを纏っていた。立場は人を変える。このチームで試合に出ることの意味を、このユニフォームに袖を通すことの意味を、彼らは十二分に理解している。

ピッチ内での逞しさと、ピッチ外での遊び心と。いかにも真面目な中山と、いかにもムードメーカーの小林と。サッカーのチームには、やはりいろいろな側面があっていい。それは青森山田のような勝利だけを義務付けられた強豪であっても、もちろん例外ではない。

 

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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