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だが、川崎の場合、ロングボールを使う前に短いパスをつないで形を作ることによって、相手選手を片方のサイドに引き寄せることによってフリーの選手を作るのだ。
一方、横浜は試合前の「かごの鳥」の練習の際に、より大きなスペースを使っていた。その大きなスペースの中で選手が足を止めないで動きながらパスを回すのだ(先発選手がシュート練習に入ると、控え組はピッチ全体の4分の1くらいの大きなスペースでパス回しをしていた)。
「かごの鳥」が終わってシュート練習に入ってからも、やはり両チームの狙いははっきりしていた。
川崎はゴール前でパスをつないだ後、ペナルティーエリアに入った内側からコースを狙ったシュートを撃つ練習。そして、横浜はいつものようにサイドから中央に速いクロスを入れて、そこの1人、2人の選手が飛び込むパターンの練習から入った……。そう、仲川が決めたチーム2点目の得点そのままのパターンである。
そして、その後、横浜はペナルティーエリアの外の少し距離のあるところから、約20〜25メートルのシュート練習を繰り返していた。
実際、64分のエウベルの弾丸シュートも、そして78分の仲川の巻いたシュートもペナルティーエリアより少し外からのトライだった。
つまり、後半の横浜の4ゴールはいずれも試合前からチームの狙いだった形での得点だったわけである。
前半の横浜の攻撃はパスを回すことにこだわり過ぎていた。しかし、パスを回して攻めてくる相手に対する守備は川崎はすこぶるうまい。自分たちがパス回しの得意としている分、相手がパスを回してくれば危険なポイントを見逃すことがないからだ。
だから、川崎は昨年の前半のような圧倒的な強さを見せている時でもそうだったが、失点するのは決まってスピード攻撃によるものだ。縦パス1本で快速FWを走らせるとか、スピードのあるパスを左右に振ってくる……。そんな攻撃に対して脆さがあるのだ。
富士フイルムスーパーカップで浦和が奪った2得点もカウンター気味のものだったし、FC東京戦でも右サイドでレアンドロや松木玖生が飛び出してくる攻撃に手を焼いていた。
川崎の弱点は明らかになった。今後、対戦する各チームもやはりカウンターや速攻を狙ってくることだろう。川崎の鬼木達監督が、そのあたりの弱点についてどのように修正してくるかも含めて、今シーズン前半のJ1リーグの見どころのひとつとなるのではないだろうか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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