人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2021年12月17日

青森山田に“代役”は存在しない。みんなで勝ち獲ったプレミアEASTの戴冠 【高円宮杯プレミアリーグEAST 横浜FCユース×青森山田高校】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
  • Line

優勝を決めた直後の集合写真。今シーズンはなかなか試合出場の機会を得られなかった本田真斗が指名され、中央で「イエーイ」と両手を上げても、周囲はノーリアクション。それを見た黒田剛監督が誰よりも大きな声で笑うと、選手たちにも最高の笑顔が弾ける。左サイドバックとして終盤戦のチームを支えている小野暉が持ち前の明るさで騒げば、負傷離脱中ながらマネージャーとしてこの日のベンチに入っていた大戸太陽も、それにつられて楽しげに笑っている。

「ケガ人が多く出て、そこをサポートしてくれた他のメンバーたちも、本当に今日は凄く良い活躍をしてくれたし、チームが改めて一体となって、良い力を発揮したなと思います」。指揮官も満足そうにこう言葉を紡ぐ。みんなで勝ち獲った堂々のプレミアEAST制覇。青森山田の選手たちは、より一層高まりつつある一体感を確かに感じていた。

チームに衝撃が走ったのは高校選手権県予選決勝の3日前。不動の右サイドバックだった大戸が、膝の大ケガで戦線離脱を余儀なくされる。もちろん選手たちが受けたショックは小さくなかったが、気持ちを切り替えてファイナルの舞台に向かう。先制されたものの、きっちり逆転し、追加点となるチーム3点目を決めた松木玖生が、報道陣のカメラに向けて自らのユニフォームをめくると、そこには“2番”のユニフォームが仕込まれていた。

「試合の前の日に玖生から『ユニフォーム貸して』と言われました。アイツも点を決められて良かったですよね。決めてなかったら、ただ着ていただけになっていたので(笑)」(大戸)「太陽も落ち込むことなく自分たちのためにいろいろ準備してくれたり、良い声掛けをしてくれたので、自分だけではなくて、他の選手もかなり痛いと思っているところではありますけど、太陽のためにも今後の試合も全部勝っていきたいと思います」(松木)。太陽のために。チームに勝つべき理由が、また1つ加わった。

不運は重なる。今度はロングスローワーとして重要なピースを担ってきた左サイドバックの多久島良紀も、膝の負傷で以降の試合に出ることが難しくなってしまう。シーズン終盤に来て、相次ぐサイドバックの離脱。両選手を欠いたチームは、プレミアEASTの首位攻防戦、清水エスパルスユース戦にホームで0-2と敗戦を喫する。

この一戦を経て奮起したのが、小野と中山竜之介だ。それぞれ左右のサイドバックとして起用され続けた2人は、懸命にトレーニングから自らに託されたタスクと向き合っていく。特に3年生の小野にとっては、ようやく巡ってきたチャンス。「本来であればサイドハーフで出たかった気持ちはありますけど、3年目でやっと来た試合に出るチャンスなので、そこに対する想いはあります」と言いながら、「中山も自分も別に(離脱している)あの2人と同じことをするわけではないので、自分たちの色を出して、チームにどう貢献できるかを考えてプレーしています」と言い切るあたりも頼もしい。

J SPORTS 放送情報

柏レイソルU-18戦。FC東京U-18戦。そして、この日の横浜FCユース戦。試合を重ねるにつれ、彼らはしっかりと“青森山田のサイドバック”になっていった。優勝を決めた試合後、黒田監督は「小野暉もそうだし、中山もそうだし、凄く成長する機会にもなったので、2人とも良いパフォーマンスが出てきたと思うし、今は凄く良い調子かなと思います」と短期間での成長に言及する。

ディフェンスリーダーの三輪椋平も「監督から『強いチームは1枚2枚代わったぐらいで負けない』という話をされて、急ピッチでしたけど、暉も中山もだいぶ良くなってきているかなと感じます」と手応えを口にすれば、小野も「サイドハーフとサイドバックは全然違うので、それが少しずつわかってきましたし、あとは選手権に向けて合わせていくだけですね」と笑顔。彼らの“代役”にとどまらない活躍で、チームはさらに一段階前進することに成功した。

柏レイソルU-18戦では、久々のスタメンとなった渡邉星来がハットトリックの大活躍。代わってベンチに回った小原由敬も、これを見て燃えないはずがない。FC東京U-18戦では、ここまでベンチを温めてきたGKの鈴木尋が、中学時代を過ごした“古巣相手”にプレミアデビュー。もちろん同じGKとして切磋琢磨してきた沼田晃季も、刺激を受けていることだろう。

松木の言葉が印象深い。「自分たちはあまりそれぞれが自我を出さないような、チーム力でやっているチームなので、『自分が、自分が』というふうにならないですし、全員でゴールを決められるような、そういうところもしっかり継続しながら、最後までチームをまとめ上げられるキャプテンになりたいと思います」。

青森という土地で短くない時間を共に過ごしてきた高校生たちは、これまでも数々の障壁が立ちはだかるたびに、みんなで醸し出す一体感を結集させて、力強く乗り越えてきた。その先で辿り着いたのが、インターハイの日本一に続くプレミアEAST制覇の栄冠。改めてこのタイトルを勝ち獲った青森山田の選手とスタッフに、大きな拍手を送りたい。

文 土屋雅史

J SPORTS オンデマンド番組情報

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ