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日本代表の9月シリーズが終わった。
オマーンとの初戦に敗れた日本は、2戦目の中国戦ではコンディションも戻り、そこそこの内容の試合ができた。中国が「意味不明」なほど守備的に守ってきたこともあってなかなか1点が取れずに苦しんだが、内容的には危なげない勝利ではあった。
10月は強敵サウジアラビア、オーストラリアとの連戦になるが、次回は初戦がサウジアラビア戦でアウェーとなる。会場に予定されているジッダまではロンドンからでも飛行時間は6時間。中部欧州時間(夏時間)との時差はわずか1時間だ。つまり、日本まで帰るよりずっと楽な移動になるのだ。そして、サウジアラビア戦後に日本に向かう。9月の日本→カタールという移動に比べれば、海外組にとっては移動の負担は小さいはずである。
しかも、10月になればヨーロッパのクラブに所属する選手たちも試合を重ねており、9月よりはずっと良いコンディションでゲームに入ることができる。
さて、代表ウィークが明けたかと思ったら、来週のミッドウィーク(9月14日、15日)にはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16という別の厳しい戦いが待っている。
今シーズンのACLは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で変則日程となり、グループステージは集中開催となり、決勝トーナメントからはホーム&アウェーではなく、すべて一発勝負の戦いとなる。
グループステージではオーストラリアのクラブが棄権し、中国が二軍を送り込んできたため、どのグループも日本と韓国の一騎討ちとなった。そして、川崎フロンターレ、名古屋グランパス、セレッソ大阪の3チームが各グループ首位で通過したものの、不調にあえいでいるガンバ大阪はラウンド16進出を逃してしまい、東地区でラウンド16に進んだのは韓国が4クラブ、日本が3クラブ、そしてタイが1クラブという結果となった。
グループステージ突破に成功した日本の3つのクラブは、いずれもラウンド16では韓国チームと対戦する。
9月14日には名古屋がホームで大邱FC、川崎がアウェーで蔚山現代と対戦。翌15日にはC大阪がホームに浦項スティーラーズとそれぞれ対戦する日程になっている(韓国の“常勝”チーム、全北現団モーターズはタイのパトゥム・ユナイテッドとホームで対戦)。日本の3クラブにはぜひ宿敵韓国を破って、ベスト8進出を果たしてもらいたい。
名古屋は、今シーズン前半は堅い守備を武器に首位を走る川崎を猛追していたが、川崎との直接対決で2連敗を喫してから順位を落としていった。そして、オリンピックによる中断明けで、横浜FCと横浜F・マリノスを相手に、ともに0対2のスコアで連敗を喫してしまった。とくに、最下位にあえいでいた横浜FCが中断期間中にしっかりとした守備組織を構築し、名古屋を完封したのは驚きの結果だった。
もっとも、その後は名古屋も本来のリズムを取り戻したようで、8月15日以降ルヴァンカップも含めて7試合で6勝1分。その間、失点も1ということで「ウノゼロ」の方程式を取り戻してきているようだ。
一方、C大阪は不調にあえいでいた。
昨シーズン、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の組織的なサッカーで3位に入ってACL出場権を獲得したものの、クラブ首脳陣が監督交代に踏み切り、レヴィー・クルピ監督を招聘した。しかし、組織性を失ったC大阪は順位を落とし、ついに8月下旬にはクルピ監督を更迭。アシスタントコーチを務めていた小菊昭雄氏が監督に昇格した。もともとロティーナ監督退任を巡ってはサポーターから批判の声が大きかっただけに、クラブは大きく揺れている状態だ。
ただ、そんな中でも8月下旬以降はルヴァンカップの2試合を含むガンバ大阪とのダービー3連戦を勝ち越し、3戦目(ルヴァンカップのセカンドレグ)では4対0と快勝。さらに北海道コンサドーレ札幌とのアウェーも3対0と連勝して、立て直しには成功。順位も11位まで上げてきた。
浦項戦は、小菊監督体制での立て直しが本物だったのかを見る絶好の機会となるだろう。
ちなみに、名古屋と対戦する大邱FCはKリーグでは27試合を消化して勝点38の5位、C大阪と対戦する浦項スティーラーズは同じく27試合消化で勝点39の3位に付けている。
最大の注目は蔚山対川崎の対戦だ。JリーグとKリーグで首位に立っているチーム同士の、まさに日韓のトップ対決だからだ。
Kリーグは、27試合終了時点で首位の蔚山が勝点54(15勝9分3敗)、2位の全北が勝点50と優勝争いは2チームに絞られている。J1リーグも同じく27試合消化時点で、首位の川崎が2位の横浜FMに4ポイント差を付けており、Kリーグとまったく同じ構図となっている。ただし、川崎は27試合終了で勝点66(20勝6分1敗)と蔚山よりはるかに成績は上。
ただし、8月以降、川崎は思ったように勝点を伸ばせていないのが現状だ。
8月14日の第24節柏レイソル戦で相手の激しい守備にてこずってスコアレスドローに終わると、続く大分トリニータ戦でも引き分け。そして、アビスパ福岡に今シーズン初の黒星を喫した川崎。先日のルヴァンカップ準々決勝では浦和レッズと2引き分けに終わり、セカンドレグでは終了間際に2点を奪われて追い付かれ、アウェーゴールで敗退というショッキングな結末となった。
夏の移籍期間に三笘薫と田中碧という中心選手が海外移籍でチームを離れ、さらに天皇杯では、守備の要であり、同時に攻撃の組み立てもできる谷口彰悟が負傷。浦和とのルヴァンカップ、ファーストレグではCBを務めていたジェジエウ、車屋紳太郎が相次いで負傷して交代を強いられたのだ。
いかに層が厚く、また若手も抬頭しているはいえ、これだけ主力がチームを離脱してしまっては、パフォーマンスを落とすのは当然のことだ。強い時の川崎なら、韓国のトップ相手でも安心して見ていられただろうが、果たして蔚山戦までに川崎はどこまで陣容を立て直せるのか……。
ただし、浦和とのセカンドレグでは復活の兆しは見てとれた。
相手のGKが若い鈴木彩艶だったこともあってか、立ち上がりから川崎の前線の選手たちはGKに対してプレスをかけた。その分、相手のCB岩波拓也やアレクサンダー・ショルツへのアプローチが少なくなり、彼らからのロングボールが危険と見るや、後半はシステム変更してレアンドロ・ダミアン、小林悠のツートップが相手DFに対してプレスをかけた。
さらに、攻撃時のパススピードもそれまでより上がり、また右サイドハーフの期待の若手、宮城天も立ち位置を工夫してサイドバックの登里享平とのポジションチェンジも円滑になり、きっかけをつかみ始めている。そして、川崎の1点目はゴール前でワンタッチのパスが3本つながった「川崎らしい」だった。
当初、9月10日に予定されていたヴィッセル神戸戦が延期になったため、川崎には浦和戦から中8日という準備期間もできた。復活に期待を込めたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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