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東京オリンピックのサッカーは、3位決定戦で日本代表がメキシコに完敗して「メダル獲得」に失敗。ブラジルとスペインの“頂上決戦”となった決勝は決勝戦らしい両チーム慎重なゲームとなったが、最後はブラジルが迫力ある攻めでスペインを圧倒して2連覇を達成した。
3位決定戦で勝利した時にメキシコの名GK、ギジェルモ・オチョアが涙を流した場面や、決勝戦での大ベテラン、ダニ・アウヴェスの獅子奮迅の活躍などを見ると、彼らがいかに真剣にこの大会を捉えていたのかが分かる。
南米のチーム(ブラジルやアルゼンチン)やメキシコは、いつもオリンピックのサッカーでも真剣に優勝を目指して戦いっていた(メキシコは2012年ロンドン大会で優勝。ブラジルは前回のリオデジャネイロ大会の優勝チームだ)。
だが、ヨーロッパ勢はこれまえあまりオリンピックには力を入れてこなかった。
彼らにとっては、オリンピック(つまり23歳以下の大会)はあくまでも育成の一環であり、同時に「23歳」という年齢になれば、ヨーロッパのサッカーの常識からすれば、もはや育成の年代でもないのだ。つまり、オリンピックは中途半端な大会だった。
今回も、フランスは各クラブがオリンピック代表への選手の供出を拒否。この年代の最強メンバーとはほど遠い顔ぶれとなったった。アンドレピエール・ジニャクとフロリアン・トバンをオーバーエイジで招集できたのも、彼らがフランスのクラブではなく、メキシコのクラブ(ティグレス)所属だったから、だった。
東京オリンピックのサッカーでは登録選手の人数が大会直前になって18人から22人に拡大されたが、ドイツ代表は結局、18人のままで大会に参加した。酷暑の中の大会では、これはやはりハンディになったはずだ。つまり、フランスと同じように、ドイツも、前回大会では銀メダルという結果を残していたにも関わらず、やはりオリンピックのサッカーに対してはそれほど力を入れていなかったのだ。
ちなみに、酷暑の中で中2日の連戦が続く大会だっただけに、各国の監督にとっても22人が使えるようになったのはありがたいことだったろう。たとえば、日本代表では上田綺世や三笘薫が大会直前に故障して、コンディションが戻り切らない中で大会に突入した。そんな中で、バックアップメンバーとして招集されていた林大地が使えたので、森保一監督はかなり助かったはずだ。背番号「19」を付けた林は、結局全6試合で先発起用された。
しかし、どうせなら、もう少し早い時期に「メンバー枠拡大」の決定がされてさえいれば、もう少し違うメンバーが招集できていたかもしれない。決定が急すぎた。
今大会はそんな急な変更があまりにも多すぎた。
サッカー女子の決勝戦の試合開始時間とスタジアムが前日になって変更され、それに伴って日本対メキシコの3位決定戦も2時間前倒しとなった。女子の決勝は当初は11時から国立競技場で行われる予定になっていたのだが、猛暑を避けるため21時に変更されたのだ。
そういえば、札幌市内のコースで行われた女子マラソンのスタート時刻も前夜になって急に変更となったらしい。何もかもが、直前になっての変更で振り回された。8月の日本が猛暑に見舞われることなど、最初から分かっていたことなのに……。
アメリカのテレビ局の都合で夏季オリンピックは7月から8月の北半球の真夏、スポーツにはあまり向かない時期に開催せざるをえないらしい。この時期には、野球のメジャーリーグ以外に人気のプロスポーツが行われていないからなのだが、そもそも、それはつまり「スポーツをするには不向きな季節」だからなのだ。
東京ほどではないが、2024年に開かれる予定のパリ大会も、2028年のロサンゼルスも、どちらも真夏の大会となる……。
話がだいぶ逸れてしまったが、フランスやドイツは、これまでと同じようにオリンピックのサッカーについてはあまり重視していなくて、最強メンバーを送り込んでこなかったという話題だった。
ところが、スペインは違った。
スペインは、なんとGKのウナイ・シモンやMFのペドリ、DFのパウ・トーレスなど直前まで開催されていた欧州選手権(EURO)に出場していた選手6人をオリンピック代表にしたのだ。
EUROというハイレベルの大会で6試合を戦ったことで、かなりの疲労が残っているはずだ。そういった選手たちを真夏の暑さの中での連戦となるオリンピックでもプレーさせたとしたら(結局、スペインはオリンピックでも6試合を戦い、そのうち3試合は延長にもつれ込んだ)、帰国した後かなり長期の休養が必要になるはずだ。
彼らが所属するクラブにとっては、開幕後数試合は代表クラスの選手が使えなくなてしまうし、選手たちも下手をしたら各クラブでの出場機会を失ってしまう危険すらある。
これは、スペイン以外の国の選手にも言えることで、日本代表でオリンピックに参加した海外組の選手たちはこれからクラブに戻ってから、出場機会を求めて苦労することになるだろう。
そう、東京オリンピックが終了するとすぐに、ヨーロッパ各国のリーグ戦が開幕する(ベルギーのジュピラー・リーグはオリンピック期間中にすでに開幕していた)。オリンピックに出場した選手たちの、今後にも注目してみたい。
オリンピック関係以外にも、選手の去就には注目しなければならない。つまり、8月いっぱいは、いわゆる「移籍市場」が開いているから、開幕後しばらくは選手の移籍というビッグニュースが飛び交うことになるだろう。
そんな中でも、とびきりのビッグニュースが「リオネル・メッシのバルセロナ退団」だった。
少年時代から所属してバルセロナとの関係は、ここ2、3年かなり悪化していたのだが、ジョアン・ラポルタ元会長がクラブの会長に復帰したことで両者の関係が改善され、契約も更新されると言われていたが、クラブの財政悪化やリーグの規約(サラリーキャップ制)の問題があって、バルセロナでのプレーが不可能になったらしい。
そんなビジネス面のことはともかく、メッシという選手が新しいクラブでどのようにプレーして、どれだけの結果(ゴール)を出せるのか。それが、今シーズン序盤戦の最大の注目点だろう。
なにしろ、これまでメッシがプレーしたことがあるチームはバルセロナとアルゼンチン代表だけなのだ。そして、ようやく今夏のコパ・アメリカでは優勝を飾ったものの、代表でのメッシはバルサでのような活躍はできていない。
メッシという選手は、バルセロナでしか輝かないのか、それともどんな環境でも、どんなスタイルのサッカーでも機能するのか……。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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