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J1リーグ首位の川崎フロンターレと2位の名古屋グランパスとの「首位決戦」は、川崎の2連勝に終わり、両者の勝点差は9ポイントまで開いた。川崎戦の前まで12試合でわずか3失点と堅守を誇っていた名古屋が2試合で大量7ゴールを奪われたのはショッキングな結果であり、川崎の強さばかりが印象に残る結果となった。
5月4日に等々力で行われた第12節の試合では、最後に名古屋も意地を見せはした。スコアが3対0となってから、攻撃的な選手を投入して攻めに出ると、その後は川崎のパスを分断して攻撃を許さず、攻撃面でもマテウスの獅子奮迅の活躍もあって1点差まで詰め寄ったのだ。
だが、「時すでに遅し」だった。
4月29日の“ファーストレグ”では攻守にわたって消極的な入り方をしたところを川崎に付け込まれて前半23分までに3失点した名古屋。“セカンドレグ”では、4−3−3と川崎と同じシステムでスタートして手ボールに激しくプレッシャーをかけ、アグレッシブさは取り戻した。
だが、川崎は相手の出方を見て戦い方を変えることができるチームだった。
“ファーストレグ”では、相手が引いているのを見て、早いタイミングでゴール前に強くて速いボールを送り込んで圧倒したが、“セカンドレグ”では相手がボールに食らいついてくるのを見ると、サイドのスペースでボールを回して相手をおびき出そうとしたのだ。そして、相手がプレッシャーをかけてくるのを利用してファウルをもらってFKを獲得。さらに、CKの数も増やしてセットプレーで活路を見出そうとした。
そして、30分には三笘薫のドリブルでCKを得て、田中碧のキックをジェジエウが合わせて、狙い通りにセットプレーから先制ゴールを決めた(得点は31分)。
後半の立ち上がりにも再び名古屋が前からプレッシャーをかけてきたが、すかさずカウンター気味の攻撃で三笘の巧妙なドリブルからのクロスにサイドバックの山根視来が飛び込んで追加点。さらに、プレッシャーをかけて相手のオウンゴールを誘って試合の行方を決めた。
終盤での名古屋の反撃を見ても分かるように、名古屋にも十分な実力はある。だが、川崎は試合運びのうまさの前に、名古屋はその力を発揮させてもらえなかったのだ。
どんな戦い方でもできる川崎フロンターレ。高い技術に裏打ちされた引き出し(選択肢)の豊富さは、まさに「常勝チーム」ならではのものだ。
さて、この2連戦はきわめて変則的なスケジュールだった。
僕は、この2試合を“ファーストレグ”、“セカンドレグ”と書いてきたが、実際にはこの2試合はただのリーグ戦の中の2試合に過ぎない(名古屋ホームが第22節の前倒し分、そして川崎ホームの試合は第12節)。
リーグ戦の合間にカップ戦の試合が繰り込まれて連戦となることはどこの国でもよくあることだが、リーグ戦の中での2連戦というのは珍しいことだ(チャンピオンズリーグではグループステージの第3節と第4節で連戦となるが)。しかも、“ファーストレグ”の前には川崎には中10日、名古屋には中6日の準備期間が与えられ、さらに4月29日にも5月4日にも、川崎と名古屋の決戦以外の試合は組まれていなかった。
まさに、「決勝戦」的なスケジュールとなってしまったのだ。昔、Jリーグが2ステージ制だったころの「チャンピオンシップ」を思い出した。
この決戦を終えて、ACLに出場する川崎と名古屋は14試合を消化したことになったが、他のチームはだいたい12試合程度が終了したところ。20チームで争われている今シーズンは第38節まであるので、リーグ戦はまだ3分の1程度が終了したに過ぎない。
そんな時期に首位決戦が終わってしまったのはリーグ戦としてははなはだ変則的というか、山場をこんな時期に終わらせてしまうのは実にもったいない限りだ。
ただ、「2連戦」という形式はとても面白かった。
“ファーストレグ”では、名古屋が消極的な入り方をしてしまったのに付け込んで川崎が強いボールを使ってインテンシティの高い戦い方で圧倒。その反省を踏まえて“セカンドレグ”では名古屋もアグレッシブに戦ったが、それを見た川崎はその名古屋のプレッシャーをかわしながらセットプレーを使って勝負……。そうした、両チームの駆け引きの面白さは連戦だったからこそのものだった。
プロ野球では同一カードの3連戦が組まれる(これが「第〇節」という言葉の本来の意味)。サッカーのリーグ戦では連戦はなく、年に2回、たいていは何か月も間を開けての対戦となるのだが、今回の川崎と名古屋の連戦を見て、「サッカーも同一カード2連戦を組んでホーム&アウェーで年に4回対戦する方式を採用しても面白いかもしれない」と思った。
一部で言われているように、将来Jリーグがチーム数を減らして「プレミア化」するときには検討に値するのではないだろうか。
いずれにしても、この首位対決が川崎の連勝で終わったことによって川崎の勝点は38に達し、勝点29の2位名古屋との差は9ポイントにまで開いてしまった。しかも、すでに直接対決が終わってしまったため、名古屋としては一気に差を縮める機会がなくなってしまったのだ。
どうやら、「川崎独走」の様相を呈してきたようだ。
ただ、不気味なのは横浜F・マリノスの存在だ。順位は4位で川崎とは14ポイント差があるのだが、実はこれは見かけ上の差にすぎない。横浜FMは川崎と比べて消化試合数が3試合も少ないのだ。もし、この3試合をすべて勝ったとすれば、横浜FMの勝点は5ポイント差の34にまで伸びる。つまり、横浜FMこそが実質的な2位なのだと考えることもできる。
その横浜FMは2月の開幕戦で川崎に完敗したものの、その後は10戦負けなし。最近は攻撃の爆発力が増しており、4月24日のJ1リーグ戦、横浜FCとのダービーマッチで5対0と大勝すると、同28日のルヴァンカップではベガルタ仙台を5対2で破り、さらに5月1日にはFC東京を3対0で一蹴している。川崎と対戦した時にはマルコス・ジュニオールとエウベルが欠場していたが、今は2人のブラジル人アタッカーが好調で、さらに前田大然、オナイウ阿道がともに8ゴールずつを決めて、この2人が「点を取るための嗅覚」を身に着け始めている。
川崎とのリターンマッチは12月の第38節、つまり最終節に組まれているのでそれまでに川崎の連覇が決まってしまう可能性も大きいが、川崎はこれからACLが始まれば過密日程に苦しむことが予想される。今シーズンは幸か不幸かACLの負担がない横浜FMが勝ち続ければ、まだまだ逆転優勝のチャンスは残されている。
J1リーグは(当然のことながら)まだ終わっていないのである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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