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サッカー フットサル コラム 2021年4月28日

勝利と、育成と。指導者の命題に向き合った大宮アルディージャU18・丹野友輔監督の1か月 【高円宮杯プレミアリーグEAST 大宮アルディージャU18×FC東京U-18レビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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勝利の瞬間に右手でガッツポーズを小さく作る、大宮アルディージャU18・丹野友輔監督

勝利の瞬間に右手でガッツポーズを小さく作る、大宮アルディージャU18・丹野友輔監督

「苦しかったですね」。大宮アルディージャU18が、今シーズンのプレミアリーグ初勝利を挙げた試合直後。丹野友輔監督から発せられた言葉は、開幕から3連敗を強いられた結果という意味での“苦しさ”だけを表現している訳ではない。勝利と、育成と。この2つを追い求めることを義務付けられた、指導者にとっては永遠に続く命題を、指揮官はこの1か月で痛感していたのだ。

開幕戦は開始15分で流通経済大柏高校に飲み込まれた。いきなりの3失点。「自分たちもある程度自信を持って臨んでいた部分もあったと思うので、『アレっ?』て感じになっちゃって」(丹野監督)。試合はホームで0-4の完敗。2年ぶりのプレミアリーグは、厳しい現実を突き付けられる格好でスタートする。

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第2節は清水エスパルスユース相手に、終盤まで0-0と持ち堪えていたものの、88分にPKを沈められての敗戦。目前まで迫っていた勝ち点獲得は、その手からスルリと逃げていく。丹野監督が「『でも、チャレンジして、自分たちのやりたいことは表現できたよね』って。『次は勝ちに繋げようよ。そのためにはスコアを奪わないとね』って話になったんです」と明かした第3節は、柏レイソルU-18相手に2点を奪ったものの、3点を奪われて競り負ける形での3連敗。リーグ10チームで勝ち点を奪えていないのは、気付けば大宮U18だけになっていた。

「やっぱり勝てていないということで、自分たちもどうやったら勝てるのかよくわからなくて…」と明かすのはディフェンスリーダーの大井勇人。次の試合に向けて、彼らが立てた目標は『クリーンシートで終わること』。ある意味で吹っ切れたチームは、まず無失点という共通認識を携えて、第4節のFC東京U-18戦を迎える。

「凄くみんなハードワークしてくれて、チームで守備がしっかりできたと思います」とキャプテンの高橋愛翔が話したように、試合開始からハードワークが際立つ。やり合う流れは想定内。前半は双方のシュートが1本ずつという展開にも、焦れずにゲームを進めていく。

後半2分。スコアが動く。阿部来誠のFKを、大井が高い打点のヘディングで叩くと、ボールはゴールネットへ吸い込まれる。「自分たちの攻めはセットプレーが武器なのに、ここ3試合はそれが使えていなかったので、今回は自分が決めてやろうという気持ちでいました」という184センチのセンターバックが先制点を挙げてみせる。

この1点がオレンジ軍団の導火線に火を点けた。山崎倫が、梅澤大輝が、阿部が、次々と惜しいフィニッシュで相手ゴールに襲い掛かる。守備陣も安定したパフォーマンスを維持し、危ない場面はほとんどなし。「『これだけ元気になるんだな』って。ちょっと縮こまっていたというか、勝てなくて自信もなくて、という所から、今日は『行くぞ』となった瞬間にガラッと変わったと。得点を奪った後からは躍動感が凄く出たのかなという印象はありますね」と指揮官も認める出来で、目標のクリーンシートも達成。ようやく4戦目にして初勝利を手に入れた。

無得点での大敗。無得点での惜敗。得点は獲ったものの惜敗。そして、クリーンシートでのウノゼロ勝利。1つずつ段階を踏んで、白星を手繰り寄せた大宮U18。「試合が終わった後のみんなの笑顔が増えました」(大井)と歓喜に沸く選手たちの傍らで、丹野監督が口にした言葉が印象的だった。

「もちろん選手の成長が一番大事なんです。ただ、成長するには勝利というものも大事になってきて、この育成年代では『育成すればいい』とか『勝てばいい』とか、どちらかだけというのはなくて、この両方をバランスを取りながらやっていく作業というのは、一生続いていくものだと思うんですけど、そのバランスを見ながら育成していかないといけないですし、やっぱり負けているチームに良い選手は出てこないと思いますし、勝ちながら成長させていくという所を目標にやっていくのが一番だと思うので、そういう意味では今日の彼らは凄く頑張りましたし、これでまた1つ成長できるのかなと思います」。

Jリーグのユースは育成重視。高体連のチームは結果重視。そんな構図はとっくの昔に終わっているか、そもそも存在していない。丹野監督が話してくれた『勝ちながら成長させていく』という命題に、指導者は誰もが向き合っている。クラブOBでもあり、今年でアカデミーでの指導も17年目に入る“ベテラン”(まだ37歳ではあるが!)でも、この問いを追求し続けている所に、育成年代の、ひいてはサッカーの難しさと面白さを感じずにはいられない。

文 土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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