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日本代表の試合を観戦するのは、昨年1月のAFC U-23選手権(タイ・バンコク)以来。フル代表の試合となると、2019年11月のベネズエラ戦ということになる。
やはり、日本代表の試合は興奮するものらしく、寝不足が続いていたというのに、深夜に帰宅してもしばらくは寝付けなかった。
それも、相手が韓国であり、日本が3ゴールで快勝したのだから、無理もない。若い読者には「日韓戦」の意味がよく理解できないかもしれないが、僕がサッカーを見始めたころは韓国には絶対に勝てない時代だった。1959年のローマ五輪予選で勝利してから、1974年の日韓定期戦までまる15年も勝てなかった。ワールドカップ予選や五輪予選で韓国に勝つのはなんと1993年のアメリカ・ワールドカップ予選(カタール・ドーハ)を待たなければならなかったのだ。
ちなみに、この予選ではハンス・オフト監督の信頼が厚かった森保一は中盤のバランサーとしてレギュラーだったが、韓国戦には出場していない。
「韓国に勝つ」ということが、僕の世代のファンにとってどれほど重要な意味を持つのか、多少はお分かりいただけただろうか?
しかも、3対0というスコアで、内容的にも完勝だった。
日本の攻撃が絶賛されているようだ。韓国に対して3ゴールを奪ったのだから、当然だろう。しっかりビルドアップして攻撃を作り、2列目、3列目の選手が飛び出していく日本の攻撃は実に印象的だった。先制ゴールを決めたのが、DFの山根視来だったことがそれを象徴している。
しっかりパスをつないで組み立てるかと思えば、ロングカウンターで相手を切り裂いたり、前線からのプレッシングでボールを奪って仕掛けるショートカウンター。多彩な攻撃は、まるでJリーグで川崎フロンターレの試合を見ているかのようだった。
だが、攻撃陣が万全だったとは思えない。本来なら得点を期待したかった大迫勇也や南野拓実が不発に終わったのも事実なのだ。
チャンスがなかったわけではない。内容的には4点目、5点目が決まっていてもおかしくなかった(ドイツ代表だったら、7ゴール決めていたに違いない)。
たとえば、55分、中盤でよく走ってボールを確保した南野からのパスを受けた大迫はペナルティーエリアのすぐ外でボールを受けてターンして前を向いた。だが、そこで南野にパスを戻してしまったのだ。
好調時の大迫であれば、間違いなく自分で狙っていたはずだ。それが、ストライカーというものだ。
70分には右サイドでの攻撃からこぼれてきたボールが南野の足元に来た。だが、ボックス内からのシュートは枠をとらえられなかった。たしかに難しい体勢からのシュートだったが、南野の技術力をもってすれば決めていてもおかしくない場面だった。
こうして日本が、なかなか“3点目”を決められないでいると、その後、韓国にもセットプレーなどからチャンスが生まれる時間帯が訪れた。
もし、相手が本当に強い相手だったら(あるいは、ソン・フンミンがいたら)、同点にされていたかもしれない。
「2点リードしていても、相手が本当に強かったら逆転されることもある」ということは3年前の夏に思い知ったことだ。だからこそ、早めに3点目を決めて突き放しておきたかったのだ。
だから、攻撃陣に関しては、僕は諸手を挙げて賞賛するわけにはいかない。
これに対して守備陣は(もちろんミスは数回あったものの)完璧に近かった。しっかりと攻撃の形を作れたのも、守備陣のお膳立てのおかげだった。
守備の国、イタリアでDFとして高く評価される吉田麻也と冨安健洋はもちろん、Jリーグ組の山根や佐々木翔も、韓国選手とのデュエルで一歩も引かずに闘って流れの中からはほとんどピンチを招かなかった。
そして、ブンデスリーガで活躍する遠藤航はもちろん、海外移籍して間もない守田英正も素晴らしい守備を見せ、また回収したボールをしっかりと攻撃につなげるための丁寧なパスを供給し続けた。そして、前線の選手は前からよく韓国選手を追って、韓国の攻撃に規制をかけた。
韓国のパウロ・ベント監督は李康仁(イ・カンイン)を偽の9番として使い、両サイドの羅相浩(ナ・サンホ)と李東俊(イ・ドンジュン)を前線に張り出させてきたが、山根と佐々木が両サイドをしっかりと抑えた。そうなれば、無理して上げてくるクロスに対して、吉田や冨安は楽に対処することができる。
こうして、全体として守備陣が余裕を持ってプレーできたおかげで、日本のDFは単に相手の攻撃を跳ね返すだけでなく、味方に良いボールを供給することができたのだ。たとえば、ヘディングでのクリアするにしても、しっかりと味方の位置を考えてクリアできたから、そのボールを受けたボランチの2人がすぐに前を向いて攻撃の組み立てに移れたのだ。
前半終了間際にはこんな場面もあった。相手の右CKだった。日本サイドから見て左からのCKだ。そのCKからのボールをGKの権田修一はパンチングで右サイドにいる伊東純也に直接つなげたのだ。ドリブルに移ったが、韓国DFに止められた伊東は悔しそうな大声を発した。「守備から攻撃につなげよう」という意識が非常に高かったからである。
だからこそ、前線でボールを回収した時はもちろん、自陣深くでボールを奪った場面であっても、カウンターが実に効果的だったのだ。
この日本の守備陣の出来を見ていると、孫興民(ソン・フンミン)や黄喜燦(ファン・ヒチャン)のいる韓国と対戦してどこまで抑えられたのか、ぜひ見てみたくなった。
次はアウェーのソウルで、フルメンバーの韓国と対戦してみてはどうだろうか?
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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