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ゴール後に抱き合って喜ぶ選手たち
まるで別人だ。いや、ついに覚醒したとでもいうべきだろうか。
ロメウ・ルカクの調子がすこぶる良い。前線の基準点として必要不可欠であり、前を向いたときの強さには磨きがかかっている。インテル・ミラノがスクデットを奪還できるとすれば、この先もルカクが前線でからだをはり、相手GKやDFが無力を実感するほどのパフォーマンスをどこまで持続できるか、だ。
マンチェスター・ユナイテッドでは不遇をかこった。チーム自体が暗中模索だったり、ジョゼ・モウリーニョ監督(当時)とポール・ポグバの不仲がロッカールームに極度の緊張感を招いたり、ピッチレベル以前の問題に苦しめられた。また、ルカク本人もコンディション調整がうまくいかず、つねにウエートオーバー気味でもあった。
しかし、インテル移籍後は体型がシェイプされ、一つひとつのプレーに切れ味を取り戻している。昨シーズンは公式戦32得点、今シーズンも23得点(3月4日現在)。2月は3試合・4得点・3アシストでセリエAの月間MVP。攻撃の絶対エースとして君臨している。
「監督は手を抜くことが大嫌いなんだ。練習もまるで戦場だけれど、俺は心地がいい」
アントニオ・コンテ監督との関係も良好だ。
さて、インテルやブレッシャ、フィオレンティーナなどで活躍し、現在は正確、かつ密度の濃い解説が人気を博しているダニエレ・アダーニが、次のように語っていた。
「インテルはセリエAでこそ安定したプレーを見せているものの、リヴァプールやマンチェスター・シティと張りえるレベルには達していない。そもそも、チャンピオンズリーグ(以下CL)はグループステージ最下位だ」
そのとおりではある。近ごろのCLはシティとリヴァプール、バイエルン、パリ・サンジェルマンが中心だ。
昨シーズン、セリエAからはアタランタがベスト8に進出して世間を驚かせたとはいえ、ナポリとユベントスはラウンド16で敗れている。16-17シーズンにユベントスがファイナリストになり、翌シーズンはASローマがベスト4まで残ったが、09-10シーズンのインテル以降、セリエAのクラブはビッグイヤーを手にしていない。カルチョ・イタリアーノに突きつけられた厳しい現実……。
だが、圧倒的なスケールのルカク、その動きを観察しながら、適切な距離を保ってチャンスを創出するラウタロ・マルティネス、体力的に苦しい時間帯でもロングスプリントを繰り返せるアシュラフ・ハキミなど、インテルにもヨーロッパのトップレベルで通用する選手は何人かいる。そして下部組織出身のニコロ・バレッラは、スピード、技術、運動量のすべてに秀でた才能を持つ有望株だ
一朝一夕にして古豪復活は難しいものの、その手掛かりだけはつかみつつあるのではないだろうか。実際、インテルの試合は見ていて楽しい。
いま、2位ACミランとは6ポイント差の首位。インテルの調子が上向いてきた。ユベントスの10連覇を阻み、11シーズンぶり18回目のスクデットなるか!?
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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