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スミス・ロウ
DFラインを上げる勇気がない。リスクを冒して攻めようとしない。なにがなんでも勝ってやる、という気概も感じられない。
「いったい、なにをやっているのだ!?」
今シーズンのアーセナルに絶望したサポーターも少なくはないだろう。しかし、15節のチェルシー戦をきっかけに、ようやく上昇の兆しを見せつつある。
ロンドン・ダービーは3-1の快勝だった。しかもガブリエル・マガリャンイスを新型コロナウィルスの陽性反応で欠き、ダビド・ルイスとウィリアンをコンディション不良で起用できなかったにもかかわらず、である。
また、ピエール=エメリク・オーバメヤンもベンチスタートとなったため、チェルシー戦の先発は平均年齢25歳42日。2012年9月に行われたサウサンプトン戦の24歳266日に次ぐ、クラブ史上二番目のフレッシュな陣容だった。
ブカヨ・サカとガブリエウ・マルチネッリ、エミール・スミス・ロウといった若手が生き生きしている。彼らはリスクを冒し、絶対に勝つという気概にあふれていた。こうした姿勢がチーム全体に伝播し、グラニト・ジャカがゴールを決め、GKベルント・レノはジョルジーニョのPKを止めた。
試合後、ミケル・アルテタ監督も選手たちのパフォーマンスを称賛するとともに、「チェルシー戦を含めた3試合が極めて重要」と語ったが、そのコメントどおりにブライトン、ウェストブロムに連勝。一時は降格ゾーンに引きずり込まれそうだった順位も、11位にまで盛り返している。
チェルシー戦で先発したマルチネッリとスミス・ロウ、サカは、アーセナルの攻撃にエネルギーを装填した。それまではなぜかクロス偏重で、ゴールが生まれる可能性は絶望的に低かったが、スミス・ロウがライン間で巧みにボールを受け、マルチネッリとサコが積極的に仕掛けることによって心地よいリズムが生まれた。しばらくの間、攻撃の基軸は彼らに託した方がいい。
とりわけスミス・ロウである。
「Team looks good with a No.10 like Emile Smith Rowe−the difference maker」(スミス・ロウのような10番タイプによってチームは改善された。彼は違いを創れる男だ)
メスト・エジルもSNSで絶賛しているように、弱冠二十歳の若者がアーセナルを牽引している。彼が初先発したチェルシー戦から3連勝しているのだから、よほどのアクシデントが生じないかぎりは二列目中央に固定するべきだ。
「目標としている選手はもちろんエジル。ボールコントロール、からだの預け方、パスの強弱など、毎日の練習で彼から学んでいる」
皮肉なものだ。エジルを登録メンバーから外したというのに、彼を目標とするスミス・ロウに救われるとは……。変革に痛みは付きものとはいえ、エジルの扱いには繊細過ぎるほどのマネジメントが必要とはいえ、複雑な気分でもある。
とはいえ、アーセナルは一時の不調から脱出した。チャンピオンズリーグ圏内まで、その差は6ポイント。じっくり、追いつめていけばいい。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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