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サッカー フットサル コラム 2020年7月24日

中山淳のフランス漫遊記

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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何もかもがオシャレに見えたものだ。シャンゼリゼ通りを歩くパリジェンヌも。夕焼け迫るマルセイユの旧港も。リヨンの旧市街で入ったシンプルなレストランも。あれはフランスが持つ魔力だったのだろうか。

中山さんとは3度に渡って彼の地を訪れた。1度目はパリとリヨンとサンテティエンヌ。2度目はマルセイユとグルノーブルとモンペリエ。3度目はボルドーとレンヌとリヨン。それぞれ10日間ぐらいのスケジュールで、毎回充実したロケができた。

正直に言って相当フランスを堪能した感がある。パリではエッフェル塔にも凱旋門にも登り、モンマルトルの丘でポーズを決めた。マルセイユではブイヤベースの作り方を厨房で教わり(もちろん完成後は食べましたよ)、夕陽に染まる美しい港にも赴いた。ボルドーではワインシャトーを見学し、レンヌでは本場のガレットを試食した。決して言い訳ではなく、全部映像の撮影がベースにあったからだ。

数多くの選手や監督にも話を聞いた。取材した翌年に、カメルーン代表を率いて日本代表の前に現れたポール・ル・グエン。ちょうどチェルシーを退団し、フランスに戻って来ていたクロード・マケレレ。今やワールドカップ優勝監督になってしまったディディエ・デシャン。ロシアの空にジュール・リメ杯を掲げたウーゴ・ロリス。柏レイソルでのプレー経験を有するジュシエ。ガンバ大阪で監督を務めていたフレデリック・アントネッティ。実に豪華な面々である。

個人的な話をすれば、3回目のフランスロケで特に印象深かったことがある。僕は必ず海外ロケに出る際、成田空港で小さなダルマを何個か買って、スーツケースに忍ばせていた。インタビューに応えてくれた選手や監督に、プレゼントとして手渡すためだ。

最初に片方の目を入れ、願掛けしていた願いが叶ったら、もう片方の目を入れて完成させるというルールが、何ともスポーツ的で説明しやすく、しかも実に日本っぽいお土産だという理由から思いつき、今までにもフランク・ライカールトやヤリ・リトマネン、デシャンにも手渡してきた実績がある。

2011年のレンヌには、ある有名な選手が在籍していた。ステファン・ダルマ。マルセイユやパリ・サンジェルマンといったフランス国内の強豪はもちろん、インテルやトッテナムでもプレーしたテクニシャンだ。

もう勘のいい方にはお察しいただいたと思うが、そのレンヌ訪問には1つの目的があった。『ステファン・ダルマにダルマを持ってもらう』。ただのダジャレと言うなかれ。こんなことをやる番組は過去にも未来にも絶対にないはずだと、当時の自分はかなり真剣に意気込んでいた。だが、 “ダジャレ”を実行しようと練習終わりのステファン・ダルマを待っていたものの、体調を崩して早々に帰宅してしまったことを知らされた。

どうしても諦め切れない僕は数日後、一縷の望みを抱いて週末のリーグ戦が開催されるスタジアムに向かう。ベンチ入りしていたステファン・ダルマは後半終了間際に数分だけ出場したが、おそらくこの日の彼に話を聞くようなメディアはいないはずだ。ミックスゾーンでその登場を待つ。

現れた!ステファン・ダルマだ!コーディネーターの女性に呼び止めてもらい、事の経緯を伝える。そこはさすがスター選手。すぐさま趣旨を理解し、本人用としてプレゼントした1つは自らのバッグにしまい、視聴者プレゼント用にサインをしてくれたもう1つを笑顔でこちらに向け、写真撮影に応じてくれた。よくわからない日本人の、よくわからないダジャレに付き合ってくれる度量の大きさに感激し、大満足でスタジアムを後にした。

しかし、ホテルに帰ってデジカメのメモリーを確認していたタイミングで、あることに気付く。写真の中のステファン・ダルマは、ダルマの後頭部をこちらに向けていた。それはそうだ。だって、そっちにサインを書いたんだから。サッカー選手はサインを書いたら、そっちをこっちに向けるだろう。当たり前のことだ。でも、ステファン・ダルマさん。それだとその赤い円形の物体がダルマかどうかわからないんですけど…

詰めが甘かったと言わざるを得ない。結果的にそれが現時点で最後に行ったフランスロケであり、言うまでもなくステファン・ダルマにダルマを持ってもらう機会はその後の僕に訪れていない。

もう9年前のことになる。“あの赤い円形の物体”は、結局プレゼントに出すのが惜しくなった僕の家のリビングに飾ってある。もちろん後頭部をこちらに向けて。

中山さんと一緒にフランスを再び訪問する日はやってくるだろうか。もしそんな日がやってきたら、メインの企画を撮影するちょっとした合間でいいので、もう一度彼に会いに行きたいなあ。今度はもうサインなんて書いてくれなくていい。顔が書かれている方をこっちに向けて持っている写真を、1枚撮らせてくれるだけでいいから。

文 土屋雅史(J SPORTS)

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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