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6月22日、日本サッカー協会は2023年の女子ワールドカップ招致からの撤退を突然発表した。FIFA理事会による開催国決定は6月25日に予定されており、そのわずか3日前というタイミングで“撤退”が発表されたのだ。
女子サッカーの強化は、日本サッカー協会の田嶋幸三会長が熱心に推し進めていた事業で、いわば“会長マター”とも言うべき案件だった。女子リーグのプロ化もすでに決まっており、先日は「WEリーグ」という名称が発表されたばかりだった。
日本女子代表「なでしこジャパン」は2011年にワールドカップ優勝と言う偉業を達成。さらに2012年のロンドン・オリンピック、2015年のワールドカップでも決勝進出と実績を残してきた。
なでしこジャパンはその後リオデジャネイロ・オリンピックの出場権を逃し、2019年のワールドカップでもラウンド16敗退に終わったが、2018年にはU-20日本女子代表がワールドカップで優勝するなど女子のレベルは着実に上がっている。2011年当時はなでしこリーグ1部でも上位、下位の差が大きかったが、今では1部はもちろん2部上位にも好チームが存在し、競技レベルは間違いなく上がっている。
J SPORTS 放送情報
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【女子日本代表 世界初三世代ワールドカップ制覇!】 FIFA U-20 女子 ワールドカップ フランス 2018 準々決勝 ドイツ vs. 日本
放送日:2020年7月1日(水) 放送時間:午後 10時 30分~深夜 0時 45分
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【女子日本代表 世界初三世代ワールドカップ制覇!】 FIFA U-20 女子 ワールドカップ フランス 2018 準決勝 イングランド vs. 日本
放送日:2020年7月8日(水) 放送時間:午後 10時 30分~深夜 0時 45分
ただ、このところフランス、イングランド、スペインなどヨーロッパ諸国で女子サッカーの人気、実力が急上昇中で、日本が今後ヨーロッパやアメリカに伍して戦っていくために国内リーグのさらなる充実が必要なことは間違いない。
ただ、なでしこリーグの観客動員数はこのところ低迷しており、プロ化を成功させることはそれほど簡単なことではない。それだけにプロ化については慎重論も根強かったが、田嶋会長の強力なリーダーシップの下、2021年秋のスタートが決まったのだ。
2023年ワールドカップの日本開催はプロリーグ成功のための起爆剤としても大いに期待されていた。したがって、招致失敗はWEリーグにとって大きな痛手となることは間違いない。
日本サッカー協会、そして田嶋幸三会長の“大失態”と言っていいだろう。
失敗の原因は票集めができなかったことに尽きる。
招致撤退を決めた後、日本サッカー協会は「ステートメント」を発表したが、まず「6月8日にブラジルが立候補を取り下げたことが、南米サッカー連盟の票の一本化につながった」ことを撤退に至った理由として取り上げている。
この結果、候補はコロンビアと日本、オーストラリア/ニュージーランド共催の3つに絞られることとなったが、南米が「コロンビア支持」で結束し、ヨーロッパ諸国もコロンビア支持に傾いているため、アジアの候補を一本化する必要があった。それが撤退の真相に近いのだろう。「ステートメント」では「既にASEANサッカー連盟がオーストラリア/ニュージーランドへの支持を表明する」としている。つまり、アジアを一本化するために日本が撤退するのだということだ。
おそらく、AFCから日本に対して「要請」または「圧力」があったのだろう。事実、日本が撤退を発表すると、間髪を入れずにAFCのサルマン・ビン・イブラヒム・アルハリファ会長は日本に対して感謝の意を示す声明を手際よく発表した。
その他、「ステートメント」では、東京オリンピックが1年延期されたため、2023年大会を日本で開催すると「女子サッカー最高峰を決める2つの大会が、短期間に同じ国で開催されることに対する抵抗感が強まったこと」も撤退の理由としている。
しかし、オリンピックが東京で開催されることは最初から分かっていることだ。それが2020年であろうが、2021年であろうが、本質的に大きな違いはない。また、男子の場合には同一国でオリンピックの2年後にワールドカップが開かれたことも、逆にワールドカップの後にオリンピックが開かれたことも複数回ある(1968・70年のメキシコ、1972・74年の西ドイツ、1994・96年のアメリカ、2014・16年のブラジル)。従って、オリンピックの3年後に女子ワールドカップを日本で開くことがそれほど問題になるとは思えない。
さらに、「ステートメント」ではFIFAが公表した「評価報告書(Evaluation Report)では(中略)オーストラリア/ニュージーランドが日本を上回る評価を得たこと」も撤退の理由として挙げている。
しかし、報告書を見ると最高評価だったオーストラリア/ニュージーランドの評価スコアは412.0であり、392.0の日本との差は“僅差”だった。もし、わずか20ポイントの差を重視するなら、総合スコアが280.5のコロンビアが選ばれるはずがない。しかし、2022年の男子ワールドカップ開催国選びではスコアが最低だったカタールが選ばれて問題になった。要するにFIFA報告書の評価など大した問題ではないのだ。
このように考えれば、日本サッカー協会が「ステートメント」の中で挙げているいくつかの撤退の理由はいずれも“後付け”の理由としか言いようがない。
要するに、日本サッカー協会が集票活動=選挙運動を軽視あるいは失敗したのが唯一最大の原因なのだ。
かつて1990年代に日本はAFCにおけるFIFA理事選挙で苦杯をなめ続けてきた負の歴史がある。2002年ワールドカップ開催国選びを巡る日韓の争いでも、プロの政治家でもあった韓国の鄭夢準(チョン・モンジュン)会長の選挙戦術に振り回された結果、追い詰められて「共同開催」を飲むしかなくなってしまった。
それから時間が経ち、日本は男女ともに世界大会で存在感を示すようになってきている。アジアでも各国に人材を派遣するなど協力を積み重ねてきた。AFCにおける日本の影響力も高まり、選挙下手も改善されていたのかと僕は思っていた。だが、女子ワールドカップ招致争いで、日本は「惨敗を避けるため」に撤退せざるを得ないほど追い詰められてしまったのだ。
田嶋会長は“大失態”の責任を肝に銘じてほしい。ワールドカップ招致が失敗した以上、プロリーグを成功させるためには東京オリンピックもしくは2023年のワールドカップで代表チームが世界一に返り咲くしかなくなったのだ。そのための万全の態勢作りをしてほしい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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