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だが、今回のテレワークでも体験したように、情報を扱う現代の産業にとっては、労働者や消費者が密集していることはとくに必要ではない。質の高い生活を送るためには、密集はむしろ負担になってしまう。
“ポストコロナ”の社会は、いずれ大都市への密集ではなく、中小都市への分散の方向にベクトルを変えるはずだ。
1923年の関東大震災の後、東京では多くの犠牲者を出した東部の下町から、より安全と思われた西部の山の手に人口が移動した。そして、山手線西部の各ターミナル(池袋、新宿、渋谷)から西に向かって鉄道網が整備されていった。それと同じように、一連の災害を経て、“ポストコロナ”の時代に人々は分散を考えるようになるだろう。
ポストコロナ社会のスポーツ観戦も、密集を避けるようになるだろう。「三密」を避けて、ソーシャルディスタンスを保とうとする意識はこれからも維持されるだろう(それによって、インフルエンザなど既存の感染症による死者数も減る)。5万人以上の観客が1つのスタジアムに詰めかけるといったようなスポーツ観戦文化も変化していくはずだ。大都市のビッグスタジアムから各中小都市の中小規模の快適なスタジアムでの観戦へ……。そして、リモート観戦の技術も発達していく。
幸い、サッカーのJリーグには、中小地方都市をホームタウンとした小さなクラブがすでに多数存在する。未だに観戦者ゼロの岩手県にも、ちゃんとJ3クラブが存在するのだ。また、これまでのJリーグの歴史を見ても、茨城県鹿嶋とか静岡県磐田といった地方の中小都市にも強豪クラブが存在している。
僕は、将来は大都市のビッグクラブがJリーグ全体を牽引していくようにならなければ、Jリーグの発展はないと思っていた。たとえば、マドリードやバルセロナのクラブがスペインのリーガ全体を引っ張っているのと同じように……。
だが、“ポストコロナ“社会を考えると、むしろ地方の中小都市のクラブの存在の方が重要なのかもしれないとも思えてくるのである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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