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サッカー フットサル コラム 2019年12月17日

E−1選手権をうまく利用した日本男子代表。一方、チーム作りが遅々として進まない「なでしこジャパン」

後藤健生コラム by 後藤 健生
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韓国の釜山(プサン)で開催されている「E−1選手権」。日本代表は海外組の招集ができないため、A代表のバックアップ・メンバーである国内組とU−23代表組がほぼ半数ずつという構成で出場している。

同様に、韓国も中国や日本のクラブ所属の選手は招集できたものの、今やトッテナム・ホットスパーの絶対的エースとなった孫興民(ソン・フンミン)などヨーロッパのクラブの選手は呼ぶことができず、また海外組がほとんどいない中国もマルチェロ・リッピ監督の突然の退任もあって十分な準備ができず、メンバー的にもけっしてフルメンバーではない。つまり、どこの国もフルの状態からは程遠い状態だったのだ。

実際、試合のレベルも低調に終始しているし、韓国国内での関心度も低いようで、12月15日の日曜日の夜に行われた韓国対中国の試合でも公式記録によると観客数は7916人。他の試合では1000人前後で終始している。

その韓国対中国戦。韓国は前半にCKからDFの金敏在(キム・ミンジェ=皮肉にも中国の北京国安所属)がヘディングで決めた1点のみに終わった。前からのプレスで中国の攻撃を封じ込めて完全にゲームをコントロールしてチャンスの山は築いたものの、ゴール前の精度を欠いて再三スタンドの溜息を誘った。

韓国は初戦でも香港の粘り強い守備に手を焼いて2得点に終わっており、ヨーロッパ組は収拾できなかったものの、それ以外は代表常連の選手を集めていただけに、低調ぶりが気にかかる。パウロ・ベント監督に対する批判の声も出始めているようだ。

そんな中で、若手を多く招集し、香港戦ではほとんどの選手が代表初キャップという思い切った選手起用をした日本代表は、最終の日韓戦の行方がどうなるにしても、大きな収穫を得ることができた。多くの若いタレントを発掘し、経験を積ませることができたのだ。

香港戦では小川航基が久しぶりに本来のシュート技術のうまさを発揮。初代表でハットトリックという快挙を成し遂げ、オリンピック代表でのFW争いで一歩優位に立つこととなった。また、大学生として唯一招集された田中駿太は、スリーバックのセンターで先発して堅実なプレーで守備を統率したかと思うと、後半の途中でポジションを上げてボランチに入ると攻撃的でチャレンジングなパス出しを披露。それまでの堅実なプレーから、思い切った攻撃的なプレーへの変化は驚くべきもので、まるで同じ背番号「3」の選手が2人いるかのような印象だった。

この試合のボランチでは田中碧が先発し、途中から田中駿太がポジションを上げたわけで、2人の田中のボランチ争いも面白くなった。

いずれにしても、日本代表にとっては「若手の起用」という明確なテーマを決めて大会に臨んだことが成功に結び付いたようだ。ちょっと悪い言葉で言えば、日本代表はこの大会をうまく利用したわけだ。最近、森保監督がU−23代表と兼任していることに対して否定的な論調が多くなっているが、この「E−1選手権」では兼任監督であることのメリットが大きかった。

「E−1選手権」という大会の面白さは、女子の大会が同時に開催されることだ。

日本女子代表も開幕から2連勝。最終の韓国戦の結果によっては男女同時優勝も可能な状況となっている。しかも、女子は初戦の中国台北(台湾)戦が9対0。中国戦が3対0と大量得点を挙げ、無失点と順風満帆のようにも見える。

だが、僕は女子代表の試合内容についてはかなり心配になっている。

2連勝はチーム力の差によるものであって当然の結果だ。9対0で大勝した中国台北は日本人の越後和男監督が率いているが、越後監督によれば選手たちは普段は働いていてトレーニングは週に1回。それも、各自がバラバラにとレーニングをするだけなのだという。世界のトップを目指すなでしこジャパンにとって、勝利はあまりにも当然の相手だ。

そして、中国戦は岩渕真奈のハットトリックによって3対0で勝利したものの、中国のパワフルなプレーに押し込まれてピンチを招く時間帯もあった。新しい選手も使っていたのである程度は仕方のないことだが、DF同士あるいはDFとGKの連携が悪く、シンプルなロングボールで中国にチャンスを作らせていたのだ。

若手を多数起用した男子代表と違って、ヨーロッパ組の熊谷紗希を除いてほぼベストメンバーで臨んでいるだけに、中国のパワーに苦しんでいる物足りない。目標である東京オリンピックで対戦する世界の強豪は中国以上にパワフルで、中国よりもテクニックのある相手ばかりのはずだ。

いずれにしても、思い切った選手起用をしている男子代表に比べて、女子代表はほぼベストメンバーで戦い続けながら、チーム作りの進み方が遅いのが気になるのだ。

女子代表にとってこの大会での一番の収穫は、キャプテン・マークを巻いた岩渕の得点能力の覚醒だろう。チャンスは作れるのだが決め切れずに敗れた今年のワールドカップを考えると、岩渕というエースの決定力アップは心強い。

だが、岩渕一人に頼り切りだと、そこを消された場合、あるいは岩渕が使えなくなった時のことが懸念される。その意味でも、なでしこリーグで4年連続得点王という偉業を達成したばかりの田中美南が代表では苦しんでいるのが気になるところだ。

所属の日テレ・ベレーザでは得点だけに専念して、そのシュート技術の高さを発揮できている田中だが、代表ではパス回しに加わりながらポストプレーもこなし、そして守備も求められる。つまり、得点のことだけに集中できないのが、代表での不振の原因なのだろう。だが、それではあまりにもったいない。

岩渕とツートップを組んで、岩渕から田中にパスを供給するような形ができれば、日本代表の得点力も大幅にアップするはずなのだが、中国戦ではハットトリックを達成した岩渕と入れ替わりのかたちでピッチに立ったため、岩渕とのコンビは見られなかった。

「E−1選手権」のような大会では、男子代表がやっているようにもっと思い切ったトライをしながら、選手たちの可能性を引き出してもらいたいものなのだが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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