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パラグアイで開催されていたFIFAビーチサッカー・ワールドカップはポルトガルが2大会ぶり2度目(世界選手権時代を含めると3度目)の優勝を飾って幕を閉じた。そして、ラモス瑠偉監督率いる日本代表は2005年大会以来のベスト4進出と大健闘した。
日本は開幕戦で終了間際の赤熊卓弥の決勝ゴール(残り時間0.5秒!)で開催国パラグアイを破ると、グループリーグ、そして準決勝のウルグアイ戦まで破竹の4連勝でベスト4進出を決めた。準決勝では優勝した強豪ポルトガルと対戦。この試合も何度も決定機がありながらポルトガルのGKアンドラーデの好守に阻まれ、3対3の引き分けに終り、結局PK戦で敗れて決勝進出を逃す。そして、3位決定戦では過去2度の優勝を誇る強豪ロシアと対戦し、一時は2点リードしたものの、第3ピリオドで逆転を許して4位に終わった。
だが、日本代表は強豪国ともまさに互角に渡り合い、目標の決勝進出こそ逃したものの、大健闘と言っていいだろう。
日本はフィクソに入った茂怜羅オズの抜群の安定感を生かし(オズはFIFAのゴールデンボール賞=最優秀選手賞を受賞)、また今大会絶好調の赤熊が何度も貴重なゴールを決めて快進撃につなげた。
それにしても、激しい戦いの連続だった。日本はこの大会で6試合を戦って4勝1分1敗だったのだが、2点差が付いたのはグループリーグ最終のスイス戦の5対3での勝利のみ。ポルトガル戦はPK戦までもつれ込んだし、残りの4試合は勝利した試合も、唯一敗れたロシアとの3位決定戦もすべて1点差という大接戦だった。
いや、日本の試合だけではない。グループリーグでは実力差のある試合もあったが、決勝トーナメントに入ってからはいずれも実力伯仲。準々決勝以降の8試合のうち、2点差以上が着いたのは、ポルトガル絡みの2試合(準々決勝のセネガル戦=4対2と決勝のイタリア戦=6対4)のみで、他の6試合はすべて1点差もしくは引き分け(日本対ポルトガル戦)だった。
日本の試合を振り返ると、敗れたポルトガル戦もポルトガルの先制から始まって、逆転、再逆転の末、最後は赤熊の同点ゴールで日本が同点、PK戦に持ち込んだものだし、唯一敗れたロシア戦では22分40秒には大場崇晃のゴールによって日本が4対2と2点のリードを奪った後でロシアに3連続ゴールを許してしまったものだ。
11人制のサッカーでは、先制点が勝利に結びつく確率がかなり高い。
それは、リードを奪ったチームは守備を固めたり、あるいはパスをつないでゲームを落ち着かせたり(別の言葉で言えば「ゲームを殺したり」)することができるからだ。こうしてリードを守って逃げ切ったり、さらに前に出てくる相手の裏を突いてカウンターからダメ押しの追加点を奪ったりすることが多いのだ。
従って、ハイレベルのチーム同士の戦いでは先制ゴールの比重は大きく、「逆転勝利」というのは難しいものだ。たとえば、2018年のロシア・ワールドカップの決勝トーナメント16試合のうち、先制ゴールを決めたチームが逆転で敗れたのは(PK戦は除く)ラウンド16のベルギー対日本と準決勝のクロアチア対イングランドの2試合だけしかない。他は、先制したチームが勝つか引き分けに終わっている。
だがビーチサッカーという競技では、リードしたチームが戦い方を切り替えて、そのリードを保つことはかなり難しいようだ。
その原因としては砂のピッチではボールがイレギュラーバウンドする場面が多く、そのためミスなくボールを保持し続けることが難しいことがある。
足でボールを扱うサッカーという競技ではボールの保持が逆転する「ターンオーバー」が多発するのが大きな特徴なのだが、ビーチサッカーの場合は芝生の上で行う11人制のサッカーや、ハードコートの上で行われるフットサル以上にターンオーバーが多くなる。それが、リードを保って確実に勝利に結びつけることを難しくしているようだ。
実際、「日本チームは終了間際に決勝ゴールを奪ったり、同点に追いついた試合もあったが、同時にリードを守り切れずに追いつかれたり、逆転された試合も目についた。逆に言えば、リードしてからの戦い方を工夫できれば、もう少し勝率を上げることができるようになるのではないだろうか。
例えば、日本の試合を見ていると、試合終盤に日本選手の足が止まる場面が多かった。サイズの大きなヨーロッパ勢との戦いでは、やはり疲労が溜まりやすいのだろう。11人制以上に、1人ひとりの選手への負担も大きいのかもしれない。PK戦まで戦った準決勝から休養日なしの連戦となった3位決定戦で最後に3連続失点したのは、明らかに疲労が原因だった。
この問題を解決してどう戦うのか。それが、決勝進出さらに優勝を目指すための必要事項なのではないか。
その点で、3位決定戦で戦ったロシアは参考になる点が多かった。
ロシアはアイスホッケーやフットサルのように、頻繁にセットごとに(つまりフィールドプレーヤー4人を同時に)交代させていたが、これができれば疲労の蓄積はかなり避けられるだろう。また、ロシアはボールを持った時にゲームをスローダウンさせるのがうまく、それも疲労の蓄積を防ぐためには必要な戦い方だ。とくに、リードした後にこういう戦い方ができれば、時計の針を進めることもできるだろうし、相手の焦りを誘うことができる。
どんな相手とも、互角に戦えることを証明した今回のパラグアイ大会。そうした、戦い方のディテールを詰めていけば、いつか優勝カップに手が届くことだろう。
ところで、FIFA主催の「ワールドカップ」と名の付く大会は「クラブワールドカップ」を除いて8種類あるが(男女の各年代別。およびフットサルとビーチサッカー)、今回のビーチサッカーのワールドカップを含めて、日本は直近の大会のうちフットサル以外の7つのカテゴリーでノックアウト・ステージまで駒を進めたことになる。これは、驚くべきことと言っていい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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