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サッカー フットサル コラム 2019年11月6日

U17日本代表、無失点で首位通過!安定度抜群の戦いぶりを見せる日本チーム

後藤健生コラム by 後藤 健生
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ブラジルで開催されているFIFA U-17 ワールドカップで、日本代表はグループリーグ最終戦でセネガルを1対0で破って、「首位通過」を決めた。

日本が入ったグループDは、ヨーロッパ・チャンピオンのオランダをはじめ、ユース年代の強化が著しいアメリカやこの年代では圧倒的な強さを誇るアフリカ勢の一角セネガルが入った「死のグループ」と目されていた。

セネガル戦後のフラッシュインタビューで森山佳郎監督が自ら語っていたように「日本が首位通過するなんて、誰も思っていなかった」。その「死のグループ」を2勝1分、勝点7で首位通過を果たしたのだ。しかも、3試合を通じて無失点である。3戦を終えて無失点というのは日本だけだ(パラグアイも2戦目を終えた時点で無失点)。

実に安定した戦いぶりと言っていいだろう。

たとえば、最終のセネガル戦。セネガルは、フル代表もそうだがスピード勝負でしかけてくる嫌なタイプの相手だ。攻めていてもカウンター一発で失点する危険がある。

そんな相手に、日本チームはしっかり守りを構築した。

まず、前線の選手が相手のDFにプレッシャーをかけてパスコースを制限。中盤では展開を遅らせる。サイドの選手もしつこく相手のドリブルを追い込んで外へ誘導する。そして、最終ラインは粘り強く、簡単に飛び込まずにシュートコースを消し、最後はシュートブロックに身を乗り出す……。

もちろん、若い経験の浅い選手たちだ。いつも守備が万全に機能したわけではない。しかも、アフリカ系の選手との対戦経験も少なく、セネガルとは昨年対戦して敗れた記憶もある。

無理をしてパスカットを狙って飛び込んで裏を取られるようなシーンも皆無ではなかった。だが、そのために何重の守備網を敷いているのだ。どこかでミスが起こっても、すぐにカバーし、GKの鈴木彩艶が必至のセービングで逃れるような場面はほとんどなかった。

さすがに、試合の立ち上がりは相手のスピードに戸惑うような場面もあったものの、15分ほどで慣れてうまく対応できるようになっていく。

また、たとえば右のサイドハーフにサイドバックを本職とする角昂志郎を置き、その後ろに守備の要である半田陸を置いたり、MFにチャレンジングなパスを持ち味とする攻撃的な藤田譲瑠チマではなく、より守備的な田中聡と山内翔を組ませたりと、采配としてもしっかりした守備から入ろうという意図がよく見て取れた。

それでいて、守備一辺倒にもならずにバランスよく戦えたのも見事だった。

セネガル戦のツートップは唐山翔自と中野桂太。唐山は、前線で体を張ってセネガルの屈強なDFを背負い、ポストプレーでチームに貢献。中野は運動量を生かしてDFラインの裏に走ってパスを引き出した。彼らのプレーぶりを見ても、しっかりと攻撃の形を作り、前線で時間を使うことによって、試合の流れを引き寄せようという意図が見て取れた。

後は、我慢比べだ。時間によっては、中盤でのスペースを使われて押し込まれる時間もあった。後半の立ち上がりには、再びスピードで突破を許す時間もあった。一方、日本のリズムでチャンスをつかんだ時間帯もあったが、なかなか得点には至らない。だが、それでも決して焦ることなく、辛抱強く戦った。

そして、ある程度流れを引き寄せた29分に田中聡が頭部の負傷で、急遽藤田と交代したが、すでに流れをつかんだ後だったので、むしろ藤田が入って日本の攻撃は多彩になった。

こうして、スコアレスのまま時間が経過。すると、日本のベンチは65分に西川潤、81分に若月大和と両エースを投入する。

相手が疲れてスペースができた時間帯に両エースを入れたことで、西川のテクニックと若月のスピードが生きたのだ。ポストプレーで体を張った唐山は、ゴールに結びつけることこそできなかったが、ゲームの流れを引き寄せる仕事を果たし、そうして生まれた状況をクローザーとして起用された西川と若月が利用して“収穫する”という理想的な役割分担だった。

そして、81分に藤田の攻撃的なパスセンスと西川のテクニックが絡んで、日本が決勝ゴールを決める。

これまでの2試合でも素晴らしいプレーを見せていた西川だが、ゴール前ではファーストタッチが大きくなってしまうといったテクニカルなミスが多く、得点はオランダ戦のPKだけで焦りも感じられたが、この技術力を見せつけるようなゴールが生まれたことで、これからの西川はゴール前で落ち着いてプレーできるようになるはずだ。

いずれにしても、日本の戦いぶりは非常にロジカルなものだった。17歳以下のチームとしては、考えられないような完成度の高いチームと言っていいだろう。

たとえば、グループAを全勝で勝ち抜いたブラジル代表などは、テクニックのレベルなどはたしかに高いが、まだまだ“子供のサッカー”的な部分が多く見て取れる。

それに引き換え、日本ははるかに大人のサッカーをしている。これは、5月にポーランド開催されたU20ワールドカップの時にも感じた印象だ。最近の日本の若い世代の選手は実に試合運びがうまいのだ。

そして、かつては日本の弱点と言われたセンターバックやゴールキーパー。あるいは、FWなども今では世界と比べてもまったく遜色ないプレーができるようになっている。

こうして首位通過を果たした日本。もし2位通過だった場合は、スペインとアルゼンチンが入ったグループEの首位との対戦となるところだったので、今後の展望も見えてきた。もちろん、強いチームとの対戦は望むところではあるが、それはさらに勝ちぬいた後に取っておけばいい。まず7試合戦えるように、そして決勝進出を目指してほしい。日本チームの戦いにますます目が離せない。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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