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サッカー フットサル コラム 2019年9月8日

バスケの敗戦で思いだした日本サッカーの過去。試合をコントロールしながら、パラグアイに完勝

後藤健生コラム by 後藤 健生
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中国で開かれているバスケットボールのワールドカップ。僕は、バスケットのプレー経験はないが、オリンピックやアジア大会などを取材に行った時にはよく観戦に足を運んでいる。「気になる競技」の一つなのである。

さて、この大会、地元開催の2006年大会以来13年ぶりの出場を果たした日本代表だったが、1次リーグで3戦全敗となってしまった。

3戦目のアメリカ戦(45対98)は、まさに手も足も出ない完敗だった。1人ひとりのプレーの幅、スピード、守備の手堅さ……。NBA選手を並べたアメリカは(最強チームは組めなかったようだが)やはり1枚も2枚も3枚も上。最後は、アメリカの方が100点代に乗せるのを遠慮してくれたように見えた。

惜しかったのは、2戦目のチェコ戦だろう。

76対89と点差を付けられてしまったが内容的には互角で、注目の八村塁も活躍を見せた試合だった。「逆転勝ち越しができるかな」という場面も何度かあったが、そこで何度も突き放され、最後はミスを多発して自滅してしまったような内容だった。

この試合を見て、僕はデジャヴ(既視感)に襲われた。どこかで見た光景である。

そう、日本のサッカーが初めてワールドカップに挑戦した1998年(あるいはほんの数年前まで)の記憶が蘇ったのだ。

1998年のフランス大会。日本の初戦の相手はワールドカップ2回優勝のアルゼンチンだった。3バックで守りを固めた日本は強豪に食い下がった。だが、ちょっとしたミスを相手のエース、ガブリエル・バティステュータに決められて“惜敗感”満載の完敗だった。

続くクロアチア戦では暑さの中で日本がボールを握る時間が長く、何度もチャンスをつかんだのだが、最後はこれも相手のエース、ダボル・シューケルに決められて早くも2敗目を喫してグループリーグ敗退が決まる。

そして、最終戦の相手はジャマイカ。相手もワールドカップ初出場で、チーム力を考えても間違いなく勝てる相手だったが、疲れもあってキレを欠いた日本は中山雅史が大会唯一のゴールを決めただけで、1対2で敗れてしまった。

強豪相手にも善戦はできるが、ゲームはコントロールされている。互角の相手にもミスが生じ、最後は疲労で足が止まってしまう……。

バスケットの場合は、ワールドカップ(旧世界選手権)初出場というわけではないが、「待望のプロリーグが始まってすぐ。人気上昇中」という点で、僕はあのフランス大会の頃を思い出してしまったのだ。

当時のサッカーの日本代表は、どんな相手にも90分つねに全力フルパワーで戦わなければならなかった。そうやって戦えば、押し気味の時間帯を作ることもできる。だが、結局は勝負所で仕掛けられて、最後は呆気なくエースに決められ、そして疲労が蓄積してミスが増えていく。

力不足、あるいは経験不足が原因だ。

それから、20年が経過してサッカーの日本代表はすっかり成長を遂げた。

バスケットの日本代表が上海でアメリカと戦った同じ晩、サッカーの日本代表はパラグアイと対戦し、2対0で完勝して見せた。

パラグアイは、これまでも互角に近い戦績を残している相手だ。ワールドカップのラウンド16で対戦し、互いに守りを固めた我慢比べの末に0対0で引き分け、PK戦でパラグアイが準々決勝に進んだこともあった。2010年南アフリカ大会でのことだ。

だから、2点差の勝利に驚くこともないし、3点目が奪えなかったといった反省点もあるだろうが、完勝と言っていいゲームだった。

僕が驚いたのは、ゲーム・コントロールの部分だった。

パラグアイが長距離移動の後で動きのキレがなかったことは事実だが、日本の選手もヨーロッパからの移動の後だった(この日の先発11人のうち、国内組は橋本拳人1人)。コンディションを考えれば、90分間フルパワーで戦うことは不可能だ。そこで、彼らは90分の流れを計算しながら試合を進めた。

まず立ち上がりに、アグレッシブに仕掛けていくつかのチャンスを作って、相手を押し下げることに成功。その後は、動きをセーブして試合をコントロール。トップの大迫勇也も中盤に下りてきて、柴崎岳、橋本とともに中盤でミスマッチを作って、4−1−4−1のパラグアイの中盤を制圧。そんな中で、攻めに行くスイッチが入った時には全員が呼吸を合わせてギアを上げて、2ゴールを決めた。

23分に長友佑都が鋭いグラウンダーのクロスを入れた瞬間、ゴール前の駆け引きでフリーになった大迫がしっかり合わせて先制すると、30分には橋本が浮き球でつなぐと中島翔哉が大きく逆サイドに展開してフリーで走り込んだ酒井宏樹が折り返し、最後はフリーの南野拓実が決めた。

どちらも、何人もの選手が連動した素晴らしいビッグゴールだった。

そして、その後はチャンスを作りながらも、行くときは行くが、無理はせずにゲームをコントロールして、パラグアイにほとんどチャンスを作らせないまま無失点で切り抜けた。

パラグアイが万全の状態でなかったことは明らかだが、しかし、もしパラグアイのコンディションが良かったとしても(球際の争いなどで苦しんだもしれないが)、日本が負ける要素はほとんどない。それほどの力の差を見せつけた。

単に全力を出し尽くして戦うだけでなく、試合の流れを読んで、時間帯や状況に合わせてプレーを選択する。そんな試合ぶりを見て、「日本のサッカーは本当に強くなったな」と思わせる試合だった。

これなら、ヨーロッパとの長距離移動でコンディションが悪くても、アウェーで難しいコンディションであったとしても勝利をつかめることだろう。大量点を狙うのでなく、確実に勝点3を積み重ねるためにプレーをコントロールしながら戦っていけばいいのだ。ワールドカップ予選は安心して見ていられそうだ。

フランス・ワールドカップから21年。プロリーグ発足から26年目の日本サッカーの立ち位置である。バスケットも、いつかはチェコのような相手からはしっかり勝利を手繰り寄せ、アメリカとも対等に渡り合える日が訪れることだろう。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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