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サッカー フットサル コラム 2019年9月3日

招集メンバーにサプライズがなかった理由。五輪代表のために、W杯予選をどう利用するべきか……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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ワールドカップ・アジア2次予選の初戦となる9月10日のミャンマー戦(およびキリンチャレンジカップのパラグアイ戦)に向けた日本代表のメンバーが発表された。

約1年前にA代表監督に就任した森保一監督は、2019年1月のアジアカップまでの準備期間が半年ほどしかなかったので、まず比較的メンバーを固定して戦うことでチーム作りを急ぎ、アジアカップでは準優勝という結果を残した。つまり、堂安律、南野拓実、中島翔哉の「三銃士」に大迫勇也が攻撃の主体となったチームだ。

しかし、アジアカップを終えると、森保監督はその後の親善試合で香川真司や岡崎慎司といったベテランも含めて、それまで呼んでいなかった選手を次々に招集していく。さらにA代表として参加したコパ・アメリカでも、海外組も国内組も含めて自由に選手を招集できないという状況を逆手にとって、U−22年代の若手中心のメンバーを集めて南米の強豪と戦った。

こうして、アジアカップ後の約半年間で代表候補選手のリストはどんどん膨らんで行った。いわゆる「ラージグループ」を作り上げてきたのだ。「U−22代表」として招集されたメンバーで戦ったトゥーロン国際組も含めて、森保監督が招集した選手は約70人ほどに達している。

もちろん、招集はしてみたものの十分な働きを示せず、すでにリストから外されたメンバーもいるだろうが、逆に未招集でもリストに入っている選手もいるはずだし、U−20代表の中にも“候補”はいるので、現状で「ラージグループ」はかなり大きな人数になっているはずだ。

だが、森保監督の最初の目標である東京オリンピック開幕まではすでに1年を切った。そして、オリンピックが終わればすぐにワールドカップ最終予選が始まる。つまり、膨れ上がった「ラージグループ」から候補選手を絞って2つの代表チームを作る作業がこれから始まるのだ。

だから、ワールドカップ2次予選では単にその時点での最強チームを招集すればいいというわけではないのだ。チーム作りの一環として、一つ一つの試合でどんな選手を招集して、どんなテストを行うのかということを見ていかなければならない。

たとえば、これまで日本代表を率いてきたアルベルト・ザッケローニ監督やヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、どちらかというとどの試合でもベストメンバーを集めて戦ってきた。外国人監督としては「一つでも悪い負け方をすれば解任されるかもしれない」という恐怖心があったのだろう。しかも、外国人監督はワールドカップが終われば日本を離れるわけで、オリンピック代表の強化などはその職務外のことなのだ。

その結果、メンバーは固定化し、チーム内競争もなくなり、代表はすっかりマンネリ化してしまった。そうした観点からも、森保監督には柔軟な、思い切った選手選考をしていってほしいのだ。

ところが、ミャンマー戦(およびパラグアイ戦)のためのメンバーリストを見ると、ほぼ現時点でのベストメンバー。サプライズのない手堅いリストとなっていた。

たしかに18歳の久保建英が招集されてはいるが、これはもうまったく驚きではない。6月の親善試合とコパ・アメリカにおける久保のプレーを見れば、もはや久保は主力級だ。久保以外にもU−22世代から3人が選ばれたが、冨安健洋や堂安律もすでにA代表のレギュラーであり、“抜擢”感のあるのは板倉滉くらいのものだ。逆に、香川や岡崎の落選は、今ではもうまったくサプライズではなくなっている。

メンバー発表の会見の席で、早速「予想以上に手堅いメンバーだが」と質問を受けた森保監督も「(今回は)A代表でベストのメンバーということで選考した」と認めている。

「(今回は)」というのは、僕が勝手に入れた注釈である。おそらく、10月以降の予選では、若手の抜擢がかなり行われるのではないかと思っているからだ。

開幕まで1年弱となったオリンピックだが、9月にメキシコ・アメリカ遠征があり、秋にさらに2試合の準備試合があるが、オリンピック代表の強化試合はA代表ほど試合数が組めない。しかも、A代表と違って日本側に選手の招集権がないから、海外組は強化試合に参加できない可能性が強いのだ。

そこでワールドカップ予選の試合をオリンピック代表の強化に使いたいのだ。2次予選の対戦相手国を見れば、オリンピック代表の強化にはうってつけの相手ともいえるし、ワールドカップ予選であれば森保監督はあらゆる選手を招集できる。

たとえば、来年の3月までに2次予選突破を決めてしまえば、6月のタジキスタン戦、キルギス戦は完全にオリンピック代表の強化試合として使えるだろう。

今回のミャンマー戦でベストメンバーを組んだのには、いくつか理由が考えられる。

まず、9月にはA代表の活動と同時にU−22代表の遠征が組まれているので、U−22代表の主力であり、A代表ではない選手たちがプレーする機会はそちらで保証されているからだ。A代表に招集しても出場機会が与えられないというよりも、U−22代表として試合に出た方がいいのは間違いない。

ミャンマー戦でベストメンバーを組んだ2つ目の理由は、いかに格下のミャンマーが相手とはいえ、なんといっても予選の初戦であり、プレッシャーのかかる試合となるからだ。ここは、ベストメンバーを組んで、しっかり結果を出すことが重要というわけだ。初戦で確実に勝点3を取っておけば、それこそ今後のワールドカップ予選をU−22の選手のテストのために使うことができるようになる。

パラグアイ戦も重要だ。

2次予選勝ち抜きも重要だが、その先の3次予選、あるいはカタール・ワールドカップを見据えればA代表自体の強化も重要だからだ。そのためには、ワールドカップ予選がない日に行われる強豪相手の親善試合は、ぜひA代表のベストメンバーで戦っておきたいはずだ。

後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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