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「最強の5人制フットボール」を掲げた2019/20シーズンのFリーグ。第10節までは前年優勝の名古屋オーシャンズと2位のバサジィ大分が勝点差2で競っていたが、第11節では大分が前季準優勝のシュライカー大阪と引き分け、勝点差が4に開いてしまったが、いずれにしても、「2強体制」の様相を呈している。
最初の直接対決となった第3節では大分が5対2で勝利しており、まだまだ両者の競り合いが続くのだろう。
かつては、圧倒的な強さでFリーグのタイトルを独占していた名古屋も、2016/17シーズンではシュライカー大阪にタイトルを奪われて、Fリーグ開幕以来の連覇が途絶えた。その後、2017/18、2018/19と再び連覇を達成しているものの、昨シーズンのプレーオフではシュライカー大阪と1勝1敗という結果となった(規定によりリーグ戦上位の名古屋が優勝)。
もちろん、名古屋がFリーグ最強クラブなのは間違いないが、他クラブの体制が整うとともにかつてのように「絶対王者」とも言えなくなってきている。
その名古屋が、7月最後の週末に立川・府中アスレティックFCと対戦したので、観戦に行ってきた。
結果は、1対6でアウェーの名古屋の大勝だった。
試合は、序盤から名古屋がコントロール。選手間の距離を大き保ってピッチ全体に配置。そして、スピードのあるパスを回してゲームを支配。ピヴォを使って相手陣深くにポイントを作り、何度も決定機をつかみ、前半のシュート数は20本対6本と立川・府中を圧倒したのだ。
しかし、なかなかシュートが枠を捉えず、また立川・府中のGKの田中俊則の好守もあってゴールを割ることができないでいると、7分21秒には、DFの集中が欠けたところを衝かれて立川・府中に先制を許してしまった。
先制された約30秒後に同点に追いついたのはさすがだったが、結局、前半は同点のまま終了。後半も開始直後の21分06秒に速いパスで相手DFを揺さぶって、最後は西谷良介が決めてリードしたものの、その後は再び膠着状態となってしまった。名古屋からすれば、かなり苦しい戦いだったことだろう。
だが27分台にCKから2点を追加して勝負を決めると、あとは攻め急がずに時計の針を進め、さらにヴァルチーニョとラファの追加点も決まって、苦労はしたものの、結果的には名古屋の順当勝ちとなった。
昨シーズンまで、名古屋相手には立川・府中が善戦することが多かったが、苦しみながらも確実に勝点3を獲得した試合を見ると、「今年も、やはり名古屋が強そうだな」という印象を受けた。
とくに、冒頭でも述べた通り、ピッチ全面に選手を配置して、しっかりつないで“面”を制圧する戦いぶりは、やはりさすがに王者らしい戦い方という印象だ。昔風に言うと「横綱相撲」ということだ。
この名古屋を追っているのがバサジィ大分だ。6月に行われた最初の対戦では、名古屋を5対2のスコアで破っている。
昨シーズンは12位に終わったチームだから、今季のバサジィ大分はまさに大躍進と言っていい。今シーズンから指揮を執る伊藤雅範監督は、かつて2013/14シーズンにも大分を2位に導いている。Fリーグの名将の一人と言っていいだろう。
今シーズン、僕は大分の試合はまだペスカドーラ町田との試合だけしか見ていないが、ロングパスを使って相手陣内深いところにポイントを作るという戦術を徹底して戦っていたのが印象に残っている。
ピッチ全面を使ってポゼッション率を高めて、完全にゲームを支配しようというのが名古屋のコンセプトであるなら、大分の方は相手にボールを持たれる時間は長くても、まず自陣に選手を配して数的優位を作って守ったうえで、前線にポイントを作り、すぐにサポートに入って厚みのある攻撃を繰り出そうとしている。言うならば、非常に戦略性の高い戦い方であるように思える。
実際、大分が名古屋を破った試合でもシュート数は31本対26本と名古屋が上回っている。
今季のFリーグのキャッチコピーは「最強の5人制フットボール」である。「フットサルはフットボールである」という宣言なのだろう。ただ、Fリーグが、「フットボール」という言葉を使ったことについては、フットサル・ファンの間で物議を醸したとも聞く。
しかし、僕はフットサルというのは、完全にサッカーの一種だと思っている。技術面でも、戦術面でもサッカーとの共通点は多く、サッカーに詳しい人であれば、フットサルは初めて見てもすぐに理解出来るはずだ。サッカー・ファンを会場に呼び、フットサル熱を少しでも高めるためには「5人制フットボール」を唄うのは正しいことだと思う。
そして、人数が5人でピッチも狭いフットサルの方が、両チームの戦術や試合の流れが分かりやすいようにも感じる。
その意味では、はっきりしたコンセプトを持ち、戦略に基づいて戦うバサジィ大分の戦い方には注目したい。
8月に入って最初の週末には、やはり立川・府中のホームでバサジィ大分戦がある。立川・府中という同じ相手に対して、大分がどんな戦いをするのか。やはり観戦に行ってみたいと思っている。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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