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サッカー フットサル コラム 2019年7月2日

いよいよ準決勝を迎えるFIFA 女子ワールドカップ。ヨーロッパ勢による「打倒アメリカ」ははたして可能か?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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フランスで開かれているFIFA 女子ワールドカップはベスト4が出そろって、いよいよ準決勝を迎える。ラウンド16で日本代表(なでしこジャパン)は敗退してしまったが、日本を破ったオランダも準決勝に進み、強豪ドイツを破ったスウェーデンと対戦する。

優勝候補は、快進撃を続けていた開催国のフランスを準々決勝で破ったアメリカだ。前回優勝の絶対王者である。

今大会最大の話題は、ヨーロッパ勢の躍進だった。

前々回優勝、前回準優勝の日本がラウンド16で敗退したため、ベスト8はアメリカ以外をヨーロッパの7カ国が独占してしまったのだ。

ヨーロッパでは、女子人気が高まっている。

聞くところによると、女子チャンピオンズリーグで連覇中のフランスのリヨンの運営費はJ1のトップクラス並みだという。また、イングランドのプレミアリーグやスペインのリーガなど、女子の国内リーグも年々盛んになってきている。

この春にはアトレティコ・マドリード対バルセロナのリーグ戦に6万5000人もの観客が集まって話題になっていたが、ワールドカップ開催中にはいよいよレアル・マドリードも女子部門に乗り出すというニュースが流れた。

日本でも、2011年のワールドカップ優勝直後にはなでしこリーグの人気が高まった時期があったが、最近はリーグ人気も代表の戦績も低迷状態にある。このままでは、ヨーロッパに置いて行かれてしまうかもしれないのだ。なでしこリーグ全体のレベルは間違いなく上がっているし、能力の高い若手選手も出てきているのだが、日本の女子サッカーは正念場にあると言ってもいい。

今大会では、若手への切り替えを図ったもののチーム作りが遅れてしまったために日本代表は完敗を喫してしまったが、まだアメリカ、フランス、ドイツというトップスリーを追走する二番手グループに付けている。来年の東京オリンピックで上位に進出、できれば金メダルを獲得し、それを起爆剤にしてほしいものだ。

さて、ワールドカップの優勝争いに話題を戻そう。

今大会快進撃を続けていた開催国フランスと前回優勝のアメリカの試合は“事実上の決勝戦”だったが、勝負に徹したアメリカが完勝して見せた。試合運びのうまさは、さすがにベテラン多数を擁する常勝チームだった。

この試合、アメリカは開始5分で早くも先制する。左サイドでFKを得たアメリカ。ラピノーがそのFKからゴールに向かうスピードボールを入れると、ゴール前の混戦を通過したボールが、そのままフランスのゴールに吸い込まれてしまったのだ。

この先制ゴールで試合の流れは大きくアメリカに傾いた。

優位に立ったアメリカは、しっかりと自陣で構えてフランスの攻撃を受け止めた。ボールを奪っても攻め急いだりはせず、ひたすらゴール前を固めた。保持率で大きく上回ったフランスは相手陣内でパスを回してミドルシュートで攻めるのだが、アメリカのペナルティーエリアにはなかなか進入できず、アメリカのDF陣の見事な駆け引きにオフサイドの罠に落ちてしまう。結局、フランスはボックス内からシュートが打てないまま前半を折り返す。

後半に入って、フランスがサイドで優位が作れるようになり、チャンスを増やすことに成功したが、アメリカはすぐに選手交代を使って4バックから5バックに変更して守備を徹底する。守備固めに入ったのが、なんと63分というのだから驚きだ。守備に自信があるからこその変更だったのだろう。

そして、アメリカはシステム変更の直後の65分にカウンターからラピノーが2点目を決めて、ゲームを終わらせてしまった(その後、フランスはなんとか1点を返したが)。

守備を固めて、セットプレーやカウンターから奪ったゴールを守り切って勝つ……。勝負に徹した戦いぶりだ。昨年のロシア・ワールドカップで優勝したデシャン監督のフランス代表もそういった戦い方で頂点を極めた。勝つためには、最も手っ取り早い方法なのだろう。

「フットボールというのは22人の男たちが90分ボールを追いかけまわし、最後にはドイツが勝つもの」というのは、イングランドのかつての得点王ガリー・リネカーの名言である。1990年代くらいまでのドイツというのは、うまい選手もあまりおらず、見ていてけっして面白いサッカーをしなかったが、そのシンプルで効率的な戦法とけっして諦めない精神力と体力で勝つチームであり、それを皮肉ったのがリネカーの言葉だった。

現在の女子サッカーを言い表すなら、リネカーの言葉の中の「男たち」という部分を「女たち」に、そして「ドイツが」というところを「アメリカが」と言い換えればいい。

たしかに「勝負」という意味ではアメリカの戦い方は正解なのかもしれないが、見ていて面白くはない。ラウンド16のオランダ戦の後半に日本が見せたテンポ良くパスをつないでゴール前まで運ぶようなプレーの方がよっぽど面白い(少なくとも、僕の好みだ)。

ヨーロッパ勢の躍進は、「体力だけのサッカー」から「より戦術的なサッカー」に進化してきたことによってもたらされたものだ。そんなヨーロッパの新しい波が、アメリカのあの勝負に徹した昔のドイツのようなサッカーを打ち破ることができるのか。それが、準決勝以降の見所だ。

打倒アメリカの最有力候補だったフランスが敗れ、やはり打倒アメリカの役割を期待されたドイツもスウェーデンとの準々決勝で姿を消してしまった(スウェーデン戦のドイツは、なぜか動きが悪く、相手に大きなスペースを与えてしまったし、攻撃陣もスウェーデンのプレッシャーにボールを収められず、完敗だった)。

ヨーロッパ勢で残った3チームの中で最も期待できるのは、準決勝でアメリカと当たるイングランドであろうか……。

ところで、ヨーロッパではこの大会の上位3カ国に東京オリンピックの代表が与えられることになっており、イングランド、スウェーデン、オランダの出場が決まった。つまり、ヨーロッパの2強のフランス、ドイツが出場権を逃したのだ。日本にとっては、来年のオリンピックでのメダル獲得への道が使づいたことになる……。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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