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FIFA U-20 ワールドカップとトゥーロン国際は見本市である。会場にはビッグクラブの強化担当が足を運び、タレントのチェック、情報交換に余念がなかったという。FIFA U-20 ワールドカップで準優勝の韓国では、試合終盤まで高いジャンプを繰り返せるオ・セフンが注目された。トゥーロン国際の決勝でブラジルに敗れた日本からは、田中碧、椎橋慧也、相馬勇紀の3名が、高く評価されたとのニュースも飛び交っている。彼らのもとに好条件のオファーが届くのだろうか。
さて、夏の見本市はまだまだ続く。U-21ヨーロッパ選手権だ。ドイツのマルコ・リヒターは両足を巧みに使い、最終ラインとの駆け引きに長けている。ベルギーのディオン・クールスは、バックステップを踏みながらでも高い打点のヘディングが可能だ。スペインのダニ・セバージョスは決定的な仕事ができる。また、グループステージで敗れたイングランドも、なかなかの好チームだった。
初戦はハムザ・チョウダリーの退場とその後の意味不明な選手交代が響き、フランスに1-2の敗北。続くルーマニア戦はGKの雑なキャッチとDFのクリアミスなどが災いし、2-4で敗れた。第3戦のクロアチア戦も終始リードしながら、またしてもミスが絡んで3-3の引分け。1分2敗。イングランドはひとつも勝てず、撤退を余儀なくされた。
ただ、短いパスをスピーディーにつなぐフットボールは、実に心地がいい。その証拠に、イングランド戦が行われた会場はつねにボルテージが高かった。しかもトレント・アレクサンダー=アーノルド、ベン・チルウェル、デレ・アリ、ジェイドン・サンチョ、そしてマーカス・ラシュフォードといった、本来であれば今大会に出場資格のある選手たちを諸事情で欠きながら、である。
イングランドの育成は順調だ。あとはGKさえ……。U−21もフル代表も、このポジションだけは人材不足。アリソンとエデルソンが定位置を争うブラジル代表がうらやましい。
それでも、イングランドの将来は明るい、と考えていいだろう。U−21代表に選ばれたジェームズ・マディソン、アンディ・グレイ、アーロン・ワンビサカはフル代表のガレス・サウスゲイト監督も注目する逸材であり、フィル・フォーデンは所属するマンチェスター・シティで急成長。名将ジョゼップ・グアルディオラが「いくらカネを積まれても絶対に手放さない」と絶賛するスーパースター候補生だ。そうだ、現在リハビリ中のルベン・ロフタス=チーク、カラム・ハドソン=オドイも忘れてはいけない。
彼らがフル代表に引き上げられることによって、生存競争が激しくなる。フィル・ジョーンズは消え、ファビアン・デルフやエリック・ダイアーは当落線上となる。ジョーダン・ヘンダーソンですらウカウカできなくなってきた。当然、所属クラブでもハードワークを重ね、結果としてプレミアリーグのレベルアップにつながるだろう。
ロシア・ワールドカップのベスト4は復活の出発点に過ぎない。来年のヨーロッパ選手権、3年後のワールドカップが楽しみになってきた。イングランドは、ビッグタイトルを狙える。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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