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間もなくポーランドで開幕するU20ワールドカップに出場するU20日本代表のメンバーに続いて、トゥーロン国際に出場するU22代表のメンバーが発表された。そして、今週後半には6月に活動するA代表のメンバーも発表となる。
ただし、A代表はトリニダード・トバゴ、エルサルバドルと対戦するキリンチャレンジカップのチームと、その後、コパ・アメリカに参加するチームが別に発表される。
キリンチャレンジカップの2試合はFIFAが定めたインターナショナルマッチ・ウィークの試合だから、日本サッカー協会にはすべての選手を招集する権利がある。「海外組」を含めたベストメンバーを組むことができる試合だ。
一方、コパ・アメリカでは日本協会に招集権がないから、「海外組」の参加は見込めない。そのうえ、Jリーグも中断しないので国内の選手も自由に招集できないのだ。おそらく、「各クラブ1名」といった制限を付けて、若手中心のメンバーを組むことになるのだろう。
つまり、コパ・アメリカに出場する日本代表は主力抜き。「飛車、角抜き」どころか、「飛車、角、金、銀、さらに桂馬抜き」のチームになってしまう。そして、若手選手をコパ・アメリカに出場させるために、U22代表もある意味でベストメンバーでなくなってしまったようだし、U20代表も久保建英や安部裕葵抜きでワールドカップを戦うこととなった。
あまりにも中途半端な構成だ。南米連盟からコパ・アメリカ参加の招待を受けた時点で、なぜ協会はJリーグと話し合って、中断期間を設けなかったのか。大失態と言っていいだろう。
唯一、プラス面があるとすれば、いわゆる「ラージグループ」が一気に形成されることくらいだろうか。
昨年のロシア・ワールドカップが終わってからA代表監督に就任した森保一監督。2019年1月にアジアカップが予定されていたことから、2018年秋には比較的メンバーを固定して戦っていた。本当の意味での新戦力の発掘、「ラージグループ」の形成は3月になってようやく着手したばかりだ。
そう考えれば、6月に3つのカテゴリーの4つのチームを組むことによって、全部で70人以上の選手が代表の活動に参加することになるのは絶好の機会とも言える。U20代表は除外したとしても、50人ほどの選手を呼ぶことができるのだ。来年の自国開催となる東京オリンピック、そして、2022年のカタール・ワールドカップに向けて2つの代表チームを作り上げていくために、「ラージグループ」は早めに用意しておきたいところであり、その意味ではこの無理な日程での代表活動も大いに役に立つのだと思いたい。
ただし、どのカテゴリーのチームはどれも中途半端なチームであり、各大会での日本チームの勝利は期待できないのではないか。寄せ集めのチームで勝てるほどU20ワールドカップやコパ・アメリカは甘くはない……。そう考えるのが常識というものだろう。
と、実は僕も先日までそう信じていた。だが、「おや、そうでもないかな?」と思ったのは、先日、U20代表が招集されて、国内最後になる流通経済大学とのトレーニングマッチ(5月13日)を見た時のことだった。
U20代表は、翌日にはポーランドに向けて出発する間を利用した慌ただしい日程の中の試合。しかも、このトレーニングマッチは月曜日に行われたので、Jリーグなどで週末の試合に出場した選手はコンディション的に出場が難しく、出場できる選手を11人並べて戦っただけの試合だった。まあ、いわゆる寄せ集めのチームだ。
試合は、5対0というスコアでU20日本代表が勝利したのだが、スコアというのは相手との力関係によるものなので、特に意味はない。だが、この試合を見ていて驚いたのは、寄せ集め的なチームが時間の経過とともに一つのチームとしてまとまっていったことだった。
前半を見ていると、何人かの選手がコンディションも良さそうでよく動き回ってチャンスに絡んでいるが、逆にボールを触る機会の少ない選手もいるし、選手と選手の距離が開きすぎていて連携も難しい。そんなプレーが続いたのだ。
「ああ、これはポーランドに行ってからも苦しいのかもしれない……。やはり、久保や安部がいてくれないと……」と、そんな気持ちで試合を見ていた。
だが、試合が進むにつれて、あちらこちらでコンビネーションが作られていった。ベンチから壁山雅永監督が声をかけ、ピッチ上でも選手同士が話をする。そうすることで一つのチームが形作られていったのだ。後半に入って、新しい選手が入ると、またギクシャクした時間があったけれど、後半は15分も経過するとしっかりとチームとしてまとまって戦えるようになった。この時のコンビネーションが本大会ですぐに使えるかどうかは別として、あの試合の中では「最良の解」と思われる形を彼らは自分で見つけ出したのだ。
僕はかなり驚いた。さすがに年代別の代表に招集されるだけの選手だし、20歳とはいえプロとしてJリーグを戦っている選手たちだ。インテリジェンスがある。いわゆる「サッカー頭」と言うのだろうか。戦術的な常識みたいなものを全員が共通して持っているのだ。
もちろん、彼らはこのU20代表でプレーするのが初めてではない。U17時代も含めて、長く一緒にやっている選手たちだ。だからこそ、でもある。本大会を控えて、コンセプトの確認はすでにできている。それはそうだが、やはりピッチ上で、自分たちでチームを作り上げていったのは大したものと言わざるを得ない。
25年以上にわたってプロ・リーグが存在し(U20代表の選手たちにとっては、生まれる前からJリーグは存在した)、代表はワールドカップに連続出場。「フェアプレー・ポイントでの勝利を狙っての時間稼ぎ」などという光景も目の当たりにしているのだ。日本人選手も、「ドーハの悲劇」の頃のようにナイーブなわけがない。
その「ドーハの悲劇」の後に就任したパウロ・ロベルト・ファルカン監督は戦術的な細かな指示をせず、選手たちの自主性に任せたが、まったくチームは機能しなかった。ジーコ監督も選手たちに自由を与えたが、チームはバラバラになってしまった。
しかし、あのトレーニングマッチを見ていると、今なら、ファルカンやジーコが監督でも面白いチームができるのかもしれない。そんな気がしたのである。
寄せ集め的印象を否めない各カテゴリーの日本代表だが、5月、6月の各カテゴリーの大会でどんな戦い方ができるのか、少し楽しみになってきた。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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