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「ほうっ、日本も偉くなったものだなぁ!」というのが第一印象だった。
5月23日にポーランドで開幕するU20ワールドカップに出場する日本代表のメンバーが発表されたが、ご承知のようにこの年代の主力と思われてきた久保建英(FC東京)と安部裕葵(鹿島アントラーズ)の名がなかったのである。その理由は、もちろんこの2人を上のカテゴリーの代表に招集するためだ。
今年は5月から6月にかけて、各カテゴリーの日本代表の活動が重なる。U20ワールドカップを皮切りに、6月に入るとU22代表がフランスのトゥーロン国際トーナメントに参加し、さらにA代表はブラジルで開催されるコパ・アメリカ(南米選手権)に招待参加。さらに、女子代表がフランスで開かれるワールドカップに出場し、2大会ぶりの優勝を狙う。
女子代表は別として、男子の場合は3世代の代表が同時期に活動するわけである。メンバー編成は大変だ。しかも、コパ・アメリカに参加するA代表には招集の権限がないのだ。
FIFAが定めるインターナショナル・マッチウィークに開催される試合または各大陸選手権であれば、協会(=代表チーム)に招集の権限があり、クラブは選手を放出しなければならない。アジア連盟(AFC)主催のアジアカップであれば日本代表には招集権があるが、南米大陸連盟主催で日本は招待参加でしかないコパ・アメリカの場合、日本には招集の権限がないのだ。だから、ヨーロッパのクラブに所属する選手は基本的に招集できない。
ヨーロッパのクラブにとって、6月は貴重なオフの期間であり、選手たちにはオフ明けに万全の状態でキャンプに入ることを期待しているから、選手が代表の活動に参加することは認められないのだ。
さらに、5月から6月にかけてはJリーグも中断しないのだから、海外のクラブどころか国内のクラブだって、おいそれと主力級の代表招集を認めるわけにはいかないはずだ(日本協会は、どうして南米連盟からの招待を受け入れる前にJリーグにその期間のリーグ戦中断を申し入れなかったのか!)。
つまり、各カテゴリーの代表のメンバーを組むことが大変に難しくなっているのだ。そんな中で、久保や安部がどのカテゴリーの代表に招集されるかが、今後の興味となる。
つい先日、「久保を早期にA代表に招集すべきか」というテーマで、ある媒体に記事を書いたことがある。僕は、「久保にはあまり負担をかけるべきではない。だから、A代表招集はまだ早いのでは?」という趣旨で記事を書いた。たしかに、その後のJ1リーグにおける久保のプレーを見ていると、たしかにA代表に招集されても当然と言うべきプレーを見せている。しかし、「負担はかけるべきでない」という結論は変わらない。もっとも、現在の日本のサッカー界にとって最大の目標である東京オリンピックでのメダル獲得のはずだ。とすれば、久保や安部を早くU22代表に慣れさせておくべきだとは思うが……。
そんなことを考えていたら、「日本のサッカー界も偉くなったものだ」という感想を抱いたわけである。
日本はかつてU20ワールドカップ(当時は「ワールドユース選手権」)で準優勝を遂げたことがある。1999年、ちょうど20年前のナイジェリア大会である。フィリップ・トルシエ監督が、2002年ワールドカップは若手中心のチームを作る決心をしたため、U20代表の監督も兼任して臨んだ大会だった。小野伸二、稲本潤一、小笠原満男、高原直泰などを擁した日本は、決勝トーナメントに入ると、ポルトガル、メキシコ、ウルグアイを連覇して決勝に進出した。
この時によく言われたのが「ヨーロッパ諸国にとってこの大会はあくまでも育成のための大会で、主力級で参加していない選手もたくさんいる」といことだった。この時は、ナイジェリアと言う開催国が治安状況や衛生面で問題を抱えていたこともあって、主力を送り込むことを躊躇う協会も多かったが、そんな中で当時バルセロナの若手だったシャビを送り込んだスペインの力は群を抜いており、日本も決勝戦ではスペインに0対4と完敗を喫した。
その後も、日本が好成績を挙げるたびに「ヨーロッパ諸国は主力ではない」とよく言われた。
日本代表は、今年の大会でイタリアと2大会連続で対戦するが、ユベントスの新星、モイーズ・ケーンは2000年生まれだから、当然今年のU20ワールドカップの出場権があるが、すでにA代表にも招集されているケーンはおそらく参加しないだろう。
ヨーロッパ諸国の選手にとっては、この大会はやはりその程度なのだ。「しかし、ヨーロッパから遠く離れた日本にとっては、ヨーロッパや南米の強豪と真剣勝負ができるこの大会の重要性ははるかに高い」とずっと言われ続けてきた。だが、その日本が、ついにU20年代の「上のカテゴリーの代表に起用する」という理由で主力をU20代表から外したのだ。「偉くなったものだ」と素直に感心する。
発表された今年のU20日本代表のリストを見ると、久保と安部の不在は残念ではあるが、J1リーグやJ2リーグで出場機会をつかんで活躍している選手が多い。
1999年に準優勝した当時もそうだった。当時は若手の成長が著しく、その前の世代を凌駕する場合が多く、すでにJ1で活躍する選手もたくさんいた。小野伸二などは、すでに1998年のフランス・ワールドカップですでにピッチに立った経験すら持っていた。それが、あのチームの強みだった。
だが、その後、Jリーグではユース年代を卒業してトップに登録されても、20歳以下の選手に出場機会が与えられなくなっていった。そして、U20ワールドカップで、日本代表はなかなか勝てなくなってしまったのだ。しかし、最近になって、Jリーグでも若い選手に出場機会が与えられるようになってきている。いや、堂安律のように、Jリーグでのトップ入りを得ないままヨーロッパに旅立つ選手も多い。Jリーグの実戦でもまれた選手たちが、エクアドル、イタリア、メキシコという強豪国を相手にどのような試合をするのか、注目したい。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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