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アジアカップで準優勝に終わった後、初めての親善試合に臨む日本代表のメンバーが集合し、合宿が始まった。
中島翔哉、南野拓実、堂安律の若手の3人組はメンバーに入ったものの、アジアカップ終了後に背中の痛みに悩まされ、所属のブレーメンでも出場できないでいる大迫勇也は不在。さらに、DFの吉田麻也や酒井宏樹、長友佑都といったベテラン=常連組が外れ、逆に香川真司がワールドカップ以来初めて招集されるなどメンバー編成は大幅に入れ替わった。
今回のようなメンバー構成になったのは、多分にコパ・アメリカを睨んでの選考だったからだ。
南米サッカー連盟主催の大陸選手権であるコパ・アメリカに招待されて出場するのだが、招待国である日本には選手を拘束する権利がない。大迫が所属するブレーメンは早々に大迫の招集拒否を表明した。
それはそうだ。昨年はワールドカップがあり、新シーズンに向けてのトレーニングに出遅れた大迫。その影響のせいか、故障に悩まされながら過ごしていたが、2019年1月にはアジアカップに招集され、準決勝、決勝に強行出場。決勝を終えてブレーメンに復帰したものの、その後もなかなか出場できないでいる。ブレーメンにとっても、トップでボールを収められる大迫は貴重な戦力であり、大迫の欠場は戦力的に大きなマイナスになっている。ブレーメンが、アジアカップで無理に出場させた日本協会に対して不信感を抱いたとしても不思議ではない。
同様に、貴重な戦力をアジアカップのために日本代表に招集されたクラブとしては、日本に拘束権がないコパ・アメリカでは招集を拒否することだろう。
森保一監督はヨーロッパを訪問し、各選手のコンディションを確認するとともに、各クラブと意見を交換したが、多くのクラブがコパ・アメリカでの招集に難色を示したと伝えられている。
そんな中でも、招集の可能性があるのはアジアカップには招集しなかった選手。あるいはクラブで出場機会が与えれていない選手だ。シーズン中に出場機会が少なかったのであれば、「コンディション維持のために、逆に代表で試合をこなした方がいい」という考え方もできるからだ。
たとえば、ドルトムントで出場機会がなく、冬の移籍でベシクタシュに移った香川なども「少し試合をこなしてから新シーズンに向かった方がいい」とクラブが判断したのかもしれない。来日したベシクタシュの会長は香川の招集に前向きだったという。
今回の招集メンバーを見てみると、森保監督はコパ・アメリカで招集できそうもない選手はメンバーからはずし、可能性のある選手を中心にチームを作ろうとしているように見える。
Jリーグ所属の選手の場合も、自由に招集できるわけではない。
コパ・アメリカ開催期間中にもJリーグは試合が続くから、Jリーグの選手も自由に招集することはできないのだ。おそらく「各チーム1人」といった制約を受けるはずだ。5~6月にはU22代表の活動もあるから、こちらも勘案して選手を選考しなければならない。実際、3月シリーズのメンバーを見ても、ガンバ大阪(東口順昭、三浦弦太)とヴィッセル神戸(西大伍、山口蛍)以外は各クラブ1人の招集になっている。
昨年秋に日本代表監督に就任した森保監督は、親善試合5試合を通じて、ほとんど同じメンバーを招集してチームを作ってきた。
本来なら、チーム作りの初期の段階ではメンバーを固定せずに競争を促し、30~40人ほどの「ラージグループ」を作るべきなのだ。それにも関わらず、森保監督が固定メンバーでチームを固めたのは、1月にアジアカップがあったからだ。
アジアカップは、もともとワールドカップの中間年に行われていたのが、夏季オリンピックと競合するのを嫌ったアジア・サッカー連盟(AFC)が2007年大会からワールドカップの翌年に開催することにした。しかも、2011年大会以来、アジアカップはワールドカップの翌年の1月に開催されるようになり、ワールドカップ後に代表監督を交代させた国にとってはチーム作りが難しくなってしまったのだ。
アジアカップを単なる準備のための大会と割り切って考えることもできるが、日本サッカー協会はアジアカップも優勝を狙っていたし、常に勝負にこだわる森保監督としてはアジアカップに勝つために2018年秋は固定メンバーでコパ・アメリカチームを作ってきたのだ。
そのアジアカップで大迫不在の試合で苦戦を強いられたことを見ても分かるように、このまま固定メンバーで戦っていては将来の強化が難しくなる。従って、たとえば大迫が元気だったとしても、3月シリーズはこれまでの主力をはずすべき時期だったのだ。
そこで、森保監督はコパ・アメリカでは従来の主力を招集できないという悪条件を逆手にとって、コパ・アメリカ用の新しいチームを作ろうとしているのだろう。
コパ・アメリカが終われば、アジアカップ用のチームとコパ・アメリカ用のチームを融合させながらワールドカップ予選を戦いながら、本格的な戦いとなるワールドカップ最終予選に向けてチームを完成させればいいのだ。
同時に、2020年には東京オリンピックという重要な大会があるので、さらに「オリンピック・チーム」という別チームを作り、オリンピック・チームの主力をフル代表に融合させていくことになる。そこで、フル代表とオリンピック代表の監督を1人の人物に兼任させていることの強みが生きてくるはずだ。
森保監督がアジアカップに向けて固定メンバーでチーム作りを始めたので、当時、僕はかなり大きな疑問を抱いていた。だが、コパ・アメリカでは選手を自由に招集できないという悪条件をうまく利用して新しい(復帰組を含めて)選手を融合させようという深慮遠謀を見て、森保監督を見直した。新しい顔ぶれで「宿敵」コロンビア相手にどんな試合をするのか、楽しみに見たい。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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