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サッカー フットサル コラム 2019年3月22日

ラグビー日本代表が柔術のトレーニング?他競技から学ぶものはいくらでもあるはず

後藤健生コラム by 後藤 健生
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秋のワールドカップを目指すラグビーの日本代表チームの合宿にグレイシー柔術の使い手、ライアン・ヘンリー氏がコーチとして招かれたというニュースを読んだ。柔術や格闘技の動きを取り入れるそうだ。確かに、ラグビーはボールゲームであるとともに格闘技でもある。

サッカー関係者としてまず思うのは、「ラグビーの代表チームはなんと長期の合宿ができるのか!」ということだ。

サッカーの代表チームは、親善試合の度に集合して1日、2日調整して試合をこなし、またコンディションを整えてもう1試合。そして、試合が終わったらすぐに解散。その繰り返しである。長期合宿ができるのは、ワールドカップ本大会直前の半月ほどだけ。あとは、アジアカップの時に(決勝戦まで勝ち抜けば)約1か月の合宿(=大会)があるくらいだ(6月にはコパ・アメリカに招待されているが、どの程度のメンバーを招集できるか……)。

2007年のアジアカップの時に指揮を執ったイビチャ・オシム監督などは、東南アジアでの大会で暑さが厳しいというのに、大会中にも毎日々々激しい練習を続け、試合前のウォーミングアップの時まで、直射日光が照りつけるハノイのスタジアムでグラウンド全面を使った練習をしていた(そのせいかどうかわからないが、日本は準決勝でサウジアラビアに敗れ、3位決定戦で韓国にも敗れてしまった)。

オシム監督が勝負を度外視して、それほど厳しいトレーニングをしたのは、普段は一緒にトレーニングする時間がないからだ。サッカーの代表監督はとにかく準備のための時間が与えられない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督などは、つねに「時間が足りない。時間が足りない」と声高に叫んでいた。

それに引き換え、ラグビーの代表チームは数か月にわたる合宿でチームを作ることができるのだ。サッカーの代表監督から見れば、「羨ましい限り」と言うしかない。時間に余裕があるからこそ、柔術をトレーニングに取り入れるなどという試みができるのだろう。

しかし、サッカーの代表合宿では時間が足りないので無理だろうが、異種競技のテクニックや戦術、トレーニング方法などを学ぶことは大事なことだと思う。

サッカー界では、JFAのアカデミーで生徒たちに相撲部屋を体験させるイベントがある。相撲に取り組む力士の姿を間近に見るというメンタル的な効果を狙ったものなのだろう。

サッカーと相撲では、ラグビーとグレイシー柔術よりもずっと大きな違いがある。したがって、直接的に学ぶことは少ないかもしれないが、たとえば四股を踏んで体幹を鍛えるといったことは相撲から学べるはずだ。とくに、日本人の体質に合ったトレーニングという意味でも、日本古来の相撲や他の武道から学ぶことはあるはずだ。

陸上競技からは走り方を学ぶことができる。エネルギー・ロスを防ぎながら速く走れれば、サッカーの試合でもラグビーの試合でも圧倒的に有利になる。

体操からは空中戦での柔軟な身のこなしを学ぶことができるだろう。日本代表のMFだった福西崇史氏(現解説者)は少年時代に本格的に体操競技に取り組んでいたが、やはり彼の身のこなしには独特のものがあった。

ボールゲームからは、もっと直接的なヒントを得ることができるだろう。

サッカーと極めて近い関係にあるフットサル。あるいは、イングランドでの伝統的なフットボールという共通の祖先から分かれたラグビーはサッカーから見れば本来は仲間のような競技だ。

サッカーのキックやドリブルの技術はラグビーにも役に立つ(ラグビーのアルゼンチン代表にはサッカー経験者が多いから、やはりキックの上手さには定評がある)。逆に、コンタクトプレーの多いラグビーからは相手とぶつかり合いながらボールを使う技術を学べるだろう。

たとえば、サッカーとラグビーのユース代表が合同合宿でもしたら、互いに得るものは多いのかもしれない。

もうひとつ、思いだしたのは十数年前に見た光景だ。場所はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだった。海外沿いのホテルのバーが、旧ユーゴスラビア諸国出身で中東地域で働いている各スポーツのコーチたちのたまり場になっていたのだ。酔っぱらったコーチたちが、それぞれの所属するクラブや協会に対する愚痴を言い合っている……。

旧ユーゴスラビア諸国はサッカーをはじめ、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、水球など球技の有名な指導者を輩出している。

旧ユーゴスラビアのコーチ養成コースでは、最初の段階ではどのスポーツもコーチも共通のカリキュラムを受講する。生理学とか心理学とかはどの種目でも共通しているはずだ。そして、後期のコースで各スポーツの専門的な知識を習得する。

したがって、彼らはどの競技のコーチでも共通の知識を有している。そして、互いが顔見知りなのだ。だから、どの競技のコーチでもドバイの一つのバーに集まってくるというわけだ。そして、愚痴を言い合いながら情報を交換する。

バレーボールのコーチが、自分が指導している若手選手について「運動能力は優れているのだが、バレーの選手としては限界だ」といった愚痴を言う。すると、同じクラブのサッカーのコーチが「そうか。長身選手が欲しいんだけど、そいつにサッカーやらせてみよう」と提案をする。

これは、サウジアラビアのアル・ヒラルで実際にあった話で、その選手は最終的にはサッカーのサウジアラビア代表になったのだという。

ラグビーの日本代表の記事から、いろいろと連想が進んでいった。

ラグビーの日本代表は、グレイシー柔術だけでなく、相撲からも何か技を盗んでみてはどうなのだろうか?ニュージーランドと対戦して、相手がハカを演じたら、日本代表も一斉に四股を踏んで「どすこ~い、どすこ~い」やってみせるとか……

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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