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サッカー フットサル コラム 2018年10月25日

厳しい日程を戦うマンチェスター・ユナイテッド、ジョゼ・モウリーニョという指導者の今後の立ち位置は……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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政治の世界では、現在イギリスのEU(欧州連合)離脱問題を巡って厳しい交渉が行われており、交渉は膠着状態になっている。このままでは、何の協定も結ぶことなく無秩序離脱に突き進む可能性(危険性)も高まっている。そうなれば、イギリスとEUの間でヒト、モノの自由往来ができなくなり、イギリスにとっては「自国にとって好ましくない」と考えるヒトやモノ、制度などの受け入れを拒否することができるようになるが、その代わりに欧州大陸からイギリスにとって有益なモノが自由に入ってくることができなくなる。

どう考えても、両者にとって得な話ではないはずなのだが……。

そんな中でも、サッカーの世界では欧州大陸からイングランドには次々と新しいプレーヤー、新しい指導者、そして新しい戦術・哲学が流入し続けている。

何しろ、世界でも有数のビッグな財政力を誇るイングランド・プレミアリーグのクラブである。大陸の一級品を、好きなだけ仕入れることができるのだ。しかも、もしイギリスとEUの交渉が決裂してしまったら、海外からのモノや人の流入ができなくなってしまうかもしれないのだ。イングランドのクラブとしては、今のうちに買い物をしておいた方がいいのかもしれない。

イングランドにプレミアリーグという新しいリーグができた1990年代以来、サッカーの母国イングランドには、ヨーロッパ大陸から絶えず新しい波が押し寄せてきた。

最初の波は、ドーバー海峡の対岸のフランスからやって来た。リヴァプールの監督としてやって来たジェラール・ウリエやアーセナルの前監督のアーセン・ヴェンゲルが近代的な考え方をイングランドのサッカー界に持ち込んだ。

その後、スペインやポルトガルといったラテン諸国からも、大きな波がやってきた。その波の頂点にいたのが、一世を風靡したジョゼ・モウリーニョだった。

ポルトガルという、かつてはヨーロッパ大陸の中でもサッカー後進国と思われていた国から、母国イングランドに乗りこんできたという歴史的なインパクトもあったし、勝負にこだわった緻密な戦術も新鮮に映った。日本の戦術マニア向けの雑誌などでももてはやされ、モウリーニョはまさに「時代の寵児」だった。

ちなみに、モウリーニョが初めてイングランド(チェルシー)にやって来たのは2004年だから、もう14年も経つわけだ……。

その後も、イングランドに押し寄せる対岸からの波は衰えることはない。いや、最近は波の大きさも増し、また波と波の間隔も以前よりさらに小さくなってきたように思える。

最近を振り返れば、2年前にスペインからドイツ経由で押し寄せた大波がペップ・グアルディオラだった。バルセロナ流のパス・サッカーに戦術的な変化を加えた独自のサッカーはあっという間にイングランドを席巻。マンチェスター・シティは財政力だけでなく、戦力的にプレミア最大のクラブとなった。その、マンチェスター・シティの天下がどれだけ続くのかと思っていたら、昨年、再びドイツからやって来た新しい波が挑戦者として名乗りを上げた。ユルゲン・クロップのリヴァプールが、攻撃を仕掛ける様はまさに嵐のようだった。

今年、新たにやって来た波の中で最大のものが、イタリアからの波、マウリツィオ・サッリだろう。イタリア人らしい緻密な守備戦術を基礎に、深い位置からのプレーメークや、ウィング・ポジションの選手を使った戦術的サッカーが彼のトレードマーク。選手間の距離感を保つだけではなく、その選手間を網の目のようにつなぐパスが非常にコレクティブなチームを作る。スピードに乗ってパスが回るサッカーはとても美しい。

というわけで、まさに毎年のように世界最高峰の戦術的革新の波が、イングランドに押し寄せているのだ。

そんな中で、「最初の大波」だったジョゼ・モウリーニョが苦しんでいる。

かつてイングランド最大のビッグクラブだったマンチェスター・ユナイテッドも、一時ほどの絶対性はなく、モウリーニョが思い通りの補強もままならぬ中で、これもある意味で彼らしい愚痴をこぼしながら戦っているが、今シーズンはなかなか勝点も積み上げられず、9試合を消化した時点で10位と完全に出遅れている。

それでも、選手からの信望は失っていないように見えるが、彼はこれからどのような立ち位置でプレミアリーグで戦っていくのか。「微妙な時期」にあることは間違いない。

そんな中で迎えたプレミアリーグ第9節は、「最新の波」サッリのクラブであり、またモウリーニョにとっては古巣でもあるチェルシーとの対戦となった。相手のプレーメーカーであるジョルジーニョへのボールをしっかりと遮断し、相手のパスにしっかりとアプローチをかけて、パスカットからのカウンターを使って、むしろ押し気味に試合を進め、前半はCKから失点したものの、後半にはアントニー・マルシャルの連続ゴールで2対1と逆転に成功。アディショナルタイムに失点して、勝利こそ逃したものの、古巣の観客の前で意地を見せた。

集中した守備を見ると、やはりこの監督はモチベーターとして優れているし、また、ジョルジーニョ対策を見ると、ゲーム戦術の大家であることは間違いない。

さて、マンチェスター・ユナイテッドはチャンピオンズリーグの第3、4節ではイタリアのユベントスとの連戦があり、それを終えるとマンチェスター・ダービーを迎えることとなる。ユベントス戦の間に対戦するエヴァートンも、プレミアリーグで8位とマンチェスター・ユナイテッドより好調なチームだ。この厳しい日程の中、モウリーニョがどのような采配、どのようなゲーム戦術で勝負を懸けるのか。ある意味、ジョゼ・モウリーニョという指導者の真価が問われるような連戦となるのかもしれない。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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