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サッカー フットサル コラム 2018年8月28日

素晴らしい内容でU-20W杯を制した日本 安定したCBなど、従来の日本のイメージを変えた

後藤健生コラム by 後藤 健生
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猛暑で疲れが溜まっている体にはかなり厳しい日々が続いている……。 ヨーロッパの各国リーグが開幕して週末はそうしても夜更かしの連続になるのに加えて、Jリーグをはじめ、JFLやFリーグなど国内リーグも佳境に入り、さらに各カテゴリーの日本代表もさまざまな大会で活動している。

 

そんな中で嬉しかったのが、U-20女子ワールドカップでの日本代表の優勝だった。それも、グループリーグ初戦ではアメリカ、決勝トーナメントではドイツ、イングランド、スペインと強豪国を連破しての優勝だった。

2011年にフル代表の女子ワールドカップで日本(なでしこジャパン)が優勝した当時は、アメリカ一強体制だった女子サッカー界も、最近はドイツ、フランス、イングランドなどヨーロッパ勢が台頭。フィジカルの強さに加えて日本が先頭を走っていたパス・サッカーもすっかり各国に浸透し、今では群雄割拠の情勢となっている。実際、今大会でもアメリカがグループリーグで姿を消した一方で、UEFA所属のチームは出場5チーム(スペイン、イングランド、フランス、ドイツ、オランダ)がすべてベスト8に進出している。

そんな中で、U-20日本代表はすばらしい連携で持ち前のパス・サッカーを見せつけた。 選手が動いてパス・コースをいくつも作り、ワンタッチ、ツータッチでボールが動くサッカーは対戦相手からも「見ていて楽しいサッカー」と称賛され、地元フランスの観客の心も捉えたと伝えられている。

日本がすでに優勝経験のあるU-17のカテゴリーに比較して、フィジカルの要素も強くなり、また試合運びの駆け引きなども加わってくるU-20は、日本にとってハードルが高いかと思っていたが、実に見事にヨーロッパ勢を退けての優勝だった。

とくに、ドイツとの準々決勝(3対1)などはすべての面で完勝。むしろ、「どうして3点しか取れなかったのか?」と思わせるほどの内容だった。 2011年に澤穂希さんたちのチームが優勝した時は、ドイツ戦も決勝のアメリカ戦も、完全に相手に支配されたゲームだった。持ち前の粘りで耐えに耐えての勝利。とくに決勝戦などは2度もリードを許しながら、追いついての奇跡のような勝利(PK勝ち)だった。

それが、今回のU-20ワールドカップではグループリーグでスペインに敗れた以外は、しっかりと点差をつけての勝利で勝ち取った優勝だった(6試合で15得点、3失点)。 さらに、従来、日本の弱点と思われていた部分がしっかりと改善されていたことも特筆すべきことだろう。目に付いたのは、何と言っても大会6試合を通じて3失点に抑えたDF陣、とくにセンターバック(CB)の安定感だった。

CBコンビは主将でもある南萌華と高橋はなの2人。個の強さと精神的な落ち着きが強みだった。チャレンジ&カバーの関係性が良いのは、2人が浦和レッズ・レディース所属のチームメートだったからなのかもしれない。同様に、たとえば右サイドで日テレ・ベレーザ所属の宮川麻都と宮澤ひなたを起用するなど、各所でクラブでのコンビネーションを生かしたあたりも、代表のチーム作りとしてはオーソドックスな方法だった(選手の過半数が海外クラブ所属の男子代表では不可能な方法だが……)。

CBの話題に戻れば、南萌花はFIFAのテクニカル・スタディ・グループからブロンズボール賞(MVP3位)に選出された。ゴールデンボール賞には6ゴールで得点王となったスペインのパトリシア・ギハーロ、シルバーボール賞には5ゴールを決めた日本の宝田沙織が選ばれたように、この種の賞ではFWの受賞が多く、DFの受賞は珍しい。南のDFとしてのパフォーマンスはそれほど高く評価されたのだ。

決勝のスペイン戦はかなり苦しい試合で、とくに前半はほとんどの時間をスペインが支配し、何度か決定機もあった。そんな中で落ち着いて試合を進められたのは南と高橋の両CBとGKのスタンボー華への信頼感があったからこそだった。 「0対0で終われば上出来」といった内容だったスペイン戦の前半。それでも日本は1点をリードして折り返すことに成功。それが、後半立ちあがりの連続ゴールにつながった。3点差とした後はスペインのパワープレーに押し込まれながらも、やはりCBがしっかり守りきった。

スペイン戦の前半のその値千金のゴールは宮澤ひなたのミドルシュート。ペナルティーエリア外からでも積極的に狙う姿勢が生んだ見事なシュートだった。 これも、従来の、とかく「シュートを撃たない」と言われ続けていた日本サッカーのイメージを変えるもの。大会初戦のアメリカ戦でも、相手に支配される時間が長かった中で、林穂之香が遠くから狙ったシュートが決勝ゴールとなった。シュート技術さえ上がれば、そして積極的な姿勢を見に着けさえすれば、日本人だって当然シュートを撃つ。シュートを撃って、得点を奪うことはなにしろ楽しいことなのだから……。

もちろん、U-20ワールドカップは育成段階の大会。この素晴らしい優勝をフル代表につなげていかなければ意味はない。女子のフル代表は、現在アジア大会で戦っており、U-20が優勝した翌日の試合では「事実上の決勝戦」とも言える北朝鮮戦で勝利を飾り、ベスト4まで駒を進めている。

そして、女子ワールドカップは来年の夏にU-20ワールドカップが開かれた、同じフランスでの開催となる。フル代表の本格的なチーム作りはまだ始まっていない。当然、U-20 代表からも何人かはフル代表に選出され、新しい刺激を与えてくれるはず。良いイメージを持ったフランスという地で、若い女子代表選手たちが再び輝く可能性もあるだろう。 アジア大会に参加している女子代表も、また苦戦を続けている男子のU-21代表も、さらに勝ち進んで行ってほしい。寝不足は、辛いのだけれども……。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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